「嗤う」の意味
「嗤う」(わらう)とは、「人をばかにしてわらう」「人をさげすみ、見下してわらう」という意味です。
よく知られた字で「笑う」と書く場合でも人を見下すニュアンスが含まれることがありますが、「嗤う」と書く場合には、そのネガティブなニュアンスのみが浮き彫りとなります。
「嗤」の字について
「嗤」という字は、音読みでは「シ」、訓読みでは「わら-う」のほかに「あざわら-う」と読む場合もあります。
口へんは口を大きく開けることを表しますが、「蚩」(シ)のつくりはその成り立ちがはっきりしていません。山に虫と書くことから山野に関係する虫を表すと考えられ、虫から連想して「わずらわしい」「みにくい」「うるさい」などの意味に通じています。
「嗤」と「蚩」は基本的に同義語として扱われ、「蚩」自体にも「ばかにする」「わらう」という意味があります。
「嗤う」の使い方
「嗤う」は、誰かが誰かをあざ笑うさま、見下して笑うさまを指して使います。読み方そのものは「笑う」のほうと区別がつかないこともあり、基本的には文語的表現として小説などで使われる表現です。
イメージとしては、フィクションなど創作物の中で悪役が主人公に対し「未熟者め、お前のやり方は間違っているのだ、ははは!」とわらうさまが「嗤う」と表現するにふさわしいでしょう。
好意的な成分がまったくなく、相手を見下して馬鹿にする「わらい」を指す言葉ですので、にっこり微笑むような「笑い」と同列に使用しないようにご注意ください。
例文
- いつも私のことを妬んでいた級友は、その日も私の失敗をあげつらい、皆の前で嗤った。
- 傷つきやすい彼は、自分がいつも陰で嗤われていると思い込んでいる。
- 嫌味な先輩が、「そんなこともわからないのか?」と嗤う。
「嗤う」以外の「わらう」
「わらう」という字は、「嗤う」「笑う」の他にも「哂う」「咲う」と書きます。それぞれの意味を簡単にまとめます。
- 嗤う…相手を見下し、ばかにしてわらう
- 笑う…楽しい、面白い、おかしくてわらう
- 哂う…あざわらう、含みわらい、大声でわらう
- 咲う…口をすぼめて笑う(花が咲く、つぼみが開くという意味もある)
ただ、下の二つはほとんど使われていないため、読み方も意味も伝わらない可能性が大です。基本的には「笑う」を使うことを覚えておけばよいでしょう。
「嗤う」の英語表現
「嗤う」を英語で言いたい場合には、以下のような単語を用いましょう。
- laugh(声を立ててわらう)
- sneer(あざわらう、冷笑する)
- scoff(あざける)
- jeer(ひやかす、あざわらう)
「laugh」は楽しくてわらう場合(=笑う)にも用いられるのですが、相手をばかにしてわらう際にも用いられます。使用する文脈に注意しましょう。それ以外の単語には、文脈に関わらず軽蔑のニュアンスが含まれます。
いずれの単語も「at」(~を)で対象を明確にすると、「誰か・何かを名指しでわらう」意となるため、より「嗤う」の意味が出やすいでしょう。逆に「楽しくて笑う」際に「at」を使うと、少々無礼な印象となる場合があります。
例文
- He was laughed into silence.(彼は嗤われ、沈黙した)
- She sneers at his poor clothes.(彼女は彼のみすぼらしい服装を嗤った)
- They scoffed my research result were "meaningless".(彼らは私の調査結果を「無意味だ」と嗤った)
- Rose jeers at his failure.(ローズは彼の失敗を嗤う)