「掲げる」の意味
「掲げる」(かかげる)の「掲」は、手へんに「曷(旧字体)」が組み合わされた形で、手に持って高くあげることを指しますが、意味は大きく分けて下記の6つがあります。
- 高い所にあげる。
- 持ち上げる。
- 目立つように記載する。
- 広く知らせる。
- めくって上げる。
- 明るくする。
以下に、それぞれの意味の説明と使い方を紹介します。
「掲げる」それぞれの意味の説明と使い方
①「高い所に上げる」
「高い所に上げる」とは、単に上げるだけでなく、人目に付くように高く上げることです。
【例文】
- 新規オープン前に店の看板を正面に掲げた。
- 中古品を売買する場合、古物商の許可証を掲げている店で取引をすると安心だ。
②「持ち上げる」
「持ち上げる」とは、高く上げることから派生して、手で持ちながら高い位置に上げることです。手で持ち上げられるくらいの物を、高い位置に差し上げる動作をする際に使います。
【例文】
- 競技場へ入場する際に校名の入ったプラカードを掲げて行進した。
- たいまつを掲げて聖火リレーを行う。
③「目立つように記載する」
「目立つように記載する」とは、注目を集める高い場所に上げるという所から、目立つ場所を選んで書き記す、読んでもらえるように人目に付く場所に掲載する、表示することです。
主に、雑誌や新聞の記事や広告を載せる際に使われます。目立たせたい記事や広告を読者の最も目に入るスペースに載せる、文字の強調などの工夫をして注目させる時などに用います。
【例文】
- 編集長のコラムを巻頭に掲げる。
- 意見広告を中央の見開きに掲げて、多くの人の目に留まるようにする。
④「広く知らせる」
「広く知らせる」とは、自分の意見や方針を強く主張して、多くの人に広く知らせるということです。書き記すだけではなく、考えを世間に表明して明白に示すことも含んでいます。
政治家の公約やスローガン、企業の経営理念などを多くの人に周知徹底させる場合に使います。周知方法には、文書配布、ウェブサイト、会見発表などがあります。
【例文】
- 選挙活動で公約やスローガンを掲げる。
- 多くの企業が、ウェブサイトに経営理念を始めとする様々な企業情報を掲げている。
- 主義や主張を掲げてデモ行進をする。
⑤「めくって上げる」
「めくって上げる」とは、簾(すだれ)やブラインドのように吊るされている物の下の端をめくるように上げるとか、舞台の幕を上方に持ち上げるように巻き上げるということです。
【例文】
- カーテンコールの前に、一旦、幕を掲げる。
- 風で煽られている簾を掲げた。
⑥「明るくする」
「明るくする」とは、ガスや電気の照明がなかった時代に灯火の芯の部分を掻いて明るくするという意味で、「灯火を掲げる」と言っていました。時代劇で、行灯(あんどん)の中の灯明皿や灯台などに油を入れ、芯を燃やして明かりをつける場面を思い浮かべると分るでしょう。
思し召しやりつつ、灯火をかかげ尽くして起きおはします。
訳:(桐壺帝は自身も悲しくてたまらないことから、娘を亡くした桐壺更衣の母の辛い胸の内を)お思いになりながら、灯火を明るくさせて油が尽きるまで起きていらっしゃいます。『源氏物語・桐壷』より
「掲げる」の類語
捧げる
「捧げる」(ささげる)にも物を高く上げる、目よりも高くさし上げて持つという意味があります。ただ、「掲げる」と少し異なる点もあります。
「捧げる」には、自分よりも身分が高い人や素晴らしい人に向けて敬意を表している、物を供える、献呈(けんてい:差し上げること)するなど、相手に対する尊敬の意を含む場合があります。「掲げる」の方は、自分の意見や意思をはっきりと伝えて主張する意味合いが強いのです。
【例文】
- 優勝トロフィーを捧げて笑みを浮かべる。
- お神酒を神棚に捧げる。
揚げる
「揚げる」(あげる)にも現在の場所よりも高い所に移動させる、地中や水中などの低い位置にあった物を、水面上や上空などの高い位置に浮かせた状態にするなどの意味があり、「掲げる」と似た表現になるでしょう。なお、「掲」と「揚」は、漢字が似ているので注意しましょう。
また、「揚げる」には、天ぷらを揚げる、から揚げなど、料理に関する意味もあります。
【例文】
- 正月に凧を揚げて遊ぶ。
- ベッドを2階に運び揚げる。
- 釣り船で釣った魚をその場で揚げてもらう。