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「堪える」の読み方
「堪える」は、「こらえる」と「たえる」、さらに「こたえる」の三つの読み方があり、どちらで読んでも正解です。いずれも送り仮名が「える」であるうえ、「こらえる」と「たえる」、「こたえる」は意味も近い言葉なのです。
「堪える(こらえる)」と読む場合
「堪える(こらえる)」の意味と語源
「堪える」を「こらえる」と読む場合、意味は以下の通りになります。
- 苦しみ、痛みなどを我慢する
- 感情を抑えて外に出さない
「堪える」の語源は「凝る」だと言われています。「こる」にはそもそも「固まる」という意味があり、「こる」に未然形の「ふ」をつけて「心を固まらせ続ける」という意味の「こらふ」になりました。
この「こらふ」が「こらえる」へと変化し、心を固まらせ続ける様子から、なにかを我慢し続けることを意味するようになりました。
「堪える(こらえる)」の例文
- くやし涙を堪える
- 口を押さえてあくびを堪える
- 笑いを堪えるので精いっぱいだ
- 酔いつぶれて吐き気を堪える
- 無理な体制のままじっと堪える
- 罵詈雑言に堪える
「堪える(たえる)」と読む場合
「堪える(たえる)」の意味と語源
「堪える」を「たえる」と読む場合の意味は以下の通りになります。
- 苦しみ、辛さを我慢する
- 外からの圧力に屈しないで支えとなる
- ~に値する、それをするだけの価値はある
基本的には「こたえる」と意味は同じですが、「たえる」には「こらえる」にはない「~の価値がある」という意味があります。「この本は読むに堪えない」といったときに使います。
「たえる」は「手」を意味する「タ」が語源で、もともとは「手で支え続ける」という意味でした。
「堪える(たえる)」の例文
- 深海での水圧にも堪える
- きつい仕事に堪える
- 辛さに堪える精神力がない
- 見るに堪えない姿
- 聞くに堪えない幼稚な持論だ
「堪える(こたえる)」と読む場合
「堪える(こたえる)」の意味と語源
「堪える」を「こたえる」と読む場合も、「耐える、こらえる、我慢する」という意味です。しかし、近年では「何とか我慢しているけど、これ以上は耐えられない」というニュアンスで主に用いられます。
「堪える(こたえる)」の例文
- あいつが来るまで持ち堪えろ!
- 今年は暑いけど、体には堪えてない
- これだけガチャ引いても出ないとか、精神的に堪える
- 予約のドタキャンは店としても本当に堪える
- 冬の厳しさが体に堪える
「堪える」の使い分け
「こらえる」と「たえる」と「こたえる」、いずれも「堪える」と書き、さらに意味も同じようなものですが、どのように使い分ければよいのでしょうか。
「堪える」を「たえる」と読む場合、本来は「~に値する」という意味でした。「我慢する」「支え続ける」は、本来、同じ読み方の「耐える」という言葉の意味です。
「耐える」は「堪える(こらえる)」と意味が近いため、「堪える(たえる)」が「耐える」の意味を取り込み、今の形となりました。現在では「堪える(たえる)」の意味としても「我慢する」というのが主流になっています。
「堪える(こたえる)」の場合、「持ち堪える」というような使い方をすることが多いです。
「堪える」の「堪」という漢字
「堪える」の「堪」という漢字は、「カン」や「タン」と読みます。土を盛り立てて基礎を作る様子を表していて、それが「こらえる、たえる」という意味になったという説があります。
意味としてはこれまで見てきた「たえる、こらえる、がまんする」や「値する」がありますが、さらに「勝つ、優れる」という意味もあります。また、「天、天道」という意味もあります。
「堪える」の「堪」を使った言葉
堪能(たんのう、かんのう)
「堪能」(たんのう)はものごとを心ゆくまで味わうことを意味する言葉です。「家元の鼓の音色を堪能した」のように用います。
元々は「かんのう」と読み、ものごとに耐えるだけの力のあることを意味していました。
堪忍(かんにん)
「堪忍」は、物事を耐え忍ぶ、我慢する、我慢して許すという意味の言葉です。「もう我慢できない」という意味で「堪忍袋の緒が切れる」という慣用句があります。
また「許してほしい」と言うときに、時代劇ではよく「堪忍して」という言い回しが使用されますね。
「堪える」まとめ
「堪える」をどう読もうと、意味にそこまでの違いは出ないため、実は「正しい読み方はどれか」なんてわからなくてもよいのかもしれません。
逆に自分で文章を書くときは、相手が読み間違えないように「こらえる」「たえる」「こたえる」とひらがなで書いた方が親切なこともあるでしょう。