「スクイズ」とは?意味や種類を語源を含めてご紹介

高校野球の最終回などの緊迫した場面であと1点が欲しい時にとられる「スクイズ」という作戦があります。プレイしている選手だけでなく観ている方も手に汗にぎる瞬間ですね。ここでは「スクイズ」の意味や種類を語源を含めてご紹介します。

目次

  1. 「スクイズ」とは?
  2. 「スクイズ」の語源
  3. 「スクイズ」と心理戦
  4. 「スクイズ」における攻撃側の心理戦
  5. 「スクイズ」における守備側の心理戦
  6. 「スクイズ」の条件
  7. 「スクイズ」の種類

「スクイズ」とは?

「スクイズ」とは、野球で打者がバントによって三塁走者を本塁に生還させること、またはその戦術のことをいいます。「スクイズバント」とも呼ばれる、無死(0アウト)や一死(1アウト)で三塁に走者がいる時に攻撃側がとる作戦です。

まず三塁走者は投手の投球動作と同時に本塁に向かって走ります。打者はバントをして打球を転がし、守備側がその打球を処理している間に三塁走者が生還(ホームイン)するというプレイです。

メリットは成功すれば打者の打力に関係なく1点がとれるということになりますが、失敗すればダブルプレイで一気に2つのアウトを取られる可能性もあり、一瞬でチャンスをつぶしてしまうというリスクも有します。

野球用語:バント(bunt)

打者がバットをスイングしないで(振り回さないで)、球に軽く当てて転がす打撃方法のことをバントといいます。

球の勢いを殺して転がすことによって、投手や捕手や内野手の球の処理時間を引き延ばします。

バントは、上手に転がせば転がすほど時間を稼げます。それを利用して打者自身が出塁しようとするのが「セーフティーバント」、打者がアウトになる代わりに走者を進めようとするのが「犠牲バント」「送りバント」です。

「スクイズ」の語源

「スクイズ」の語源はアメリカの野球用語の「スクイズプレイ(squeeze play)」です。「squeeze」という単語には以下のような意味があります。

  • 絞る
  • 絞り取る
  • 強く握る/抱きしめる
  • つめ込む
  • 圧迫する/強制する/絞り取る
  • おどし取る

どうしても1点が欲しくて絞る取るような作戦だということから使われたという説や、バットを両手でぎゅっと握りしめる動作から「squeeze」と呼ばれるようになったという説があります。

「squeeze」の発音は [skwi:z] ですので、正確には「スクイーズ」になりますね。メジャーリーグの観戦では「スクイズ」と言っても通じません「squeeze play」です。発音にも気をつけましょう。とはいえ、メジャーリーグで「スクイーズ」を見る機会は少ないのかもしれませんね。

「スクイズ」と心理戦

「スクイズ」は0対0であったり、0対1であったり、1点を争う緊迫した場面でとられることの多い作戦です。どうしても1点が欲しい攻撃側と、どうしても1点を与えたくない守備側の、細かな心理戦や様々なかけひきが行われることになります。

「スクイズ」における攻撃側の心理戦

「スクイズ」を行うためには、打者と走者とベンチ(監督/コーチ)のサイン交換等による意思の疎通がとても大切です。

相手(守備)側に気づかれないように連携することが不可欠になります。打者と走者のどちらかがサインを見落とせば作戦の成功する確率はほとんどゼロに近くなることでしょう。

攻撃側の心理戦:打者

打者は守備側の対応を遅くするために、バントの構えをなるべく遅くします。打球は三塁側に転がして三塁手にとらせるようにします。牽制のため三塁ベースについている三塁手は守備が遅れるからです。

打者が絶対に避けたい技術的な失敗は、「空振りする」ことと「フライを上げてしまう」ことです。「空振り」をしてしまうと、本塁に走ってくる走者はアウトになる確率が高くなります。そこで打者は、どんなことがあってもバットに球を当てるようにしなければなりません。

「フライを上げてしまう」場合も同じで、フライが上がり守備側に捕球されれば、走者は三塁に戻らなければなりません。走者は投球と同時に飛び出しているため、この場合もアウトになる可能性が高くなります。

攻撃側の心理戦:走者

「スクイズ」のサインを出された三塁走者は、投手が投球するのと同時に本塁に向けて素早くスタートを切らなければなりません

とはいえ、その様子がソワソワしていると相手に「スクイズ」を悟られてしまいますし、スタートを早くしようとあせれば牽制でアウトになる危険性があります。

走塁が得意な選手が走者などの場合には、相手の投手や野手に対して動揺を誘う動きをしかけます。「スクイズ」があるように見せかけて素早く動いてみたり、わざとソワソワしてみたり、逆に落ち着いてみたりと心理戦をしかけて相手のミスを誘います。

