「翻って」とは
「翻って(ひるがえって)」は、「反対に」「これとは別に」という意味の副詞です。「翻て」と表記されることもあります。
また、「翻って」は、動詞の「翻る(ひるがえる)」の活用のひとつでもあります。例えば「青空に鯉のぼりが翻っていた」のように「翻って」という語が使われます。
それぞれの「翻って」について、追って詳しくご説明します。
副詞の「翻って」
「翻って」の意味
副詞として用いられる「翻って・翻て」は、今までとは違った立場や方面からみる様子、つまり、「反対に・これとは別に」という意味です。
「翻って」の使い方
「翻って」は、ある視点からの意見と、別の視点からの意見を述べた文、これら2つの文をつなぐ役割を果たします。
ー寺田寅彦『学位について』ー
また、「翻って考えると」や「翻って見ると(観ると・みると)」という言い回しもよく用いられます。
ー夏目漱石『吾輩は猫である』ー
翻って第三の平凡人物即ち「端役の人物」を観ますと、ここに面白い現象が認められます。
ー幸田露伴『馬琴の小説とその当時の実社会』ー
「翻って」の類語
「翻って」の類語には、「他方」「一方」「片や(かたや)」などが挙げられます。上に提示した例文も、これらの類語で言い換える事ができることから、同義と考えて良いでしょう。
動詞の「翻って」
「翻って」は、動詞の「翻る」の連用形です。「翻る」には三つの意味があります。意味ごとに、「翻って」の使い方や類語をご説明します。
「翻る」①ひらりと裏返る
「翻る」の意味のひとつは「ひらりと裏返る・さっと裏返しになる」です。この意味で用いられる「翻る」は、裏返る・反転・反る(かえる)・ひっくり返るなどで言い換えることができます。
【使用例】
- 突風が吹いて足元の木の葉が翻って飛んで行った。
「翻る」②ひらめく
「翻る」には「風になびいて揺れ動く・ひらめく」という意味もあります。なびく・たなびく・巻き上げる・揺れ動く・ひらひらする・ばたばたするなどの言葉が、この意味で用いられる「翻る」の類語です。
【使用例】
- 爽やかな風に吹かれて校旗が青空に翻っている。
「翻る」③急に変わる
「翻る」には「態度や言動が急に変わる」という意味もあります。①から派生した意味です。この意味で用いられる「翻る」は、急変する・急転する・急転直下・一転する・転じる・変じる・覆る(くつがえる)などで言い換えられます。
【使用例】
- 今のところやや優勢だが油断は禁物だ。相手の答弁次第で結果が翻ってしまうこともある。
「翻」という漢字
「翻」の成り立ち
「翻」という漢字は、「番」+「羽」で成り立っています。「番」は田畑に種を蒔くこと、「羽」は鳥の両翼の象形です。「翻」は、鳥が羽をのびやかに広げてひるがえる(体を踊らせるように飛ぶ)ことを表しています。
「翻」の読み方と意味
「翻」の読み方は、音読みでは「ハン・ホン」、訓読みでは「ひるがえ(す)・ひるがえ(る)」です。また「翻」には次のような意味があります。
- ひるがえす。ひるがえる。羽をひるがえして飛ぶ。
- ひっくり返す。反対にする。裏返す。
- ある国のことばを別の国の言葉に直す。