「繰り広げる」の成り立ち
「繰る」の意味は「細長く巻いてある物や、つながっている物を引き出す」・「書物などのページをめくっていく」などです。一方、「広げる」は、「巻いている物を開く」・「面積や範囲、規模を広くする」などの意味で用いられます。
「繰り広げる」(読み:くりひろげる)は、「繰る」と「広げる」という2つの動詞がくっついた複合動詞ですから、これら2つの意味が組み合わさった意味を成しています。それでは、「繰り広げる」の意味を詳しく見ていきましょう。
「繰り広げる」の意味:次々に広げる
ご存知のとおり、昔の書物は巻物の形をしていました。「繰り広げる」は元来、巻物などを「次々に広げる」・ひとまとまりの巻物を「順番を追って広げる」ことを指す言葉だったのです。上で説明した「繰る」と「広げる」がそのままの意味で使われていますね。
使い方
昔の書物と言われて思い浮かべるのは源氏物語や平家物語、私撰(個人や民間で作品を選んで編纂すること)や勅撰(勅命によって詩文を選んで編纂すること)の和歌集などでしょうか。
長編の物語やいくつもの詩文をまとめた作品は、1つの巻物に収めることができませんから、幾つかの巻物に分けて収録されています。
「繰り広げる」は巻いてある物を物理的に次々と広げるときに用いられます。それだけでなく、長編の書物を最初から最後まで完読するという意味でも使われていたのかもしれませんね。
例文
- 貴重な文化財の絵巻物を繰り広げる。
- 巻いて保管していた数枚のマットを繰り広げて敷いた。
「繰り広げる」の意味:目まぐるしく新しい内容に進行する
「繰り広げる」には、もともとの「次々に広げていく」ことから派生して、「次々に展開していく」・「目まぐるしく新しい内容に移り進んでいく」という意味もあります。現在ではこちらの意味で用いられることの方が多いでしょう。
使い方
「繰り広げる」は、いろいろな場面が次々現れることを表します。映画やドラマでめまぐるしく場面が移り変わっていくような感じですね。
また、スポーツやコンクール、あるいは対戦型ゲームなどで、それぞれのチームや個人が熱く競い合うことを「熱戦を繰り広げる」ということもあります。選挙や運動(ムーブメント)に対して用いられることもある言い回しです。
このほかにも、「繰り広げる」は恋愛や派閥争いなどによってめまぐるしく変化する人間関係に対しても用いられます。話者が野次馬感覚で見ているようなところを想像すると理解しやすいでしょう。
例文
- ワイドショーでは早くも次の話題が繰り広げられている。
- ゴール付近では4人の選手がメダルを賭けて熱戦を繰り広げている。
- 多くの女性によって、イケメンのAくんを巡る恋の鞘当てが繰り広げられた。
「繰り広げる」の同義語
「繰り広げる」の同義語には「展開」を挙げることができます。「展開」(読み:てんかい)は、物事の範囲を大きく広げること・順を追って進行させること・状況や場面などが目の前で次々と起こって進むことなどを表す言葉です。
「展開」は、日常会話においては、「新しい内容に進む」というニュアンスで用いられることが多いようです。
【使用例】
- 2時間ドラマは話の展開が非常に早く、視聴者を飽きさせない。
- 今年の日本シリーズは、両者がしのぎを削る展開ですね。
「繰り広げる」の反対語
「収束」
「繰り広げる」の反対語には、「収束」が挙げられます。「収束」(読み:しゅうそく)は、もともと、集めて束にするという意味です。
「収束」は、原義から派生して「物事の収まりがつく」・「締めくくりをつける」ことを表すこともあります。締めくくることができれば、物事は終わりを迎えることになりますね。
つまり、それ以上の進行や変化がないわけですから、「繰り広げる」の反対語と捉えられるでしょう。
【使用例】
- どうやら、社長と副社長の派閥争いは収束しそうだね。
- あの恋愛ドラマは、ヒロインが彼氏に別れを告げて自立へ踏み出すという内容で収束したからか、多くの女性から続編を求める声が上がっている。
「終息」は反対語ではない?
【使用例】
- インフルエンザの終息宣言が出された。
- 戦争が終息して、多くの人が安堵した。