「拙い」の意味
「拙い」というと、あまり他人から言われたくない言葉かもしれません。しかし、自分自身に対して使うケースもありますので、詳しく見ていきましょう。
主に三つの意味で使われる言葉です。
1.能力が足りないこと。劣っている状態。
2.運が悪い。
3.技術などが巧み・上手ではない。下手。
いずれも、ネガティブでマイナスのイメージを持つ言葉です。また、漢字の読みは2種類あって「つたない」と、もう一つは「まずい」です。後者だとよりストレートに「よくない」印象を与えます。一般的に多く使われるのは1.の「能力が足りないこと」「劣っている状態」です。
「拙い」の「拙」という漢字
手偏(てへん)に「出」がついて「拙」(セツ)という漢字になります。「出」=でこぼこやちぐはぐな感じを表しています。これに手偏がつき、手の動きがちぐはぐで巧みではない様子を表しています。ですから、漢字の意味からすると、技術的に足りない様子を表現したものと言えます。そこから「つたなし」という形容詞に当てられたようです。
「拙い」の由来
それでは、成り立ちを見ていきましょう。もともと「つたなし」だった言葉の口語体が「つたない」です。「つてを頼る」といった時の「つて」とは、長く先まで言い伝えるという意味があります。この「つて」に否定の「なし」が下につき「つて・なし」から「つた・なし」、「つたない」となりました。ですから本来「伝えるべきこともない」の意から、変化してきた言葉です。
「拙い」の使用例
では、いくつか例をあげて見ていきましょう。
1.まだまだ職人としては拙いですが、どうかご容赦ください
2.拙さが残ってはいるものの、一生懸命さが伝わる絵だ
3.拙い手紙でごめんね
他人に対して使用する場合は、失礼な言い方にならないよう気を付けなくていけませんが、自分自身に対して使うと、へりくだって相手を持ち上げる表現にもなり、気配りのある表現が可能です。
また、「運が悪い」というの意味では「球運拙く敗れ、アルプススタンドはため息に包まれた」というような使い方ができます。こちらの使い方であれば、相手を中傷するようなニュアンスは消えます。ただ、この意味で使われるケースはそれほど多くはなく、どちらかというと古い使い方かもしれません。
「拙い」を英語では「clumsy」
アメリカの伝説的なソウルシンガーであるアレサ・フランクリンさんが亡くなったことに関して、トランプ大統領がTwitter上である発言をし、物議をかもしました。この時、メディアはトランプ大統領の投稿に対し「clumsyな哀悼の言葉」という見出しをつけました。なかなか辛辣ですね。この場合は「能力が足りない」というよりも「技術などが巧み・上手ではない。下手」の意味に近いでしょう。
その他、スポーツ関連メディアの世界でも意外に多く登場する言葉です。作戦や戦術に対して「clumsy」と評価する記事を見かけます。それを受けて、日本のサッカー関係の記事でも「〇〇の拙いパスによって、ピンチを招いた」といったように使われています。これらも「技術などが巧み・上手ではない。下手」の意味ですね。
「拙い」の類義語
劣っている状態を表す言葉となります。例えば、「青臭い」「幼い」「乳臭い」「足りない」「弱い」「御目出度い(おめでたい)」「お寒い」などです。