「ぼーっとする」:意味と使い方
「ぼーっとする」を大きく分けてみると三つの意味があります。それぞれの意味や使い方を〈どういう状態を表すか〉という観点から見ていくことにします。
「ぼーっとする」:意味と使い方①
「ぼーっとする」は、考えることを中断してくつろいでいる時の力の抜けた状態を表す言葉です。
身体の力を抜いて、頭の活動を停止させることで、意識的・無意識的を問わず、ストレスの解消や能率アップ、思考力の回復などを期待します。
【例文】
- パソコン作業に疲れた時は、目をつぶって少しその場でぼーっとすると楽になる。
- 寝る前に風呂に浸かって一息つき、ぼーっとすることの「幸せ」を噛みしめます。
- 夫婦共働きの我が家では、休日は丸一日、夫婦でぼーっとする時間を楽しみます。
「ぼーっとする」:意味と使い方②
「ぼーっとする」は、頭がシャキっとせず、集中しようとしても、なかなか気持ちがついて来ない状態を表す言葉でもあります。
訳もなくやる気が起きず、頭の動きが鈍くなっているために、立ち直りの”きっかけ”をつかむことさえも容易ではない状態を表します。
【例文】
- 朝から頭がぼーっとするので、思うように目の前の仕事がはかどらない。
- ぼーっとした心もちで家を出たら、案の定、定期券を忘れてしまった。
- 暖かでうららかな日の午後は、頭がかすんだようにぼーっとすることが多い。
「ぼーっとする」:意味と使い方③
「ぼーっとする」は、他人の行動を見て、「気が利かないこと」や「気遣いがないこと」「気配りに欠けること」を指した言葉です。
また、手順の悪さ、礼儀のなさ、やる気のなさを表す言葉として、「ぼーっとしていてはいけない」と、現状を否定する意味でも使われます。
【例文】
- 仕事中にお客様の前で、ぼーっとすることだけは慎んでください。
- もうベテランなんだから、いつまでもぼーっとしていてはいけない。
- 部長はせっかちだから、ぼーっとしていると、すぐに叱られるぞ。
「ぼーっとする」:類語(熟語)
「ぼーっとする」状態を類語の中に探してみることにします。
「恍惚」(こうこつ)
「恍惚」(こうこつ)は、何かに心を奪われてうっとりと満足げに浸っている状態を表した言葉です。
日常の世界、非日常の世界を問わず、視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚に加わった刺激に心地よさを感じている状態です。上記〈意味と使い方〉では、①の意味に近い言葉だといえます。
【例】
- ギターの名演奏に恍惚として聞き入る。
茫然(ぼうぜん)
「茫然」(ぼうぜん)は、何となくはっきりしない、つかみどころのない心の状態を表した言葉です。
さらに「自失」(じしつ)を加えた「茫然自失」は、茫然としていることさえ見失った思考停止の状態を表します。「茫然」は、〈意味と使い方〉の②の意味に近い言葉です。
【例】
- あまりの重大さに茫然自失していたようだ。
「散漫」(さんまん)
「散漫」(さんまん)は、考えが集中できずに焦点の定まらない状態を表した言葉です。また、気の抜けた人、鈍感な人、だらけた人を指して「注意力が散漫」という言い方をします。〈意味と使い方〉では、②と③に近い意味を表しています。
【例】
- 注意力が散漫だと言われて落ち込んだ。
「ぼーっとする」:類語(慣用句)
「ぼーっとする」の類語には慣用句もあります。「ぼーっとする」ことは、誰でもありがちなことですから、その時のその人の条件に合った表現のしかたが生まれてきたようです。
「頭が留守になる」
「頭が留守になる」は、文字通りの意味において「頭の働きがOFFになった」状態を表す言葉です。
留守の家の中の空気が空(うつ)けてぼんやりしているように、頭の中が主(あるじ)不在の活気のない状態だということを表します。
【例】
- 寝不足でついつい頭が留守になる。
「心ここにあらず」
「心ここにあらず」は、気になることに心が奪われていて、目の前のことに集中していない状態を表した言葉です。
たとえば、会話の相手に「相槌がない」「押し黙っている」「視線が合わない」などの様子が見えたら「心ここにあらずの」の状態かもしれません。
【例】
- 彼女の「笑顔」を思い出すと、心ここにあらずになる。
「我を忘れる」
「我を忘れる」とは、自分の存在を全く忘れて、何事かに夢中になっている状態を表した言葉です。
ポジティブな意味で使われる場合もありますが、周りを少しも顧みることがないという、否定的な意味でも使われます。これは「ぼーっとする」をしのぐ「気遣いのなさ」だと言えるかもしれません。
【例】
- 我を忘れて趣味に打ち込む。
「ぼーっとする」:英語での表現と使い方
英語の「zone out」は、「居眠りをしているような集中力の切れた状態」を表します。「zone」は「地域、範囲、区域」を意味する言葉ですが、いつもの範囲から「out」した状態、つまり「普通ではない状態」と解釈できます。
あるいは「in a daze」という表現もあります。「daze」の意味は、「ぼんやり、ぼやぼや」。「in a daze」で「ぼーっとしている状態」を表す意味になりますので、こちらも「ぼーっとする」に近い表現になります。
【例文】
- I just zone out in front of the TV on the weekends.(週末はテレビの前でぼーっとしています)
- Today I have been in a daze.(今日は頭がぼーっとしています)