「儚い」の意味
「儚い」は、あっけなく消えてなくなりそうなさま、不確かで現実味がないさまを表現する形容詞で、次のような意味があります。
- 束の間で、あっけない。あっけなくむなしいさま。
- しっかりしたところがなく、頼りにならない。
- さして重要ではない。かりそめである。何ということもない。
- まともでない。粗略である。みすぼらしい。
- 思慮分別が十分でない。あさはかである。
「儚い」の使い方
「儚い」は、古くから用いられている言葉ですが、現代においては、おもに上記の1や2の意味で用いられます。1ならば「儚い命」、2ならば「儚い夢」といった使い方ですね。「儚い」は、物事や人の様子と結びついてネガティブなイメージを抱かせます。
しかし、日本人が、「朝露」や「恋心」などに「儚さ」を感じ、もののあわれ、趣(おもむき)といったしみじみとした心情を表現してきたことは、多くの和歌や古典などからも読み取れるでしょう。
1の意味:束の間であっけない
- あの子は九歳の夏、交通事故で亡くなりました。花火のような儚い命でした。
- 祖父は病床で、儚い人生だったと嘆いたそうです。
- 桜の花は儚いからこそ美しい。
2の意味:しっかりしたところがない
- 私の初恋は小学6年生の頃で、儚い片思いに終わりました。
- たとえ儚い希望であっても、今はそれにすがるしか前に進む術(すべ)がない。
- 彼女は青白い顔に儚い笑みを浮かべた。
その他の意味(古典での用例)
- はかなきあだ事ももまことの大事をも(とりとめがない風流ごとでも本当に大切な事でも)『源氏物語 帚木』
- 九月二十日余りのほど、長谷に詣でて、いとはかなき家に泊まり(訳:九月二十日過ぎのころ、長谷寺にお参りをして、たいそう粗末な家に泊まり)『枕草子 228段』
- 日本の人ははかなし。虎にくはれなん(訳:日本の人は愚かなものだ。虎に食われてしまうに違いない。)『宇治拾遺物語 巻12第19話』
「儚い」の派生語
「儚げ」は形容動詞、「儚さ」は名詞で、ともに「儚い」から派生した言葉。すぐに消えてしまいそうな様子を表します。
- 彼女を見た瞬間、どことなく儚げで幻想的な姿に衝撃を受けた。
- 夏の夜空に一瞬だけ光り輝き消えていく花部に、儚さを感じる。
「儚い」の類語
「儚い」は多義語で、現代で使われているおもな意味も、上で説明したように2つあります。この2つの意味に分けて、類語を挙げてみましょう。
1の意味:束の間であっけない
- 一瞬:極めて短い時間。一回またたきする間。
- 泡沫(うたかた):水面に浮かぶ泡。はかなく消えやすい物の例え。
- 刹那(せつな):仏教用語における最小の時間単位。極めて短い時間。
2の意味:しっかりしたところがない
- 曖昧(あいまい):はっきりしないこと。いかがわしいこと。
- 不安定:落ち着かないこと。安定しないこと。
- 非現実的:現実にはありえない事。現実離れしていること。