「喧々諤々」の意味
みなさんは喧々諤々という四字熟語をご存知ですか?読み方は「けんけんがくがく」で、「さまざまな人が色々な意見を出し、収拾がつかないほど騒がしいさま」という意味の言葉です。
「喧」はうるさい、または盛んな様を表す漢字です。喧嘩や喧騒といった騒がしいイメージを持つ語句に使われていたり、訓読みだと喧しいと書いて「やかましい」「かまびすしい」と読みますね。
「諤」はあまり見慣れない漢字かと思いますが、「はっきりと意見する」といった意味があります。「諤々」は「権勢を恐れず自身が正しいと信じる意見を主張する様」を意味する熟語なのです。
「喧々諤々」の使い方
喧々諤々は議論の場などの状況を示す言葉です。例えば「他部署の人間も多数参加したため、会議の場は喧々諤々となった」「喧々諤々たる議論に、いささか辟易してきた」といった使い方ができます。
集団での議論に使用されるべき四字熟語なので、一対一の話し合いなどには使用できないことに留意しましょう。
「喧々諤々」の成り立ち
この四字熟語は、もともと誤用から生まれたものでした。「喧々囂々(けんけんごうごう)」と「侃々諤々(かんかんがくがく)」という2つの四字熟語が混同され、「喧々諤々」と誤って使用されたのです。
しかし誤用があまりに広く浸透したため、今では広辞苑にも「喧々囂々と侃々諤々とが混交して出来た語」として「喧々諤々」が掲載されています。このように、誤用が市民権を得て辞書に載るケースは実は少なくありません。現在も、誤った意味で使用されている言葉は枚挙に暇がないですよね。
例えば「情けは人の為ならず」は本来「他者に優しくするのは自分の為でもある」という意味の言葉ですが、「同情をかけるのはその人の為にならない」という意味で使用されることがあります。また「おもむろ」は「ゆっくりとした動作」のことですが、なぜか「突然・唐突に」といった意味として広まっています。
言葉は伝わればいいというものでもないので、本来の意味が失われてしまうのは避けたいところですが、長い年月の中で変遷するのが常であることも事実です。言葉が変遷しないのなら、私たちは今でも「超可愛い」を「いとをかし」と言っていたかもしれません。前述のような誤用も、そのうち辞書に載る日が来るのかもしれませんね。
「喧々囂々」とは
では、喧々諤々の元となった四字熟語のひとつ、「喧々囂々」とはどんな言葉なのでしょう。「囂」には「喧」と同様に「うるさい」といった意味があります。「喧々囂々」は「たくさんの人々が口々にやかましく騒ぎ立てる様」を表す言葉なのです。
「喧々諤々」との違いは、必ずしもそれが議論とは限らない点です。むしろ「騒ぎ立てる」といったニュアンスが強調されているので、論争というよりは喧騒の意味合いが強いでしょう。
国会の中継でよく、一人がヤジを飛ばすと何人かが口々にヤジを飛ばし始める光景が見られますが、あれが「うるさい!」というレベルになったらまさに喧々囂々です。
「侃々諤々」とは
もう一方の四字熟語、「侃々諤々」についても知っておきましょう。侃々諤々は「剛直で意見を曲げないこと」また「遠慮なく議論すること」です。
「侃」には「正しくひたむき」また「のびのびと楽しむ」といった意味があります。「侃々諤々」も議論に関する四字熟語ですが、「うるさい」というニュアンスはありません。あるテーマに沿って、忌憚(きたん)なく議論を戦わせることが「侃々諤々」なのです。
「喧々諤々」に近い英語
そのものズバリ「喧々諤々」を指す英単語は見つかりませんが、「うるさい」というところでは「noisy」や「clamorous」が適当でしょうか。
また「furor」にも「大騒ぎ」といった意味がありますが、暴動や熱狂などの集団ヒステリーに近いニュアンスです。逆に「お祭り騒ぎ」という意味の「cheerful」には、かなり陽気なニュアンスが含まれます。