「ましてや」とは
「ましてや」の意味
「ましてや」は「なおのこと・さらに」という意味の副詞です。漢字で表記すると「況してや」と書きます。
「ましてや」の成り立ち
「ましてや」は、副詞「まして」+間投助詞「や」から成り立っています。間投助詞の「や」にはいろいろな役割がありますが、ここでの役割は、副詞に付いて意味を強めることです。「またもや」の「や」と同じですね。
つまり、「ましてや」は、「まして」を強調した言葉なのです。「まして」については次項で説明します。
「まして」とは
「まして」は、漢字では「況して」と書きます。「まして」には次のような意味があります。
- 「なおさら」「いうまでもなく」…AとB、二つの事例を並べて、Aの場合でさえこうなのだから、Bの場合はもちろん、の意で使う。
- 「いっそう」「さらに」「もっと」
「ましてや」の使い方
後者の度合いが強いことを表す「ましてや」
「岩を持ち上げる」ことについて、次のAとBの二つの事例があるとしましょう。
- A:「二人掛かりでも持ち上げられない」
- B:「一人でも持ち上げられない」
AよりもBの方が度合いが強いという関係性を表す場合、次のように、「ましてや」をAとBの間に挟んで使います。また、多くの場合、「ましてや」に続くBは否定的な表現を伴います。
【使用例】
- この岩は二人掛かりでも持ち上げられない。ましてや一人でなんて無理だ。
- この岩は二人掛かりでも持ち上げられない。ましてや一人でなんてとんでもない。
- この岩は二人掛かりでも持ち上げられない。ましてや一人でなんて言うまでもない。
この場合、AよりもBの方が不可能の度合いが強いという関係性を表しています。
主観的に度合いを表す「ましてや」
AとBの関係性は、客観的なものだけではありません。
【使用例】
- 彼らが試合に勝った。見ていた私でさえ嬉しかったのだ。ましてや彼らが嬉しくないはずがない。
「嬉しさ」は主観なので本来は比べようもありません。しかし、この文からは、話者は「見ていた私」よりも「彼ら」の方が「嬉しさの度合いが強い」と思っていることが分かります。
「ましてや」の類語
「より一層」「余計」「一段と」
「ましてや」の類語には、「より一層」「余計」「一段と」などが挙げられます。ただし、これらの言葉は、比較する事例を明記しなくても用いることができます。「ましてや」には、この使い方はできません。
【使用例】
- 今年の寒さは、より一層[余計・一段と]厳しい。
「言うまでもなく」
「言うまでもない」は、「ましてや」と一緒に用いることもありますが、単体でも「ましてや」のニュアンスを表すことができます。
【使用例】
- 大人にとってもこの山を登るのは大変だ。子供にとっては言うまでもない。
「いわんや」
「ましてや」を漢字表記する時に用いる「況」という字は、「いわ(んや)」とも読み、「言うまでもなく」「わかりきったこと」という意味があります。
古文の時間に習う「いわんや〜をや」という言い回しですね。「ましてや」と意味は同じですが、おもに漢文の訓読や古文で使われる言葉で、現在ではほとんど用いられません。
「ましてや」の英語表現
"much less""much more"
"much less"は「ましてや〜はもってのほかだ」という場合、"much more"は「ましてや〜は言うまでもない」という場合に使います。
【使用例】
- "She can't speak English, much less French."(訳:彼女は英語は話せない。ましてやフランス語なんてもってのほかだ。→英語もフランス語も話せない)
- "She can speak French, much more English."(訳:彼女はフランス語を話せる。ましてや英語は言うまでもない。→英語もフランス語も話せる)
"let alone"
"let alone"は「~はもちろん」「~は言うまでもなく」「まして~なんて」という イディオムです。
【使用例】
- "He barely knows English let alone Flench."(訳:彼は英語すらあまり知らないのに、ましてやフランス語なんてなおさらだ。)