「逆に」とは
「逆に(ぎゃくに)」は、形容動詞の「逆だ」の連用形。「逆だ」は、「本来の方向・事態などと反対である様子」を表す言葉です。
また、「逆に」には俗語的な表現で、「しかし」「それどころか」のような接続詞として用いられることがあります。ここでは、形容動詞と接続詞、二つの場合に分けて解説します。
「逆」とは
「逆(ぎゃく)」は、おもに次のような意味を持つ言葉です。「逆に」という形容動詞、接続詞として用いられるのは、多く、1の意味を表します。
- 物事の位置や順序、方向が反対であること。または、その様子。
- 道理や道徳に反すること。または、その様子。
形容動詞の「逆に」とは
「逆に」の使い方・類語①物理的な「逆に」
物理的に逆であることを表す「逆に」は、上下・左右・前後・裏表など位置が逆であることを指す場合と、順序や方向が逆向きであることを指す場合とがあります。
【使用例】
- この荷物は上下逆に置かないでください。
- ご飯と汁物の置き方が逆になってるよ。
- "light"のgとhを逆に書いてしまった。
- 駅の方向とは逆に歩いている。
【類語】
- 反対に
- 逆さまに(さかさまに)
- あべこべに
「逆に」の使い方・類語②概念的な「逆に」
実体がないものや概念などについて、状態が反対である・順序が反対であることを表す「逆に」の用例は、次のとおりです。
【使用例】
- 大方の予想とは逆に、A選手が勝った。
- 兄は積極的だが、逆に弟は消極的だ。
- 結論ありきで回答を誘導せず、逆に質問の回答から結論を述べなさい。
- 修正したら、逆にわかりにくい文章になった。
【類語】
- 反対に
- 逆さまに
- あべこべに
「逆に」の使い方・類語③「逆に言えば」
「逆に言えば」「逆に考えると」は慣用表現のひとつ。これらは②に類する使い方で、「逆に」と略されることがあります。
【使用例】
- 彼女の几帳面だが、逆に言えば少し神経質なところがある。
- 攻め込まれているけれど、逆に考えるとカウンター攻撃のチャンスだ。
【類語】
- 裏を返せば・言い方を変えると
- 視点を変えると・別の側面から見れば
「逆に」の使い方・類語④二者択一の「逆に」
二つを比べてあちらよりもこちらを選ぶという二者択一の意味で用いられる「逆に」の用例は、次の通りです。
【使用例】
- うちの猫は不細工だけど逆に可愛い
- 臭いのに逆に臭いを嗅ぎたくなるのはなぜだろう。
- ありがとう。逆に気を遣わせてごめんね。
【類語】
- むしろ(寧ろ)
- かえって(却って)
- (口語として)ていうか(ってゆーか)
接続詞の「逆に」とは
「逆に」の使い方・類語①逆接の接続詞の「逆に」
逆接の接続詞として「逆に」という言葉を用いるのは俗語的な用法です。
【使用例】
- 逆にそれはあまり好きじゃないんだ。
- 遅刻するかと思ったけど、逆に早く着いた。
【類語】
- しかし・だけど
- 実を言うと・実は・それどころか
「逆に」の使い方・類語②接続詞と言えない「逆に」
「逆に」と言いながら、何に対して逆なのか、あるいはまったく逆のことではない場合があります。おもに、若者の間での会話、SNSなどで使われる言葉です。
【使用例:ランチ時の会話】
(A)
ランチどうする?
(B)
逆に寿司がいいな
食べたいものの候補すら決まっていない人たちの間の会話では、「逆に」は、二つのうちの一方を指すという機能を果たしていません。この場合の「逆に」には、とくに意味はないでしょう。
【使用例:宿題についての会話】
(C)
遅くまで宿題してたら寝坊して、慌ててたから宿題のノート忘れたよ。
(D)
逆に俺は持ってきたぞ。
一見、成立しそうですが、何に対して「逆に」なのかが曖昧な表現です。Dが言いたいこととして、「早く寝た」「宿題をやってない」などいくつも考えられます。この場合の「逆に」にも、とくに意味はありません。
【類語】
上の会話例のように、意味を持たず、話のきっかけとして用いるような「逆に」には類語はありません。「えーと」「あのー」のように、話の前になんとなくつけてしまう言葉と同様です。