「賄う」とは?
「賄う」は、(まかなう)と読みます。多義的な言葉で、しかもそれぞれの意味において日常会話でよく使われるので、混乱する場合もあることでしょう。
「賄う」は、次の四つの意味をもちます。
- 人手、費用、物資などを調整して供給し、必要を満たすこと、限りある範囲のなかで対処すること
- 食事をととのえて出すこと
- 生活を切り盛りする、物事を処理する
- とりしきる、とりはからう
「賄う」をより深く理解するため、「賄」の字義についてもみていきましょう。
「賄」の字義
「賄」は、音読みが(わい)、訓読みが(まかなう)です。使われる機会が少ない漢字ですので、読み方がわかりづらいかもしれませんが、「賄賂」(わいろ)という言葉は見聞きしたことのある方も多いでしょう。
意味は二つあります。一つ目は、金品を送り、見返りに何かを期待すること。まさに賄賂の「賄」がそれにあたります。
二つ目は、まかなう、切り盛りする。ちなみに、切り盛りする、とは物事をうまく対処する、仕事や家事などをうまくさばくことを意味します。「賄う」は、この二つ目の意味が該当します。
「賄う」の使い方
「賄う」は、上記1の「費用や人手を用意し整える、限りあるなかで対処する」という意味で用いる際に、誤解されやすい部分がありますので注意が必要です。
たとえば「パーティーの費用を賄う」と表現した場合、パーティーに「必要なだけの費用」についての算段であることに留意しましょう。
資金を集めるのであれ、不足分をボーナスで補うのであれ、やりくりし、調整して必要なだけを準備するわけですから、過不足なく用意できたときに、「賄う」を用いるのがふさわしいでしょう。
後述の文例では、上記の意味1~3のそれぞれについて挙げますが、4のとりしきる、とりはからう、という意味は現代日本語では使われませんので、割愛します。
「賄う」の文例
- 恵美さんは、結婚資金を賄うために、夜勤の回数を増やしてもらうことにした。
- ハロウィーンパーティーで10人の子どもたちにあげるお菓子は、3000円で賄った。
- 料理好きの真由美さんは、家族に料理を賄うことは、心からの楽しみなのだという。
- 子どもたちが受験期に入ると、夫の給料だけで生活を賄うことは不可能になった。
「賄う」の類語
「やりくり」の意味と使い方
「やりくり」は、足りないものを様々に工夫し、努力して間に合わせること、都合をつけることを意味します。「賄う」の、上記1の意味における類語といえます。
【文例】弘君は、一年間やりくりして貯金し、フィアンセにダイヤモンドの婚約指輪を贈った。
「工面」の意味と使い方
「工面」(くめん)は、多義的な言葉ですが、いろいろな手段を講じ、方法を考えて備えること、わけても必要とされる金銭を、さまざまな方法で用意する場合に使われることが多い言葉です。
【文例】山本君はなんとか資金を工面して、ついに夢だった別荘を軽井沢に建てた。
「捻出する」の意味と使い方
「捻出する」は、やりくり、工夫をして金銭や時間などを作り出すことです。足りないものを工夫で間に合わせる、というニュアンスが強い言葉です。
【文例】甲子園に出場するA高校は、OBを中心に寄付を募るなどして、球場への応援団派遣費用を捻出した。
「料理を供する」の意味と使い方
「料理を供する」とは、つくった料理を食べてもらえるように相手に差し出すことです。「供する」に「(身分の高い人に)差し出す」という意味があることから、高位の者に料理を提供する、という意味合いの強い表現です。
食事を整えて出すという意における「賄う」の類語ですが、「賄う」の他の意味を含めて勘案すると、身分の高い人に対して使うことはふさわしくないでしょう。
【文例】鈴木シェフは、おしのびで来日した某国の大統領に料理を供するという幸運に恵まれた。