「 汎用」の意味
「汎用(はんよう)」とは、「いろいろの方面に広く用いること」を指す名詞です。「汎」という漢字は、「さんずい(流れる水)」+「凡(風を受ける帆)」から構成されており、「風のように浮かぶ・漂う・広く行き渡る」などの意味があります。
例えば、「汎用リモコン」は特定のメーカーや特定機種に限らず、設定次第でさまざまなメーカーや機種に対して使うことができるリモコンのことです。
また、「汎用インク」ならば、プリンターのメーカーなどが販売する純正インク以外の、他社が提供する互換製品のことを指します。
「汎用」の使い方
「汎用」は、「部品を汎用する」のように動詞化して用いることがありますが、「汎用性」というかたちで使うことが多い言葉です。
「汎用性」とは
「汎用性」とは、「いろいろの方面に広く用いることができる性質」という意味で、「汎用性がある・ない」または「汎用性が高い・低い」のように使われます。
- 汎用性がある:多くの用途で使えること。
- 汎用性がない:多くの用途では使えないこと。限定された用途でしか使えないこと。
- 汎用性が高い:より多くの用途で使えること。多目的に使えること。
- 汎用性が低い:あまり多くの用途では使えないこと。
主に、物に対して用いられますが、人に対しても使われることがあります。人に使う場合は、汎用性が高い=なんでもできる・広く活躍できる、汎用性が低い=ごく限られたことしかできない・守備範囲が狭い、のようなニュアンスです。
「汎用性」を使った例文
- この機械は汎用性はあるが、使用方法が複雑だ。
- 営業部は、汎用性がない商品は売れないと分析している。
- 新開発の素材は従来のものに比べて汎用性が高い。
- 小規模の会社では、汎用性の低い人材は融通が利かず、扱いにくい。
IT用語「汎用」
汎用機
IT分野では、「汎用機」は、企業などの大規模の業務に利用する大型コンピュータのことです。スマートフォンなどの小型の情報機器やパソコンなども多くの用途があるのに汎用機と言わないのはなぜかとお思いでしょうか?
大型コンピュータを指して汎用機と呼ぶのは、1950年代にコンピュータが実用化されて以降、しばらくの間は特定の用途にしか使えないハードウェア構成が一般的だった時代の名残と言われています。
汎用機はパソコンが台頭する以前に主流だったコンピュータですが、今でも現役で、汎用大型機・汎用コンピュータ・メインフレーム(mainframe)と呼ばれることもあります。
汎用系
「汎用系」は、汎用機に関する技術分野、特に、汎用機で動作させる業務システムを指す言葉です。COBOLというプログラミング言語で作られている昔の業務システムですが、大規模なシステムは新しいシステムに置き換えるのが容易でないため、今でも現役で稼働している物があります。
「汎用」の類語
「多目的」
「多目的」は、「多目的ホール」「多目的用のコンピュータ」のように、利用するためのいろいろな目的をもっているさまを表すので、「汎用」の代わりに使うことができます。これ以外にも「多機能」「多用途」でも「汎用」を言い換えることができるでしょう。
「万能」
「万能(ばんのう)」とは 、「万能薬」や「万能ナイフ」のようにすべての物事に効能があること・万事に役立つことという意味や、「万能選手」のようにいろいろな物事にたくみなことという意味があります。
「汎用=用途が多い」、「万能=すべてに役立つ」という意味ですから、汎用よりも万能の方が用途が多いというニュアンスです。汎用性が高いという言葉はあっても、万能性が高いとは言わないことからもお分かりでしょう。
もし、「汎用リモコン」と「万能リモコン」があったとしたら、汎用リモコンはいろいろな物を動かせるのに対し、万能リモコンはあらゆる物を動かせることになります。
しかし、実際にはこの世のすべてのものに有効な製品は無いので、このような場合は「汎用」と「万能」は、実質的に同じ意味と捉えていいでしょう。
「マルチ」
「マルチ」は英語の「multi」に由来するカタカナ語で、数量や種類の多いさま・いくつかの要素が合わさっているさまを表す言葉です。「マルチ機能」「マルチな使い方」のように「汎用」と同じように使うことができますが、どちらかといえば、上でご説明した「万能」に近い言葉かもしれません。
「汎用」と「繁用」
「繁用」とは
汎用」と同じ読み方の言葉に「繁用」があります。「繁用」は、「御繁用のところ恐れ入ります」のように、用事が多くて忙しいことを指しますが、しばしば用いられていることという意味もあります。
「汎用」と「繁用」の違い
「汎用」は用途の広さを指し、「繁用」は使用頻度を指す言葉ですから、用途に関する同じ読み方の言葉でも、別のカテゴリの言葉といえます。