「捩った」とは
「捩った」とは、動詞「捩る」の連用形ですから、意味は「捩る」と同じです。「捩」という漢字は、もともと、「力を入れて無理矢理に回す・ひねる」といった動作を表します。しかし、「捩る」にはいくつかの読み方があり、読み方によって意味が異なります。
早速、「捩る」の読み方とそれぞれの意味を見ていきましょう。
「捩る」の読み方・意味
<すじる>
現在ではあまりこの読み方では使われないようですが、「捩る」を<すじる>と読む場合、「体をくねらせる・ひねる」という意味です。
<ねじる>
<ねじる>と読む漢字には、「捩る」のほかに「捻る」や「拗る」もありますが、どれも意味は同じです。<ねじる>は、「細長いものの両端を逆方向に回す」あるいは「片方の端を固定して反対の端をひねる」という動作を表します。
ジャムなどの瓶の蓋を開けるとき、蓋と瓶をそれぞれ逆方向にひねりますね。また、捩り鉢巻き<ねじりはちまき>をするときは、手ぬぐいの片端を固定して、反対側をグルグルとひねってから頭に結びます。そのような動作を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
一方、<ねじる>は、「ねじれる(=ねじられた状態になる)」の文語形として機能する場合もあります。
<もじる>
「捩る」を<もじる>と読んで、「ねじる・よじる・ひねる」といった意味を表すこともあります。しかし、多くの場合は「有名な詩文や文句に似せて、風刺したり面白く言い換える」の意で用いられます。
<もじる>は「もじれる」の文語形でもありますが、この場合は、前者の「ねじれた状態になる」という意味です。後者の意味の<もじる>は、前者の意味を比喩的に用いた、「ひねりをきかせる」といったニュアンスでしょう。
もじった語は、「くたばって仕舞え」→「二葉亭四迷」のようなペンネームでも時々見られます。また、「不言実行(黙って為すべきことをやる)」→「有言実行(口にしたことはやり遂げる)」のように、もじって出来た言葉が定着することもありますね。
<よじる>
「捩る」を<よじる>と読む時は、「ひねり曲げる」動作を表します。ティッシュペーパーをひねって「こより」を作る、あるいは、くすぐられて体をくねらせるといった動きのことです。
また、<よじる>は「よじれる(=ひねり曲がった状態になる)」の文語形としても用いられます。
「捩った」の使い方
現在において、「捩った」を<すじった>と読むことはほとんどないので、それ以外の読み方における例文を挙げていきましょう。
<ねじった>
- 母の手伝いで、短冊切りにした蒟蒻に切れ目を入れて捩った。
- 水栓を捩ったけれど、力を入れても栓が開かない。
- どうやら山道で足を捩ったらしく、足首が腫れてきた。
<もじった>
「有名なフレーズを言い換える」という意味の「捩った」は、次のように使います。
- アダルト作品には有名な映画タイトルを捩ったタイトルが多い。
- ことわざを捩ったキャッチフレーズを考え中だ。
- 本作の登場人物は実在の偉人の名前を捩った名が付けられている。
<よじった>
- すれ違いざま肩がぶつかりそうになったので身を捩った。
- 大笑いして体を捩ったら腹筋がつってしまった。
- このヘアスタイルでは、何回か捩った髪の束をピンで止めている。
「捩る」を含むことわざ・慣用句
赤子の手を捩る
多くの場合、「赤子の手を捻る」<あかごのてをひねる>と言われますが、「赤子の手を捩る」<あかごのてをねじる>も同じ意味です。どちらも、相手を簡単に打ち負かす、あるいは、物事を容易に成し遂げることのたとえとして用いられます。
首を捩る
物事に賛成することを「首を縦に振る」と言いますね。これとは反対に、「首を捩る」<くびをねじる>は、首を横に振って不承知を表明するという意味です。
なお、「首を捻る」<くびをひねる>は、不賛成を表明するの意と、理解できずに考え込む・疑いを抱くという意味があります。「捩る」と「捻る」は同じような動作を指しますが、この場合においてはニュアンスが異なりますので注意しましょう。
腹の皮が捩れる
「腹の皮が捩れる」<はらのかわがよじれる>は、腹の皮が捩れるくらいに笑い転げるという意味です。笑いが止まらないことを表す慣用表現として用いられます。
逆捩じを食わせる
「逆捩じ」<さかねじ>とは、本来の方向とは逆方向に回すこと、また、非難された人が非難し返すことを言います。よって、「逆捩じを食わせる」とは、非難されたり攻撃された人が、その相手に対して非難し返す、攻撃し返すことを表す慣用表現です。