「いみじ」の意味
「いみじ」は「忌む」の形容詞形で、本来は、忌み避けたい感じを表す言葉でした。転じて、極度に甚(はなは)だしいという物事の程度・レベルだけが特化し、善にも悪にも言うようになりました。
平安物語文学で盛んに使われましたが、対して軍記物語ではほとんど使われないのが特徴の一つです。
「いみじ」の使い方
「いみじ」は甚だしいという意味の善悪どちらにも使われたので、真逆の意味を併せ持っています。
- 忌避(きひ)したいもののレベルが甚だしい。たいへん悲しい、つらい、困った、恐ろしい、情けない、など。(源氏物語「あないみじや。いとあやしき様を人や見つらん」)
- 賛美(さんび)したいもののレベルが甚だしい。とてもうれしい、素晴らしい、立派だ、など。(源氏物語「いみじき絵師」)
- 修飾語として。甚だしい、たいそうな、など。(竹取物語「いみじく静かに公に御文奉り給ふ」)
「いみじ」と「いみじくも」
「いみじ」の連用形「いみじく」に助詞「も」がついたのが「いみじくも」で、とても上手に、適切に、という意味です。いみじくも言い得たというように使います。
本来、忌避したい、不吉に感じる、という言葉だった「いみじ」が、だんだんと悪だけでなく善をも表すようになり、最終的に真逆の良いことだけを意味する「いみじくも」が現代に残ったということです。なかなか興味深い言葉の変遷ですよね。
「いみじくも」の英語表現
「いみじくも」を表す英語には、admirably(見事に)、 exquisitely(この上なく)、aptly(適切に)などがあります。
- 極楽鳥とはいみじくも名付けたものだ…"Bird of paradise" is an exquisite name for the bird.
- ○○氏がいみじくも言ったように…As Mr.○○ so aptly stated.