「スクイズ」における守備側の心理戦

攻撃側が「スクイズ」を行うかどうかを、守備側はさまざまな方法で判断しようとします。

まずは相手チームの監督やコーチ、打者、走者を観察。打者のバットを持つグリップの位置が変わったり、バッターボックスでの立ち位置やスタンスが変わったり、監督のサインが長くなったり、走者の雰囲気が変わるなどの「スクイズ」の兆候を見逃さないようにします。

守備側の心理戦:投手

投手はまず三塁に牽制をしてみます。その時の走者の反応や打者のしぐさによってサインが出ているかどうかを判断します。

「スクイズ」がくると判断した場合には、打者に対してストライクコースの外側に大きく外したボール球を投げます。もしサインが出ていれば走者は飛び出しますのでアウトをとる可能性が大きくなります。

「スクイズ」の判断が難しい場合は、打者に対して「インコース高めのストレート」か「アウトコース低めの変化球」を投げます。打者にとってこの二つの球種はバントをしにくい球のため、打者がミスや空振りをする可能性があるからです。

守備側の心理戦:捕手

捕手はその試合の試合展開や点差、打者と投手の相性、打者の状態、走者の脚力などを総合的に観察し判断します。

  • 投手が三塁に牽制したときの打者の動き…構えやグリップ位置やしぐさに違和感がないかを観察します。
  • 相手ベンチからサインが出たあとの様子…打者と走者で目くばせがあったり、走者の様子が変ったり、打者に不自然な動作があったり、逆に何気なさを装っていたりするのを見極めなければなりません。
  • 相手ベンチの様子や声…スクイズを隠すためにあえて「思い切り打って行けよー」や「外野フライでいいぞ」などの掛け声であったり、監督の動きに変化がないかを観察します。

いずれにしても、サインが出ていないにもかかわらず、わざとそれらしい違和感をだすというフェイクをしかけてくるチームもいるため、「スクイズ」を的確に見極めるには経験と卓越した洞察力が必要といえます。

「スクイズ」の条件

「スクイズ」をやりやすい(成功する確率が高い)条件はいくつかあります。

  • 相手がまったくの無警戒なとき
  • バントが上手な選手が打者のとき
  • 強打者のとき(警戒がうすいため)
  • ストライクカウントのとき(3ボール1ストライクなどストライクを取りにくること)
  • 相手投手が左投手のとき(走者が見えにくく牽制もしにくいため)

逆に「スクイズ」をやりにくい(成功する確率が低い)条件は以下のとおりです。
  • 満塁のとき(タッチ不要で走者をアウトにできるため)
  • 左打者のとき(捕手から走者が見やすいため)
  • 相手投手が守備のうまい投手のとき
  • 相手投手が鋭い変化球を持っている投手のとき(空振りしやすいため)
  • ストライク先行カウントのとき(投手がボール球を投げる余裕があるため)

「スクイズ」の種類

セーフティスクイズ

「セーフティスクイズ safety squeeze」とは、三塁走者が投手が投球動作に入ってもスタートしないで、打者がバントをした後でスタートするスクイズのことです。

打者は確実にバントできる球だけを選択し、走者は打球を見てからスタートの判断するため、通常のスクイズより安全である(safety)ことからこう呼ばれます。
 

スーサイドスクイズ

「スーサイドスクイズ suicide squeeze」とは一般的な「スクイズ」のことです。点をとるために打者がアウトになるため、打者がsuicide(自殺)する作戦という意味でこう呼びます。

「スーサイドスクイズ」といえば「スクイズ」のことですが、単に「スクイズ」といえば「スーサイドスクイズ」を表すだけでなく、「セーフティスクイズ」なども含めた総称の意にもなります。

ツーランスクイズ

走者が2塁3塁にいる場合にスクイズを行い、野手が1塁に送球している間に3塁走者だけではなく2塁走者まで本塁に生還して一挙に2点を奪うという奇襲戦法を「ツーランスクイズ」と呼びます。

2塁走者の動きに無警戒になっている油断をつく作戦ですが、3塁コーチの判断がとても重要になります。

スリーバントスクイズ

「スリーバントスクイズ」とは、2ストライクからはやってこないだろうという相手の意表をつくスクイズのことです。

スリーバント(3球目のストライクでバントをすること)はファウルになってもアウトになるため、2ストライクからバントをする確率は低くなります。そういったセオリーの裏をかく作戦といえます。


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