「淘汰」とは?
「淘汰」(とうた)には、以下の2つの意味があります。
- 不用のものを除き去ること。不適当の者を排除すること。
- [生物学用語]環境・条件などに適応するものが残存し、そうでないものが死滅する現象。選択。
1と2が示すものは微妙に異なりますが、共通しているのは、「いらないもの、適応できないものを排除する」という意味ですね。
2は生物学用語ですので、生物についてのみ用います。一方、1の意味は「使われない言葉は淘汰される」のように、生物以外についても用いることができます。
字義
- 「淘」…「水」と「こねる」の意から、「水にひたして悪いものを取り除く」意味。
- 「汰」…「水」と「えらぶ」の意から、「水であらって、選び分ける」意味。
「淘汰」の使い方
「淘汰」という言葉は、既に述べたように「不用なものを除き去ること」という意味ですが、「〇〇を淘汰する」のように能動的な形で使われることは稀です。
自然や環境の要因、もしくは時間の流れによって、不純物や不適当な要素が「結果的に取り除かれる」というニュアンスで使われることが多く、「〇〇は淘汰される」という受身形での使用が一般的です。
また、「何が淘汰されるものであるか」は、実際に淘汰が起こるまではわからない場合がほとんどです。そのため「淘汰」は、何らかの結果について述べる文脈の中で用いられることが多いようです。
例文
- 消費者の声を無視し続ける企業は、淘汰されて当然だ。
- 急速な砂漠の拡大によって、水を必要とする多くの生物は淘汰されてしまった。
- 厳しい競争と淘汰を生き残った選手だけが、全国大会への出場を許される。
「淘汰」の基準となるもの
「淘汰」はなぜ、どのような基準に従って起こるのでしょうか。この疑問への一般的な回答は、「より良いものを残存・存続させるため」というものです。
「淘汰」が単なる「排除」と異なるのは、より良いものを残すため、という明確な方向性が存在する点です。より良いものを判断するのは「選ぶ」ことですから、生物学用語における「淘汰」は「選択」とも言い換えられます。
そして、生物学的な見地では、「淘汰=選択」の基準となるものについて「自然淘汰」と「人為淘汰」のふたつに言及しています。順に説明していきましょう。
自然淘汰
自然淘汰とは、ダーウィンによって提唱された適応進化論の一説です。ある生物個体に変異が生じ、その変異が生存・繁殖の面において他の個体よりも環境への適応力に優れていた場合、その変異は後の世代により多く広まる、という考え方です。
例えば、キリンの首の長さは現在4メートルほどもあります。これを、「首が長く変異した個体のほうが、短い個体よりも食事などの面で有利だった。そのため、首の長い個体のみが今の世代に生き残った」と説明するのが自然淘汰説です。
この例では、自然の力によって、より優れた適応力をもつ個体が選択されていると言えるでしょう。また、このような淘汰を生む個体間の形質の差や環境要因を、「淘汰圧」(選択圧)と呼びます。
人為淘汰
人為淘汰とは、生物の品種改良に代表されるように、目的にかなった性質をもつ個体を何代にもわたって選抜しつつ交配し、その性質を一定の方向に変化させることを言います。
例えば、現在私たちの食卓に並ぶ米や肉、野菜や果物は、より美味しくなるように、より多く採れるように、品種改良されてきたものがほとんどです。これらは、より味の良い種や、より大きく育つ種を交配し続けることで実現されてきました。
この例では、人間の目的にかなわない個体は交配の対象に選ばれず、排除されてしまうことになります。しかし人間の目線で考えれば、より良いものが選択的に残存・存続していると言えますね。
「淘汰」の英語表現
「淘汰」の英語表現として、「selection」があります。生物学用語にしたがった「選別、選抜」というニュアンスですね。
また、無駄なもの、不要なものを省くという意味で、「weed out」(取り除く)や、「reduce」(削減する)などの表現が用いられることもあります。
例文
- As in Darwin's theory of natural selection, a species must adjust to survive.(ダーウィンの自然淘汰理論によれば、種は生き残るために適応しなければならない)
- The useless have to be weeded out.(無用なものは淘汰されなければならない)