パラダイムの意味・使い方
パラダイムには以下のような意味があります。
- 特定の時代や集団、分野などにおける支配的な考え方や価値観
- 語形変化表
それぞれの意味について、使い方を含め、詳しく見ていきましょう。
1.考え方や価値観
1の意味の「パラダイム」には、ジャンルごとに「〇〇パラダイム」という言い方があります。たとえば、「プログラミングパラダイム」ならば、プログラミングを用いた問題解決における最適な考え方のことです。
<例文>
「日本において、かつては仕事やスポーツの最中に水分補給をするのは『甘え』『怠慢』と批判的に捉えるのがパラダイムだった。しかし、熱中症という症例が広く認知されてからは、水分補給は積極的に行うべきだという考えに変わった」
この、考え方や価値観という意味の「パラダイム」は、自然科学の分野で普及した言葉です。しかし、そのほかの科学、さらにはビジネスの分野でも用いられるようになりました。後述する「パラダイムシフト」という言葉でも使われています。
2.語形変化表
2の「パラダイム」は英語などの学習に用いられる、品詞の形の変化をまとめた一覧表のことです。たとえば、英語の動詞の場合は、現在形(原形)・過去形・過去分詞・現在分詞というふうに変化します。
日本語では、未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形と変化しますね。この意味で用いられる「パラダイム」は「活用」と言い換えてもいいでしょう。
<例文>
「中学時代、英語の授業でパラダイムをリズムに乗って読み上げて、語形変化を学んだのは、今でも記憶に残っている」
「パラダイムシフト」とは
「パラダイムシフト」の「パラダイム」は上記の1「考え方や価値観」という意味です。それが「シフト=移行」するわけですから、平たく言えば、「パラダイムシフト」とは「考え方や価値観がガラリと変わること」を指します。
パラダイムチェンジ、パラダイム転換という言葉もありますが、意味は「パラダイムシフト」と同じです。
科学分野のパラダイムシフト
「パラダイム」という言葉が普及するきっかけとなったのは、1962年に刊行された科学史家トーマス・クーンの著書『科学革命の構造』です。クーンは、科学理論が発展するプロセスを分析するためにパラダイムという言葉を用いました。
クーンは、科学理論の発展を分析する上でパラダイムシフトについても指摘しています。時代が移り変わっていくと、既存のパラダイムでは説明できない事象に直面します。その際に起こる、革命的な考え方の変化がパラダイムシフトというわけです。
たとえば、天動説は宗教が科学に強く影響していた時代のパラダイムでしたが、地動説は現代のパラダイムです。このような考え方の変化を指してパラダイムシフトと呼びます。
パラダイムシフトの繰り返しで科学が発展していったのだというのが、クーンの主張です。
その他の分野のパラダイムシフト
「パラダイム」と同様、「パラダイムシフト」という言葉も、科学以外の分野にも普及しています。この場合は、「発想の転換」といったニュアンスで用いられることが多いようです。
たとえば、経済に当てはめて考えてみましょう。経済成長を前提とするパラダイムに基づいて経済政策をとった場合、不景気になってしまうと通用しません。不景気を考慮したパラダイムへとシフトする必要が出てくるのです。
パラダイムの語源
パラダイムの語源は、何かをするときの模範・手本・モデルなどを意味するギリシャ語「paradeigma(パラデイグマ)」とされています。パラダイムは英語で「paradigm」と綴りますが、これは語源の表記の名残でしょう。
英語の「paradigm」を日本語で言い換えるとき、「理論的枠組み」「方法論」などとされますが、ぴったりな訳だとはいえないというのが現状です。よって、日本語に訳す場合でもカタカナ語で「パラダイム」というのが無難です。
パラダイムの英語表現
<例文>
- This company needs a new paradigm.(この会社には新たなパラダイムが必要だ)
- Galileo Galilei's ground motion theory brought a paradigm shift to astronomy.(ガリレオ・ガリレイが唱えた地動説は天文学にパラダイムシフトをもたらした)