顰めるとは?顰めるの意味
苦痛や不快感によって眉のあたりにしわを寄せる表情を表す言葉
顰めるの説明
「顰める」には「しかめる」と「ひそめる」の二通りの読み方があります。一般的には「顔を顰める(しかめる)」と「眉を顰める(ひそめる)」のように使い分けられていますが、文化庁の調査では「眉をしかめる」と誤用する人も半数ほどいるようです。覚え方のコツとしては「しかめっつら」という表現があるように、顔全体の表情を指す場合は「しかめる」、眉に焦点を当てる場合は「ひそめる」と考えると良いでしょう。この言葉から派生した「顰蹙を買う」という表現も、相手を不快にさせる行動をした時に使われる慣用句として覚えておくと便利です。
表情一つで伝わる感情の豊かさを感じさせる、日本語らしい繊細な表現ですね。
顰めるの由来・語源
「顰める」の語源は古く、中国の故事に由来します。『荘子』には「西施の顰みに效う」という故事があり、古代中国の美女・西施が心臓病で苦しんで眉をひそめる様子がかえって美しく見えたことから、東施という女性がその真似をしたら却って醜く見えたという逸話があります。これが転じて、苦痛や不快感で眉をひそめる表情を「顰める」と表現するようになりました。日本語では平安時代頃から使われ始め、和歌や物語の中で繊細な感情表現として用いられてきました。
一つの表情がこれほど豊かな言葉で表現されるとは、日本語の表現力の深さを感じますね。
顰めるの豆知識
面白いことに、「顰める」という漢字は「頻」と「卑」の組み合わせから成り立っています。「頻」は「しきりに」という意味で、眉を何度も動かす様子を表し、「卑」は「ひくい・かがむ」という意味で、顔をしかめる動作を表現しています。また、現代では「眉をひそめる」が正しい表現ですが、実は江戸時代までは「眉をしかめる」という表現も一般的でした。文化庁の調査では、現代でも約半数の人が「眉をしかめる」を誤用しているというデータがあり、言語の変化の過程を窺い知ることができます。
顰めるのエピソード・逸話
作家の夏目漱石は『吾輩は猫である』の中で「主人は眉をひそめて黙っている」という表現を用いています。漱石は繊細な心理描写に優れており、人物の微妙な表情の変化を「顰める」という言葉で的確に表現しました。また、女優の原節子さんは映画『晩春』の中で、父親の再婚話を聞いた時の複雑な心情を「顰める」ような表情で見事に演じ、その演技が高く評価されました。このように、日本の文学作品や映画の中で「顰める」表情は、言葉にできない内心の葛藤や苦悩を表現する重要な手法として用いられてきたのです。
顰めるの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「顰める」は日本語のオノマトペ(擬態語)と深い関わりがあります。「しかめる」は「シカメッツラ」などの表現から、「ひそめる」は「ヒソヒソ」などの小声を表す語と関連している可能性があります。また、この言葉は身体言語と直結しており、非言語コミュニケーションの一部として発達してきました。興味深いのは、同じ漢字でありながら文脈によって読み方が変わる点で、これは日本語の漢字の読みの複雑さを象徴しています。さらに、「顰める」は使役形で「顰めさせる」などと変化し、他者の感情に影響を与える表現としても機能するなど、文法面でも多様な使い方が可能です。
顰めるの例文
- 1 上司の理不尽な指示に思わず顔を顰めてしまい、隣の同僚も同じ表情でうなずいていた。
- 2 子供の答案用紙に書かれたとんでもない解答を見て、親として複雑な気持ちで眉を顰めた。
- 3 満員電車で隣の人の大きな音楽の音漏れに、周囲のみんなが一斉に眉を顰めるのが見えた。
- 4 高いお金を出して食べた料理のまずさに、夫婦で顔を顰め合いながら無言で食べ続けた。
- 5 会議で明らかに的外れな発言をした同僚に、参加者全員が一瞬で眉を顰める空気になった。
「顰める」の使い分けと注意点
「顰める」を使う際には、対象によって読み方を適切に使い分けることが重要です。日常会話では混同されがちですが、正しい使い方をマスターすると、より洗練された日本語表現が可能になります。
- 「顔を顰める(しかめる)」:顔全体の表情が対象の場合
- 「眉を顰める(ひそめる)」:眉の動きに焦点がある場合
- 「しかめっ面」:固定化された表情を指す場合(「ひそめっ面」とは言わない)
特にビジネスシーンや公式な場では、誤用を避けるためにも正しい表現を使うように心がけましょう。
関連用語と派生表現
「顰める」から派生した表現や関連用語を知ることで、日本語の豊かな表現力をより深く理解できます。
- 「顰蹙(ひんしゅく)」:他人から嫌われるような行為をすること
- 「一顰一笑(いっぴんいっしょう)」:ちょっとした表情の変化のこと
- 「顰みに效う(ひそみにならう)」:西施の故事に由来する慣用句
眉をひそめるような真似事は、かえって醜さを増すだけだ
— 荘子
現代における使用実態
現代では「眉をしかめる」という表現も広く浸透していますが、文化的には「眉をひそめる」が正統とされています。このずれは言語の自然な変化の一例と言えるでしょう。
| 表現 | 使用率 | 主な使用層 |
|---|---|---|
| 眉をひそめる | 約50% | 年配層・知識層 |
| 眉をしかめる | 約50% | 若年層・一般層 |
| 顔をしかめる | 約90% | 全年齢層 |
SNSやインターネット上の書き込みでは、「眉しか」などの略語も見られるようになり、言語の簡略化の傾向も窺えます。
よくある質問(FAQ)
「顔を顰める」と「眉を顰める」、どちらの読み方が正しいですか?
どちらも正しい使い方です。「顔を顰める」は「しかめる」、「眉を顰める」は「ひそめる」と読みます。対象が顔全体の場合は「しかめる」、眉に焦点がある場合は「ひそめる」を使い分けるのが一般的です。
「眉をしかめる」は間違いですか?
文化的には「眉をひそめる」が正しい表現とされていますが、実際には「眉をしかめる」も広く使われています。文化庁の調査では両者の使用率がほぼ同程度という結果も出ており、完全な誤用とは言えませんが、正式な場では「眉をひそめる」を使うのが無難です。
「顰める」と「しかめる」の違いは何ですか?
「顰める」は漢字表記で、より格式ばった印象を与えます。一方、「しかめる」はひらがな表記で、日常会話でよく使われるカジュアルな表現です。意味は同じですが、文章の雰囲気によって使い分けると良いでしょう。
「顰める」を使った慣用句はありますか?
「顰蹙を買う」という慣用句があります。これは「他人から嫌われたり、軽蔑されるような行動を取ること」を意味します。例えば「彼の無礼な態度は周囲の顰蹙を買った」のように使います。
英語で「顰める」はどう表現しますか?
「frown」が最も近い表現です。「顔を顰める」は「frown」、「眉を顰める」は「knit one's brows」や「furrow one's brow」と表現します。例えば「She frowned at the bad news」のように使います。