「悖る(もとる)」とは?意味や使い方を例文でわかりやすく解説

「悖る」という言葉、日常生活ではなかなか見かけない漢字ですよね。でも、ニュースや小説で「人道に悖る行為」といった表現を耳にしたことはありませんか?この「悖る」、実は私たちの道徳や倫理に深く関わる重要な言葉なんです。一体どんな意味で、どのように使われるのでしょうか?

悖る(もとる)とは?悖る(もとる)の意味

道理や規範に反する、背くこと。また、ゆがむ・ねじ曲がるという意味も持つ。

悖る(もとる)の説明

「悖る」は、人が守るべき道理や規範から外れている様子を表す言葉です。特に「人道に悖る」「倫理に悖る」のように、社会的な常識や道徳に反する行為を非難する文脈で使われることが多いです。古語では四段活用の動詞として用いられ、平安時代の『日本霊異記』や『日本書紀』にも登場する歴史のある言葉です。現代ではやや硬い表現ですが、重大な倫理違反を強調したい時に効果的に使えます。例えば「詐欺は人道に悖る行為だ」のように、強い非難の気持ちを込めて用いられます。

社会のルールや道徳に反する行動を戒める、深みのある言葉ですね。

悖る(もとる)の由来・語源

「悖る」の語源は「戻る」と同じく、「もとる」という古語に遡ります。元々は「逆らう」「背く」という意味で、漢字の「悖」は「忄(りっしんべん)」が心を、「孛」がもつれる様子を表し、「心がもつれて道理に逆らう」という原義を持ちます。平安時代の文献『日本霊異記』や『日本書紀』にも登場するほど歴史が古く、古代から人々の道徳観念と深く結びついた言葉でした。

古くから人の道を問い続けてきた、重みのある言葉ですね。

悖る(もとる)の豆知識

面白いことに「悖る」は、現代ではほぼ死語に近い状態ですが、法律や倫理に関する硬い文章では今でも使われることがあります。また、この言葉が最も頻繁に使われるのは「人道に悖る」という表現で、戦争犯罪や人権侵害を非難する国際的な文書でも見かけることがあります。さらに、漢字の「悖」は常用漢字ではないため、一般的な文章ではひらがなで「もとる」と表記されることが多いのも特徴です。

悖る(もとる)のエピソード・逸話

作家の夏目漱石は『こゝろ』の中で、主人公が「道義に悖る」行為に苦しむ様子を描きました。また、実業家の渋沢栄一は「論語と算盤」で、利益追求だけが目的となる商業行為を「人道に悖る」として戒める記述を残しています。近年では、ある政治家が「公共の利益に悖る」行為をしたとして批判された際に、この言葉がニュースで大きく取り上げられ、改めて注目を集めました。

悖る(もとる)の言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「悖る」は四段活用から五段活用へ変化した動詞の典型例です。古語では「もとらず」(未然形)、「もたり」(連用形)と活用しましたが、現代語では「もとらない」「もとります」と変化しています。また、この言葉は「反する」「背く」などと意味的に重なる部分がありますが、「悖る」には特に「道徳的・倫理的な規範に対する故意の違反」というニュアンスが強く、語用論的に見てもより深刻な非難を含む表現となっています。

悖る(もとる)の例文

  • 1 仕事で小さなウソをついた後、なんだか自分が倫理に悖ることをしてしまったような気がして、一日中モヤモヤしてしまいました。
  • 2 友達との約束をドタキャンしてしまい、信義に悖る行為をしたと後悔。きちんと謝らなければと反省する日々です。
  • 3 電車でお年寄りが立っているのを見て見ぬふりをしてしまい、人道に悖ることをしたと自己嫌悪に陥った経験があります。
  • 4 SNSで他人の悪口を書いてしまい、後から道義に悖ると気づいて慌てて削除。つい流されてしまう自分にがっかりです。
  • 5 環境に優しい生活を心がけたいと思いながら、ついレジ袋をもらってしまう。理念に悖る自分の行動に毎回悩んでいます。

「悖る」の使い分けと注意点

「悖る」は格式ばった文語的な表現で、日常会話ではあまり使用されません。使用する際には以下の点に注意が必要です。

  • 「背く」よりも道徳的・倫理的な非難のニュアンスが強い
  • 主に「人道」「倫理」「道義」「信義」などの規範を表す言葉とセットで使用する
  • 個人の小さな過ちよりも、社会的に重大な違反行為を非難する際に適している
  • 常用漢字ではないため、公文書などではひらがな表記が推奨される場合がある

例えば、友人との約束を破った程度の行為に「信義に悖る」と使うと大げさに聞こえるため、より軽い「約束を破る」などの表現が適切です。

関連用語と類義語のニュアンスの違い

言葉読み方意味使用場面
悖るもとる道徳・倫理規範に故意に反する重大な道徳的違反を非難
背くそむく規則・命令に従わない一般的な違反行為全般
反するはんする相反する、違反する客観的事実の不一致
違反するいはんする規則・法律に従わない法的な違反行為

「悖る」は特に「人道」「倫理」といった抽象的な規範に対する意識的な違反を表し、他の類義語よりも非難の度合いが強いのが特徴です。

歴史的・文化的背景

「悖る」は古代中国の儒教思想の影響を強く受けた言葉です。『論語』や『孟子』などでは、道徳に反する行為を戒める文脈で類似の表現が頻繁に登場します。

「己の欲せざる所は、人に施すことなかれ」という論語の教えに悖る行為は、社会の調和を乱すものである

— 孔子

日本では平安時代から使われており、貴族社会の道徳観や武士道の精神にも影響を与えました。近代では福沢諭吉や新渡戸稲造など、道徳教育に関わった知識人たちの著作でも重要な概念として扱われています。

よくある質問(FAQ)

「悖る」と「背く」の違いは何ですか?

「背く」は単に規則や命令に従わないことを指しますが、「悖る」は特に道徳や倫理といった人間として守るべき規範に反するという、より深刻なニュアンスを含みます。例えば「法律に背く」は違反行為全般を指しますが、「人道に悖る」は人としての道理に反する重大な非人道的行為を指します。

「悖る」は日常生活で使う機会はありますか?

日常会話ではあまり使われませんが、新聞の社説や倫理に関する議論など、格式ばった文脈で見かけることがあります。特に「人道に悖る」「倫理に悖る」といった表現は、重大な道徳的違反を非難する際に用いられることが多いです。

「悖る」の読み方が「もとる」なのはなぜですか?

「悖る」は「戻る」と同語源で、どちらも「もとる」と読みます。元々「逆らう」「道理に反する」という意味を持つ古語で、漢字の「悖」が当てられるようになりました。歴史的仮名遣いでは「もとる」と表記され、現代でもその読み方が受け継がれています。

「悖る」を使った具体的な例文を教えてください

「企業の不正な利益追求は社会の信義に悖る行為だ」「戦争による民間人への攻撃は明らかに人道に悖る」「約束を破ることは友人との信頼関係に悖ることになる」などのように、道徳や倫理に反する行為を批判する文脈で使われます。

「悖る」の反対語は何ですか?

直接的な反対語はありませんが、「従う」「遵守する」「順守する」などが対義的な表現として使えます。また「道義に適う」「倫理にかなう」のように、道理に合致することを表す表現が反対の意味合いを持ちます。