「汲々」の意味
「汲々(きゅうきゅう)」とは以下の意味を持つ言葉です。
- 一つの物事に一心に努めて、他を顧みないさま。
- 小さな事にあくせくするさま。
- あくせくしてゆとりのないさま。
1の「一つのことに集中して取り組んでる」の意味からは、一見するとひたむきで良い印象を受けますが、重要なのは「その他のことを顧みない」というニュアンスが含まれているという点です。
一点集中するあまり周囲が見えていない状態なので、「重要な事柄や本質的な課題を見落としているおそれ」をほのめかす表現ともいえます。
2と3に関しては、時間的・精神的な余裕の無さを表しており、基本的にネガティブなニュアンスで使われています。
「汲々」の使い方
「汲々」は日常会話ではあまり使われない表現なので、普段のやり取りでは、「忙しくしている」「あくせくしている」などの表現を用いたほうが伝わりやすいでしょう。
一方で、小説や改まった文章を書くときに「汲々」を使うと、知的で博識な印象を読み手に与える事ができるかもしれません。状況に応じて使い分けるようにするのが良いでしょう。
「汲々」の例文・使用例
- 大手企業は波に乗ってブイブイ言わしてるようですけど、ウチのような零細はどこも汲々としてますよ。
- 目の前の大きなチャンスに気づかず、彼は小銭を稼ぐことに汲々としている。
- 彼は参加者全員に自分の名刺を配り、名を売ることに汲々としていた。
- 今の仕事に汲々としたところで、理想の自分が手に入る訳ではないことに気づく。
「汲」と「々」の字義
「汲々」の「汲」という字には以下の意味があります。
- くむ。くみあげる。
- いそがしい。せわしい。
- ひく。ひっぱる
「汲々」は2の意味で用いられています。なお1の意味については、おもに「水をくみ上げる」様子を表しています。
なお、「汲々」の「々」は「踊り字」と呼ばれる表現のひとつで、同じ漢字を重ねる際の代用字として用いられています。つまり「汲々」は「汲」を繰り返しており、より「忙しさ」が強調されている表現といえるでしょう。
「汲々」の類語・関連表現
汲汲忙忙
「汲汲忙忙(きゅうきゅうぼうぼう)」とは、この上なく多忙なことを表す四字熟語です。「汲汲」はこれまで述べてきたとおり「あくせく働き続けること」を意味しており、「忙忙」は「たいへん忙しいこと」を表しています。
「使用例」
- 年末の大型案件の締切りが迫っており、我がプロジェクトチームは汲汲忙忙とした日々を送っている。
あくせく
「あくせく」とは、「心にゆとりがなく、目先のことに追われてせわしなく行動する様子」や「細かいことを気にして落ち着かない様子」を表す言葉です。
なお「あくせく」は漢字で「齷齪」と書きます。「齷齪」は「歯と歯の間が狭いこと」を表しており、このことから「心が狭い様子」や「せわしない」といった意味に派生していきました。
【使用例】
- 借金返済のために、彼は来る日も来る日もあくせくと働いた。
固執
「固執(こしつ・こしゅう)」とは、「自分の意見や態度を全く変えないこと」を指す言葉で、ポジティブ・ネガティブ両方の意味で使える表現です。
なお「固」は「かたい」や「本当に」を表しており、「執」には「つかんで離さない」「こだわる」といった意味があります。
【使用例】
- 事業を成功させたいのなら、自分の考えに固執せず、色々な考え方を取り入れるべきだ。
- 自分が描いたプランに最後まで固執した結果、想定通りの成功を収めることができた。