「依怙」とは
「依怙」は、「いこ」もしくは「えこ」と読み、古くは、仏教の経典によく用いられていた言葉です。人名(苗字)に使われる場合には、「えご」と読むこともあります。
「依」とは
「依」という文字は、人を表す「亻(にんべん)」に衣服を表現している「衣」が合わさって、人に衣類がまとわりついている様子が表現されており、「たよる。よりそう。」という意味を持っています。
「怙」とは
「怙」の文字は「心」という文字が変形して偏になった「忄(りっしんべん)」と、固まるという意味の「古」が一つになった漢字です。ある人物への期待で心が固まってしまっているところから、「たよる」という意味で使われるようになりました。
「依怙」の意味
「依怙」には大きく3つの意味があります。
- 一方だけの肩を持つこと。不公平。えこひいき。
由良という人のそこが堅いところで、いくら可愛い弟子でも、いくらその人間が仕出来しでかしても、だからといってそれだけのまだ貫禄もないものに決してそんな依怙の沙汰はしなかった。
『春泥』久保田万太郎 - 頼りにすること。頼りにするもの。
然るに発露刀一たび彼の心機を断截するや、彼は自ら依怙するところを喪ひたり、~
『心機妙変を論ず』北村透谷 - 自分だけの利益のこと。私利。
庁の下部の習、加様の事に付てこそ、自らの依怙も候へ。
『平家物語』信濃前司行長(しなののぜんじ ゆきなが)
※『平家物語』の作者は信濃前司行長が最有力候補ですが、他にも諸説あります。
「依怙」を「えこ」と読む場合は上記【1】【3】の「えこひいき。不公平。」という意味で、「いこ」と読む場合は【2】の「たよる」という意味で用いられます。
「依怙」の使い方
私たちが「依怙」という言葉を日常で使うシチュエーションは、「依怙贔屓(えこひいき)」という四字熟語や、「依怙の沙汰」という言い回しで用いる場合がほとんどです。その他では、つまらないことに意地を張ることという意味の「意固地」を「依怙地」と書くこともできますが、あまり一般的な用法ではありません。
「依怙贔屓」の意味
「依怙贔屓」とは、特定の人物や好きな方にだけ肩入れすることや、不公平であることを意味する四字熟語です。もともと、「依怙」だけで「依怙贔屓」と同じ意味で使わうことができますが、そこに「引き立てる。目をかける。」という意味の「贔屓」が加わることによって、より一層不公平感が強調される言葉となりました。
「依怙」の例文
- 先生が彼女ばかり誉めるのは「依怙の沙汰」でもなんでもなくて、ただ単に彼女の才能が突出して優秀だからだ。
- 子どもの頃、長男だからと言って他の兄弟よりも両親や祖父母に「依怙贔屓」されて育ったが、今となっては長男として家督を相続する重圧が重くのしかかって苦しい。
- 社長に「依怙贔屓」にしていただくのは大変ありがたいのだが、本音では社長がいない時の女性社員の態度が怖いので止めて欲しい。
「依怙」の類義語
- 偏愛(へんあい)
意味:ある人や物だけを偏って愛すること。 - 愛顧(あいこ)
意味:目をかけ引き立てること。贔屓にすること。(引き立てられる側が使う言葉) - 専断偏頗(せんだんへんぱ)
意味:勝手な解釈で正しいと思い込み、考えが偏っている様子。 - 不正不公
意味:正しくない上に不公平なこと。
「依怙」の対義語
- 一視同仁(いっしどうじん)
意味:全てを平等に慈しみ、愛を注ぐこと。依怙贔屓がないこと。 - 公平無私(こうへいむし)
意味:私的な感情や利害をはさまず、公平に判断すること。