「より」とは
「より」は、漢字や品詞によって意味や用法が変わります。詳しい意味は後述するとして、まずはその分類を確認しておきましょう。
- 寄り
- 選り
- 縒り(撚り)
- (副詞)より
- (助詞)より
よりの意味:寄り
「寄り」と表記する「より」は、以下のような意味を持ちます。
- 寄ること、集まること、その具合
- ~に近い方
またこれ以外に、「相撲で四つに組んで相手を土俵際に押すこと」「カメラを被写体に近づけること」も「寄り」といいます。
【例文】
- 今日は人の寄りが悪い
- そちらではなく、海寄りの家の方です
- すこし女性寄りの意見だね
よりの意味:選り
「選り」は「選択すること、よいものや好きなものを選ぶこと」を指します。選びに選び抜くことを意味する「選りに選る」や、「選り取り見取り」「粒選り」のように用いられます。
【例文】
- 選りに選ってプレゼントがこれか
- 今日は新鮮な魚が選り取り見取りだ
- 粒選りの品がお目見えした
よりの意味:縒り(撚り)
「縒り」あるいは「撚り」と書く「より」は、「よること、よじること、よったもの」を意味します。一度別れた男女が再び一緒になる「よりを戻す」の「より」もこれです。
また「紙縒り(こより)」は、細長く切った和紙をよって紐状にしたものです。現代ではティッシュペーパーで作って、寝ている人の鼻をこちょこちょする際に使用したりしますが、元は神に捧げる神聖なものだったようです。ちなみに武士や力士が髪を結うのに使う紙縒りは「元結(もとゆい)」といいます。
よりの意味:(副詞)より
副詞の「より」は、「もっと、いっそう」という意味で使用されます。
【例文】
- よりよい社会を築く
- より一層の努力をする
よりの意味:(助詞)より
助詞の「より」には、以下の通りたくさんの意味や使い方があります。
- 動作の行なわれる地点、経由地
- 動作の起点の事物や人、時
- 動作の手段、方法
- 比較の基準
- 範囲の限定
- 場面の転換
- ただちに、すぐに
このうち、3と6と7の「より」は現在はほとんど使用されません。
(助詞)よりの例文
【1.動作の行われる地点、経由地】
- 海津城より西に進路を取り妻女山を目指す
- 少し開いた窓の隙間より爽やかな風が吹き込んでくる
【2.動作の起点の事物や人、時】
- これより会議を始める
- 校長先生よりお話があります
【3.動作の手段、方法】
- つぎねふ山背路(やましろじ)を他夫(ひとづま)の馬より行くに己夫(おのづま)し歩(かち)より行けば/『万葉集』
- ある時思い立ちて、ただひとり、徒歩(かち)より詣でけり。/『徒然草』
【4.比較の基準】
- 小さいのより大きいのがいい
- 君より僕の方が偉い
- 落第になるよりはいい
【5.範囲の限定】
- 真実を知るよりほかない
- もはや祈るよりない
- 怒られるより仕方ない
【6.場面の転換】
- 命婦かしこにまかでつきて門引き入るるより、けはいあわれなり/『源氏物語』
【7.ただちに、すぐに】
- また、時の間の煙ともなりなんとぞ、うち見るより思わるる。/『徒然草』
- 御前を罷出(まかりい)でらるるよりして流るる涙はつきせぬに/『天草本平家物語』
「より」と「から」
「より(助詞)」の類語に「から」があります。「より」も「から」もほとんど同じ意味を持っていますが、「から」には比較の意味合いがありません。「リンゴよりミカンが好き」とは言いますが、「リンゴからミカンが好き」とは言いませんよね。
また、多義語ゆえに「より」は誤解を生んでしまう場合があります。たとえば「A君より好きな人を教えてと言われた」という文章には、以下の2通りの解釈があります。
- A君よりも好きな人を教えてと言われた(比較)
- A君に好きな人を教えてと言われた(起点)
このような食い違いを防ぐために、現在「より」は比較を、「から」は起点を表す際に使用するのがよいとされています。
公用文では明確に『時および場所の起点を示すには「から」を用いて、「より」は用いない。「より」は比較を示す場合にだけ用いる』と定められています。