「ひいては」の意味は?
「ひいては」とは、「ひいて」に接続助詞の「は」を伴った強調表現です。先に提示した事柄について、「それに引き続いて」「それが原因となって」「それにとどまらず」という意味合いで、話の展開を推し進める際に用いられます。
使い方によって多少ニュアンスが違ってきますが、基本的には「小さなことから大きなこと」「より広範囲」に話を広げる。「ひいては」を挟んで前者と後者にはそうした因果関係が作られるのです。
わかりやすいように例を挙げてみましょう。
「ひいては」の使い方は?
- 東京でプロジェクトを成功させ、ひいては全国展開を目指したい
この場合は「それに引き続いて」という意味合いで、対象範囲が広がっています。
- 一人が勝手な行動ばかり取っていると、ひいてはチーム全体にも悪影響が出てくる
「一人」という小さなものが「チーム全体」という大きなものに影響を及ぼすという意味で、前者と後者に「原因と結果」の因果関係が出来上がっています。
- 不規則な生活は毎日の生産性を低下させるし、ひいては寿命を縮めることにもりかねない
こちらの例では、「ひいては」に「それにとどまらず」というニュアンスが持たされているのがおわかりになると思います。
上記の通り、前者があって後者があり、後者のほうが対象範囲が拡大されている。このように、関連した物事に大小関係がある場合に「ひいては」でつなぐと、上手い使い方になるでしょう。
「ひいては」を漢字で書くと
「ひいては」の「ひいて」はもともと「引きて」の音変化ですが、現在は漢字で表記すると「延いて」となります。この「延」という字からも、原因の延長線上に結果が来ることや、元の事柄を敷衍(ふえん)して、より広範囲に言及するさまがイメージ出来るのではないでしょうか。
「延いては」と漢字で書くケースも多々ありますので、好みや状況に合わせて使い分けるとよいでしょう。
「ひいては」の類義語
「ひいては」の類義語を以下にご紹介します。日ごろ使われる機会の少ない言葉もありますので、それぞれについて調べてみるのも面白いかもしれません。
因果関係を示す類義語
因果関係を示す言葉には「それにより」「結果的に」「したがって」などがあります。「ひいては」と同じく直前の内容からの繋がりを表します。
物事の拡大を示す類義語
先に述べたことがより大きな事態に発展するさまを表す言葉には「それどころか」「あまつさえ」「のみならず」などがあります。
このなかで「あまつさえ」は、悪い事態が拡大することを示すケースがほとんどです。
「ひいて」と「しいて」の違い
「ひいて」に似た言葉に「しいて」があり、混同している方も多いようですが、両者はまったく別の意味を持ちます。
「しいて」は漢字で書くと「強いて」で、「趣味はないけど、強いて言うなら読書かな」のように、「あえて」「むりやり」という意味で使われる言葉です。動詞の「強いる」となると、「残業を強いる」などのように「強制する」という意味になります。
ご注意願いたいのは、「しいては」という用法は存在しないということです。「ひいて」には強調の「ひいては」がありますが、「しいて」はそのような使い方はできません。発音が酷似しているためたいへん間違いやすいですから、改めて違いを理解しておいたほうがよいでしょう。
「ひいては」を英語で書くと?
単純に因果関係を示したり、話題を先に進めるための英単語は、「so」や「and」などたくさんありますが、「ひいては」に含まれる「そこからさらに」「それを押し進めていくと」というニュアンスを上手く表しているのは次のような言葉です。
- therefore(それゆえに・したがって)
- furthermore(その上・さらに)
- eventually(ゆくゆくは・結局)
「ひいては」同様、これらの単語も英語の堅い文章でよく使われる言葉のようです。
難しい言葉を使う
「ひいては」は少々堅苦しさを伴う表現ですから、話し言葉よりも文章で見かけることのほうが多いかもしれません。とはいえ、もちろん会話にも使えますし、ビジネスシーンなどで適確に用いると、ひと味違った印象が生まれるかもしれません。
もしも「ひいては」という言葉に馴染みがなく、使い方に自信がなかったら、今回ご紹介した例文や類義語をセットで学ぶと、覚えやすくなったり、実際に用いる場面がイメージ出来たりすると思います。