然程(さほど)とは?然程(さほど)の意味
「それほど」「たいして」という意味を表す副詞で、多くの場合、後ろに打ち消しの語を伴って用いられます。
然程(さほど)の説明
「然程」は副詞「さ」と副助詞「ほど」が組み合わさってできた複合語です。程度を表す副詞に分類され、否定表現と共に使われることで「それほど〜ではない」「たいして〜ない」という控えめな否定のニュアンスを表現します。例えば「然程ひどい病気ではない」と言う場合、完全に健康というわけではないものの、重大な状態ではないという微妙なニュアンスを含みます。現代の会話では「それほど」や「あまり」が使われることが多く、やや文語的で格式ばった印象を与える言葉です。文学作品や改まった文章の中で見かける機会の方が多いかもしれません。
昔ながらの言葉の響きがなんとも風情がありますね。現代ではあまり使われなくなりましたが、知っておくと日本語の表現の幅が広がりそうです。
然程(さほど)の由来・語源
「然程」の語源は、古語の副詞「さ」と程度を表す助詞「ほど」が組み合わさって成立しました。「さ」は現代語の「そう」に相当し、物事の状態や程度を指す指示語として用いられていました。これに「ほど(程)」が加わることで、「その程度」「それくらい」という意味を形成しました。平安時代の文学作品から既に使用例が見られ、中世にかけて否定表現と共に用いられる現在の用法が確立していきました。漢字表記の「然程」は当て字であり、「然」は「そのように」という意味を表す漢字として選ばれています。
古風な響きがかえって味わい深い、日本語の奥深さを感じさせる言葉ですね。
然程(さほど)の豆知識
面白いことに、「然程」は現代ではほぼ文章語としてのみ用いられますが、方言によっては生き残っている地域もあります。例えば東北地方の一部では、日常会話で「さほど」が現在も使われていることが確認されています。また、この言葉は時代劇や歴史小説でよく用いられるため、若い世代にとっては「昔の言葉」という印象が強いようです。さらに、同じ読み方で「左程」と書かれることもありますが、これは完全な当て字で、語源的には「然程」が正しい表記とされています。
然程(さほど)のエピソード・逸話
作家の夏目漱石は作品の中で「然程」を効果的に用いたことで知られています。『吾輩は猫である』の中では「然程悪くもない」といった表現が散見され、当時の知識人層の会話表現を巧みに再現しています。また、昭和の文豪・太宰治も『人間失格』で「然程の事も無い」という表現を使用しており、主人公の諦念や謙遜のニュアンスを繊細に表現しています。現代では、落語家の立川志の輔師匠が古典落語の中でこの言葉を自然に使いこなし、江戸時代の言葉遣いを現代に伝える貴重な語り部としての役割を果たしています。
然程(さほど)の言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「然程」は程度副詞に分類され、特に「程度限定の副詞」として機能します。統語論的には常に否定表現を伴うことが特徴で、この点で「あまり」や「そんなに」と同じ文法範疇に属します。意味論的には、話し手の主観的な評価を示す「評価副詞」の性質も持ち、客観的事実ではなく話者の判断や印象を伝える役割を果たします。歴史的には、中古日本語から中世日本語にかけての否定表現の発達と密接に関連しており、日本語の否定表現体系の変遷を研究する上で重要な言語資料となっています。また、現代語における使用頻度の低下は、日本語の話し言葉と書き言葉の乖離現象の一例としても注目されています。
然程(さほど)の例文
- 1 週末の予定を聞かれて「然程大きな用事はないけど、のんびり過ごそうと思って」と答える、なんとも言えない充実感のない休日のあるある
- 2 友達に勧められた映画を見た後、「然程面白くはなかったけど、時間つぶしにはなった」と微妙な感想を抱えるあるある
- 3 新しいスマホに買い替えたものの、「然程性能は変わらないけど、まあ気分転換にはなったかな」と自分に言い聞かせるあるある
