「暴虐無人」とは
「暴虐無人(ぼうぎゃくぶじん・ぼうぎゃくむじん)」という言葉はありません。このような造語があるとして、意味を考察するなら、「酷い(むごい)行いで他人を苦しめる人でなし」というところでしょうか。
「暴虐無人」の実際に使われてしまった例としては、「暴虐無人ぶりに驚くばかりだ」「暴虐無人な活動」などがありますが、これらは誤用です。正しくは、「傍若無人」または「暴虐非道」。ここでは、「傍若無人」と「暴虐非道」、それぞれについて解説します。
「傍若無人」とは
「傍若無人」の意味
「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」とは、「人前をはばからず、勝手気ままな言動をすること、または、その様子」を表す四字熟語です。
「傍若無人」の使い方
- 彼の傍若無人な態度には腹がたつ。
- 傍若無人に振る舞っていては誰も君のことは認めてくれないよ。
- 彼女の傍若無人ぶりは、周りの人間も持て余し気味だ。
「傍若無人」の由来
「傍若無人」は訓読すると「傍らに人無きが若し(かたわらにひとなきがごとし)」となります。これは、中国の『史記(刺客列伝)』にある、次のような故事に由来します。
- 荊軻:中国戦国時代末期の剣客。燕の太子・丹の命を受けて、秦舞陽(しんぶよう)と共に秦王・政(のちの始皇帝)の暗殺を試みるが失敗し、殺された。
- 高漸離:筑(筝のような楽器)の名手。荊軻の暗殺失敗ののち、筑の腕を買われて始皇帝に召し抱えられるが、演奏中に皇帝を殺害しようとして失敗、誅殺された。
「傍若無人」の類語
【得手勝手(えてかって)】
他人のことは考えず、自分に都合のよいように行動すること、わがまま様子を表す言葉。「得手勝手な振る舞い」「得手勝手を言う」のように用います。
【眼中無人(がんちゅうむじん)】
何物をも恐れぬ様子、おごりたかぶって人を人とも思わぬさまを指します。「眼中無人に行動する」「眼中無人な物言い」のように使用。
【傲岸不遜(ごうがんふそん)】
自分を偉い人間と考えて威張り返り、人を見下すこと、またはその様子のこと。「傲岸不遜な態度」「傲岸不遜に振る舞う」のように使います。
【野放図・野方図(のほうず)】
「野放頭」は当て字。横柄なことや人を人とも思わないずうずうしい態度、または、際限のないことを指す言葉です。「傍若無人」の類語としては前者の意味で、「野放図な言動」「野放図に暮らす」のように使用。
【放辟邪侈(ほうへきじゃし)】
思うまま好き勝手に悪事を働くことを指す言葉です。「放辟邪侈な人」「放辟邪侈ぶりを改める」のように用いられます。
「暴虐非道」とは
「暴虐非道」とは
「暴虐(ぼうぎゃく)」とは、「乱暴で残虐なこと・酷い(むごい)ことをして人を苦しめること」。「非道(ひどう)」とは、「物事の正しい筋道や、人としての道にはずれていること」を表しています。
この二つを合わせた言葉「暴虐非道(ぼうぎゃくひどう)」は、「人の道を外れた残酷で乱暴な行い、または、そのような行いをする人」という意味です。「暴虐無道(ぼうぎゃくむどう)」とも言われます。
なお、「非道」には、このほかに「専門外のこと」や「男色・衆道」という意味もあります。
「暴虐非道」の使い方
- 暴虐非道な弾圧が行われた。
- 暴虐非道に暴れまわり、破壊の限りを尽くした。
- 彼らの暴虐非道ぶりは、街を恐怖に陥れた(おとしいれた)。
「暴虐非道」の類語
【悪逆非道(あくぎゃくひどう)】
「人の道を外した邪悪な行い」という意味で、「悪逆無道(あくぎゃくむどう)」も同義。「悪逆非道な行為」「悪逆非道に振る舞う」のように使います。
【極悪非道(ごくあくひどう)】
「悪逆非道」と同じ意味です。
【残酷非道(ざんこくひどう)】
「むごたらしく、人の道に背いている様子、または、そのような行い」のことです。「残酷非道な行い」「残酷非道に振る舞う」のように使用。
【大逆無道(たいぎゃくむどう・たいぎゃくぶどう)】
「はなはだしく人の道にそむき、道理を無視した行為」を指す言葉。「大逆無道の汚名」「大逆無道な攻撃」のように使います。