「懸案」とは?意味や使い方をご紹介

「懸案」(けんあん)という言葉は、日常会話にはほとんど登場しないながら、ビジネスシーンや文書などには頻出します。「懸案事項」となればなお、新聞やニュースなどでも見聞きすることでしょう。今回は「懸案」の意味と使い方を類語を含めてご紹介します。

目次

  1. 「懸案」とは?
  2. 「懸案」の字義
  3. 「懸案」の使い方
  4. 「懸案」の類語

「懸案」とは?

「懸案」(けんあん)とは、以前から解決すべき問題となっていながら、結論が出せていない案件や事柄予定が立っていながら実現されていない案件や事柄を意味する言葉です。

なお、「懸案」にはもうひとつ、「かけづくえ」という読み方があり、その場合は神前に供え物を置くための机を意味します。

今回の解説の詳細においては「かけづくえ」は割愛いたしますが、後述する「懸」「案」の漢字の説明によって、「懸案」が二つの意味をもつ理由を理解していただけることでしょう。

「懸案」の字義

「懸」

「懸」は音読みが(けん)、訓読みが(ける、かる)。意味は以下の通りです。

  1. かける、かかる、ぶらさげる。
  2. かかげて示す。
  3. 託する。
  4. 決着していない。
  5. 遠くへだたる。

「案」

「案」は、音読みが(あん)、訓読みが(かんがえる、つくえ)。意味は以下の三つです。

  1. 考える、計画。
  2. 下書き。
  3. 机、物を置くための台。

「案」に「机」という意味があることから、机の上で作業する「計画」「下書き」などの意味が派生したという説もあるようです。今では逆に「机」としての意味はほとんど知られなくなっていますね。

「懸」と「案」

「懸案」(けんあん)に用いられているのは、「決着していない」という意味の「懸」と、「計画」という意味の「案」で、端的にいえば未決着の計画、という意味です。

「懸案」(かけづくえ)に用いられているのは、「託する」という意味の「懸」と、「物を置く台」としての「案」で、すなわち神に託す供え物を置く台、という意味です。

「懸案」の使い方

「懸案」を使うさいのポイント

「懸案」という言葉を使うさいのポイントは、「以前から解決すべき問題となっていながら」「すでに先の予定が立っていながら」という前提があっての「未解決」という点です。

さらにいえば、解決できていない期間がかなり長い場合に用いるのが適切です。たとえば、会社のある部門でひとつの企画が承認されたとします。一か月後と予定されている実施が一週間ずれこんだくらいで「懸案」を用いるのは、やや尚早です。

どれくらいの期間「未解決」であれば使える?

では、どれくらいの期間「未解決」であれば「懸案」を使えるのでしょうか?はっきりこれという定義はありませんが、例えば概ね数か月たっても実現できていない企画であれば、「懸案の企画」は適切な表現といえましょう。

「懸案」の前に置く言葉や文章として、未解決である時期が長いことや、未解決であることを問題視するような表現を付加するケースが多くみられます。例としては、「以前より」「長年の」「かねてより」「最大の」などが挙げられます。

「懸案」の文例

  • 以前よりの懸案事項となっているA社との提携事業が、ようやく契約締結への運びとなる。
  • 当社の長年の懸案である海外進出について、今年こそ第一歩を踏み出す予定だ。
  • かねてより懸案となっているのが、A校とB校を中高一貫校として統合する件だ。
  • わが県最大の懸案事項は、観光資源の育成である。

「懸案」の類語

「未達成」

「未達成」(みたっせい)とは、目的や目標をまだ達成していないことを意味する言葉です。その部分において「懸案」の類語たりえますが、異なるのは、目標を達成できていない期間が長くなくても用いることができる点です。

たとえば、一週間後に英単語を100覚えるという目標をたて、それが達成できない場合に「未達成」を使うのは適切ですが、「懸案の目標」は不自然です。

【文例】真由美さんは、一か月後に2キロ体重をおとすダイエットに挑戦したが、目標は未達成だったと落ち込んでいた。

「留保」

「留保」(りゅうほ)とは、現状のままで留めておくことするべきことを一時差し控える状況を意味する言葉です。

計画や予定の遂行がなされないという意味では「懸案」の類語といえますが、異なるのは、あえて意志をもって延期している、という点です。

【文案】社長が社員の茶髪禁止を社則に入れると言いだしたが、思いのほかに反発が強く、留保となっているそうだ。


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