- 4 久しぶりに会った友人に「痩せた?」と言われて、「然程変わってないよ、たぶん服のせいだね」と照れくさそうに返すあるある
- 5 仕事のミスを指摘されて「然程重大な問題ではないけど、次からは気をつけるように」と内心ほっとしながらも真面目なふりをするあるある
「然程」と類語の使い分けポイント
「然程」にはいくつかの類語がありますが、微妙なニュアンスの違いがあります。適切に使い分けることで、より正確な表現が可能になります。
| 言葉 | 特徴 | 適した場面 |
|---|---|---|
| 然程 | 文語的で格式ばった印象 | 改まった文章・ビジネス文書 |
| あまり | 口語的でカジュアル | 日常会話・親しい間柄 |
| さして | 中立的で硬すぎない | 一般的な文章・丁寧な会話 |
| たいして | やや砕けた印象 | カジュアルな会話 |
特にビジネスシーンでは、「然程」を使うことで知的な印象を与えながら、控えめな否定表現ができるのが特徴です。
使用時の注意点とよくある間違い
- 否定形とセットで使うのが基本です(例: 「然程〜ない」)
- 肯定文で単独使用するのは避けましょう
- 若い世代には通じない可能性があるため、対象読者を考慮して
- 過度に使いすぎると堅苦しい印象になるので適度に
「然程」は、あくまで程度が大きくないことを示す表現です。完全な否定ではなく、「完全ではないが、かといって重大でもない」という微妙なニュアンスを含みます。
— 日本語学者 大野晋
歴史的変遷と現代での位置づけ
「然程」は平安時代から使われている古い表現で、当初は和文だけでなく漢文訓読文でも用いられていました。江戸時代には既に現在とほぼ同じ用法が確立しており、明治時代の文豪たちも作品の中で好んで使用していました。
現代では日常会話での使用頻度は減りましたが、文学作品や新聞記事、学術論文などでは依然として重要な表現として生き続けています。また、ビジネス文書での使用も適切とされており、教養のある話し手の印としての役割も果たしています。
よくある質問(FAQ)
「然程」は日常会話で使っても不自然ではありませんか?
「然程」はどちらかと言えば文語的な表現で、現代の日常会話ではあまり使われません。若い世代には通じないこともあるため、友達同士のカジュアルな会話では「あまり」や「それほど」を使う方が自然です。ただし、改まった場面や文章では、しゃれた印象を与えることができますよ。
「然程」と「あまり」はどう使い分ければいいですか?
「然程」は格式ばった印象で、主に書き言葉として使われます。一方「あまり」は話し言葉でもよく使われ、よりカジュアルなニュアンスです。意味はほぼ同じですが、場面に応じて使い分けると良いでしょう。例えばビジネス文書では「然程」、友達との会話では「あまり」がおすすめです。
「然程」を肯定文で使うことはできますか?
基本的には否定表現とセットで使う言葉です。「然程〜ない」という形が一般的で、肯定文で単独で使うことはほとんどありません。肯定の意味で程度を強調したい場合は、「非常に」や「とても」などの別の表現を使うのが適切です。
「然程」と書いて「さほど」と読む理由は何ですか?
これは漢字の「当て字」と呼ばれるものです。「然」は「そのように」という意味を持ち、「程」は程度を表します。これらを組み合わせて「その程度」という原義を表現しているのですが、読み方は元からあった日本語の「さほど」をそのまま当てはめています。日本語にはこうした漢字の意味と読み方が一致しない表現が多くありますね。
「然程」を使うとどんな印象を与えますか?
「然程」を使うと、教養がある落ち着いた印象を与えることができます。また、少し古風で上品な響きがあるため、相手を立てるような丁寧な言い回しにも適しています。ただし、あまり堅苦しすぎると感じられる場合もあるので、状況に応じてバランスを考えることが大切です。