「痛い」とは?
「痛い」の意味は、大きく分けると次の2つです。
- 痛みを感じるさま
- 無様で痛々しいさま
1は、「お腹が痛い」のように体に苦痛を感じること、あるいは、「失敗続きで頭が痛い」のように精神的に苦痛を感じること、「この出費は痛い」のように手ひどい打撃や被害を受けたと感じることを指します。
他方、2は人の様子や言動について言うものです。「彼のギャグは痛い」のように使って、無様で痛々しいさま、さも得意そうな言動がひどく場違いで見るに耐えないさまを表します。
「痛い」の語源
1.痛みを感じるさま
「痛い」の語源は「甚(いた)」にあります。「甚」とは「程度のはなはだしいさま。非常に。たいへん」という形容詞で、「痛い」はそこから派生した言葉だと言われています。
元々は肉体的・精神的に受けた感覚を広く指した言葉であったそうで、「たいへん立派である」というようにポジティブな意味でも使われていました。現在ではほとんどその様に使われることはありません。
2.無様で痛々しいさま
人の言動などについて使う「痛い」は、「気の毒で見ていられないほど、かわいそうである」といった意味を持つ「痛々しい」が派生した言葉であると言われています。
アニメなどのキャラクターを車体に描いたり、キャラクターのステッカーを貼った自動車を「痛車」(いたしゃ)と呼ぶことがありますね。これは「痛々しい車」の略語です。
「痛い」の使い方
1.痛みを感じるさま
- 机の脚にぶつけた足の小指が痛い。
- 捨て犬や捨て猫が処分されると聞いて胸が痛い。
- うちの電化製品が一斉に寿命を迎えて、懐が痛い。
「頭が痛い」は、風邪を引いたときなどに頭痛がすることを言う場合と、困難に直面して悩んだり心配したりすることを例える場合があります。
同様に、「胸が痛い」は心配事などで胸が苦しい、「耳が痛い」は相手の言うことが弱いところをついていて聞いているのがつらいことの比喩としても用いられます。
また、手ひどい打撃や被害を受けたと感じることを指す「痛い」は、「懐が痛い」「痛い目にあう」などの慣用句としてもよく用いられます。
2.無様で痛々しいさま
- 試合の大事な場面でミスしてしまったのが痛かった。
- 妙齢の女性達が大声でおしゃべりに興じているのは痛い。
「痛い」の英語表現
「痛い」を表す英語表現には"hurt"、"ache"、"sting"、"throb"などがあり、痛みの程度や具合によって使い分けます。
- "hurt":体の一部分が痛む。精神的に苦しい。被害を被る。
- "ache":長く鈍く痛む。("stomachache"…腹痛/"headache"…頭痛)
- "sting":刺すように痛む。
- "throb":ずきずきと痛む。
- "burning":喉が焼けるようにヒリヒリと痛む。
「痛い」を用いた慣用句
「痛い所を衝く」
「痛い所を衝(つ)く」とは「弱い箇所を指摘して攻めたてること」です。相手の弱い所や、指摘されると困るような部分を指摘することを言います。なお、「痛い所をつつく」というのは間違いです。
【例文】父親は母親に痛い所を衝かれて、すっかり黙り込んでしまった。
「痛くも痒くもない」
「痛くも痒くもない」とは「少しも苦痛を感じない。まったく影響がない。痛痒を感じない」という意味です。どうされようとなんとも思わないようなことを表します。「指の切り傷など痛くも痒くもない」というように肉体的な痛みについて使うのは間違いです。
似た意味のことわざには、「屁の河童」(へのかっぱ)や「蛙の面に水」(かえるのつらにみず)などがあります。
【例文】彼に何を言われようとやましいことは一つもないので痛くも痒くもない。
「痛くもない腹を探られる」
「痛くもない腹を探られる」とは「悪いことは何もしていないのに疑われること」です。「痛くない腹を探られる」、「痛まぬ腹を探られる」とも言います。
これらの言い回しは、腹が痛いわけでもないのに痛む箇所はないかと調べ回されることに由来しています。なお、「痛い所を衝かれる」と混同して、弱点を攻められるという意味で使うのは誤用です。
【例文】嫉妬深い妻に毎日痛くもない腹を探られうんざりしている。