いみじとは?いみじの意味
もともとは「忌むべき」という意味でしたが、転じて「非常に甚だしい」という程度を表すようになり、良いことにも悪いことにも使われるようになった古語
いみじの説明
「いみじ」は平安時代の文学作品で頻繁に使われていた形容詞で、元々は「忌み避けたい」というネガティブな感情を表す言葉でした。しかし時代とともに、単に「程度が甚だしい」という意味に変化し、文脈によって全く逆の意味で使われるようになりました。例えば「いみじき悲しみ」というように悲しみの程度を強調する場合もあれば、「いみじき絵師」のように優れた技術を賞賛する場合にも用いられました。現代では「いみじくも言う」という表現で、「適切に」「見事に」という意味で使われています。
一つの言葉が時代とともにこれほどまでに意味を変化させるのは、日本語の豊かさを感じさせますね。
いみじの由来・語源
「いみじ」の語源は「忌む(いむ)」という動詞に由来しています。もともとは「忌み避けるべきもの」「不吉なもの」を意味する形容詞として使われていました。平安時代の文学作品では、『源氏物語』や『枕草子』などで頻繁に使用され、当初はネガティブな感情や状況を強調する言葉として用いられていました。しかし時代が進むにつれて、単に「程度が甚だしい」という意味に転じ、良いことにも悪いことにも使われるようになりました。この語源の変化は、日本語における感情表現の豊かさを物語っています。
一つの言葉が時代を超えて生き残る過程には、日本語の豊かな表現力が凝縮されていますね。
いみじの豆知識
「いみじ」の面白い点は、一つの言葉が正反対の意味を持つようになったことです。例えば『源氏物語』では「いみじき悲しみ」と悲しみを強調する一方で、「いみじき絵師」と褒め言葉としても使われています。また、現代ではほとんど使われなくなった「いみじ」ですが、その連用形である「いみじくも」という表現が「適切に」「見事に」という意味で生き残っています。特に「いみじくも言う」という表現は、相手の言葉が核心を突いている時に使われることが多く、現代でもビジネスシーンなどで耳にすることがあります。
いみじのエピソード・逸話
作家の司馬遼太郎は、その鋭い洞察力で歴史を描く際に、「いみじくも」という表現を好んで使用していました。特に『坂の上の雲』の中で、登場人物の言葉が時代の本質を捉えている様子を「いみじくも言い当てている」と表現しています。また、評論家の山本七平も、戦後の日本社会を分析する際に「いみじくも指摘されているように」という言い回しを頻繁に用い、複雑な社会現象を簡潔に表現することに長けていました。これらの知識人たちは、古語の持つ深みを現代の文章に活かす達人だったと言えるでしょう。
いみじの言葉の成り立ち
言語学的に見ると、「いみじ」は日本語の形容詞における意味変化の典型例です。もともと具体的なネガティブな意味を持っていた言葉が、時間の経過とともに抽象化され、程度を表す一般的な表現へと変化しました。このような意味の一般化は、言語の経済性の原則に沿った現象です。また、「いみじ」から「いみじくも」への派生は、日本語の活用体系の特徴を示しています。連用形に助詞「も」が付くことで、副詞的に機能するようになり、現代語においてもその用法が維持されているのは興味深い点です。さらに、平安文学で多用された一方、軍記物語ではほとんど使われなかったという使用域の違いも、文体と語彙の関係を考える上で重要な事例となっています。
いみじの例文
- 1 久しぶりに実家に帰ったら、母が作ってくれた料理の味が『いみじく』懐かしくて、思わず涙がこぼれそうになりました
- 2 締切前の徹夜作業で『いみじく』疲れ果て、朝日を見ながら「これが社会人生活か」と実感したあの瞬間
- 3 好きなアーティストのライブで、『いみじく』感動して声が出なくなり、ただただ拍手を送り続けたあの夜
- 4 子どもの初めての運動会で、徒競走で一生懸命走る姿に『いみじく』胸が熱くなり、写真を撮る手が震えたこと
- 5 大切な人との別れ際、言い尽くせない想いが『いみじく』胸に迫り、簡単な「さようなら」さえまともに言えなかったあの日
「いみじ」の使い分けと注意点
「いみじ」を使う際には、文脈によって意味が正反対になるという特徴を理解しておくことが大切です。平安文学では同じ「いみじ」という表現が、前後の文章によって全く異なる感情を表しています。現代で使う場合は、誤解を避けるために「いみじくも」という形で使用するのが安全です。
- 良い意味で使う場合:「いみじき才能」「いみじくも指摘する」
- 悪い意味で使う場合:「いみじき災い」「いみじき失敗」
- 現代での使用:「いみじくも」のみが一般的で、褒め言葉として定着
関連用語と類語
「いみじ」にはいくつかの関連用語や類語があります。平安時代の文学作品では、これらの言葉が状況に応じて使い分けられていました。
| 用語 | 意味 | 特徴 |
|---|---|---|
| いと | とても、非常に | 「いみじ」より日常的な強調表現 |
| はなはだ | 甚だ、非常に | 程度が極めて大きい様子 |
| おろか | 愚かな、ばかげた | ネガティブな意味合いが強い |
| あやし | 怪しい、不思議な | 不審さや奇妙さを表現 |
歴史的な変遷と現代への影響
「いみじ」は平安時代から現代まで、驚くべき変遷を遂げてきました。もともとは「忌むべき」というネガティブな意味しか持たなかった言葉が、時代とともに意味を拡大し、最終的には「いみじくも」という形で現代語に生き残りました。
言葉は生き物のように変化し、時には本来の意味とは逆の意味を持つようになる。『いみじ』の変遷は、日本語の柔軟性と豊かさを示す好例である
— 国語学者 大野晋
このような意味の逆転現象は、日本語だけでなく多くの言語で見られる興味深い言語変化の一例です。現代でも「やばい」が悪い意味から良い意味にも使われるようになったように、言葉は時代とともにその意味を更新し続けています。
よくある質問(FAQ)
「いみじ」と「いみじくも」の違いは何ですか?
「いみじ」は形容詞で「非常に甚だしい」という意味ですが、「いみじくも」はその連用形に助詞「も」が付いた副詞的な表現で、「非常に適切に」「見事に」という意味で使われます。現代では「いみじくも言う」のように、相手の言葉が核心を突いている場合に賞賛する表現としてよく用いられます。
現代でも「いみじ」は日常会話で使えますか?
現代の日常会話で「いみじ」単体を使うことはほとんどありませんが、「いみじくも」という形ではビジネスシーンや文章語として現役で使われています。古語の趣を生かした表現として、あえて使うことで独特の風情を出すことも可能です。
「いみじ」は良い意味と悪い意味、どちらで使われることが多いですか?
平安時代の文学作品では、良い意味でも悪い意味でもほぼ同等に使われていました。しかし現代に残った「いみじくも」は、もっぱら良い意味(適切さや見事さの称賛)で使われるようになり、ポジティブな表現として定着しています。
「いみじ」を使った有名な文学作品はありますか?
『源氏物語』や『枕草子』などの平安文学で頻繁に使われています。特に紫式部は「いみじき悲しみ」と悲しみを強調する一方で、「いみじき絵師」と褒め言葉としても使い分けており、当時の豊かな表現力を感じさせます。
「いみじ」に似た古語はありますか?
「いと」(とても)や「はなはだ」(甚だ)などが似た意味の古語です。特に「いと」は「いみじ」と同じく程度を強調する言葉で、平安文学では併用されることが多かったようです。これらの言葉も現代では日常的には使われませんが、文学的な表現として生き続けています。