「齎す」の意味と使用例
「齎す」(読み:もたら-す)の「齎」という字には、「持ってくる」や「持っていく」などの意味があります。これを踏まえ、「齎す」の二つの意味について見ていきましょう。
持ってくる・持っていく
「齎す」はもともと、持ってくるや持っていくという意味。具体的な形になっている物ではなく、抽象的で形がない現象や状況などに対して使うことがほとんどです。
《使用例》
- 早朝に赤富士を見ると、吉報を齎すと伝えられている。
- 黒猫が不幸を齎すなんて嘘だ。家で飼うようになってからどんどん運気が上昇しているぞ。
- 平和な毎日が齎され、幸せな生活を送っている。
ある状態を実現させる
「齎す」は「持ってくる」という意味から派生して、ある状態を実現させることを指すこともあります。大きな災害で被害が出る、大事件で各方面に打撃を及ぼすといった、物事の影響である状態が成立する時に用いられます。
《使用例》
- 竜巻が起こると大きな被害を齎す。
- 主だったリーダーの対立はグループ崩壊の危機を齎す。
「齎す」の英語表現
持ってくる・持っていくという意味での英語表現
【bring(齎す・持ってくる)】
Blue bird is said to bring happiness.
青い鳥は幸せを齎すと言われています。
※"carry”にも運ぶなどの意味がありますが、「(荷物などの物を)手に持って運ぶ」ことから、実際に目に見えない幸運などを「齎す」という時には使いません。
ある状態を実現させるという意味での英語表現
【bring out(引き起こす)】
A typhoon bring out a disaster.
台風は災害を齎す存在だ。
【lead to(〜に至る)】
A little oversight led to serious consequences.
ちょっとしたうっかりミスが、非常に深刻な事態を齎してしまった。
「齎す」の類語
持ってくるという意味の類語
【将来(招来)する】(読み:しょうらいする)
「将来」と名詞で用いると未来や先のことをいいますが、「将来する」と表した場合、ある状態や結果を招くこと、新しい知識や未知の物を持ってくることを意味します。
「招来」は人を招いて来させるようにするという意味ですが、「招来する」という使い方もできる言葉です。
《使用例》
- 品物の値上げは消費の冷え込みを将来する。
- 『西遊記』で三蔵法師は孫悟空らお供の者と天竺まで旅をして、ついには中国に経典を将来した。
ある状態を実現させるという意味の類語
ある結果を生じさせるという意味合いで使われます。どちらかと言うと、好ましくない結果が起こった時に使うことが多いでしょう。
《使用例》
- 長年の無理がたたったせいか、体に変調を来した。
- 反対派の妨害工作で、運営に支障を来す。
「齎す」の表記について
「齎」の字の形
「齎す」を書こうとしても、スマートフォンなどで文字のサイズを大きくしながらでないと、はっきりと字の形を把握することは難しいのではないでしょうか。目安ではありますが、「齎」の字形について説明します。辞書などで形を確かめてみてください。
「齎」の上半分を見てみると部首のなべぶた「亠」の下には、左に「刀」、真ん中にアルファベットの「Y」、右に「氏」から横棒「-」を差し引いたような形が書かれています。
下半分を見ると、左下に払うカタカナの「ノ」で上部分に「二」、右側に「|」といった形です。真ん中「二」の下部に「貝」という字を書いて「齎」の字を書くことができます。
漢字で書けない場合はどうしたらいい?
「齎」という漢字は常用漢字ではない「JIS第2水準漢字」のため、一般的な文書で見かけることは少ないでしょう。「もたらす」と平仮名で表記する方が読みやすいかもしれませんね。ただし、「持たらす」という表記の仕方は間違いですので注意してください。