「かけがえのない」とは
「かけがえのない」とは、最も大切であり、ほかのもので代用がきかないことを表します。いざという時のために用意された‘予備‘を「かけがえ」といい、「~ない」を伴うことで、唯一無二であることを言い表します。
直接的で伝わりやすいという意味では、「替えがきかない」や「唯一無二である」などの表現も挙げられるでしょう。一方で「かけがえのない」は、それらと同じ意味をもちながらも、優しさや柔らかさが感じられる言い回しです。
「かけがえのない」の使い方
「かけがえのない」という表現は、大切な人や物だけでなく、目には見えないものに対しても使われます。なかでも「かけがえのない日々」や「かけがえのない時間」といった表現は歌詞にもよく採用されており、私たちが耳にする機会の多いフレーズです。
例文
- 失ってはじめて、彼女は自分にとってかけがえのない存在だと気付いた。
- 初めての留学で現地の人と交流したことは、私にとってかけがえのない経験となった。
- 子どもの誕生にあわせて作り始めたアルバムには、かけがえのない思い出が詰め込まれている。
- 健康というかけがえのない財産を守るために、日々運動をこころがけよう。
- 部活で苦楽をともにしたかけがえのない仲間たちに、心から感謝したい。
「かけがえのない」の表記
「かけがえのない」は、漢字で「掛け替えのない」と書きます。しかしながら、「かけがえのない」とひらがなで表記することで、この言葉のもつ柔和な雰囲気を生かすことができるでしょう。
漢字で「欠けがえのない」と書いたり、平仮名で「かけがいのない」と表記するのは誤りです。また、稀に「かけがえがない」と表記されているものに出会うことがありますが、これも間違いとまでは言えないものの、一般的ではありません。
「かけがえのない」の語源
「かけがえのない」は、上述したように‘予備‘を意味する「かけがえ」を「ない」と打ち消して用いられています。この「かけがえ」が何の予備を意味するのか、答えは諸説あります。
掛け替えて使用していたもの、「着物」あるいは「刀」だったとする説がある一方で、掛け軸などの「書」であったとする説もあります。しかし、いずれも「かけがえのない」の語源とまでは言い難く、未詳とされています。
そのような中で、弓道用語が語源であるという説が有力視されています。あくまでも弓道家の間で広まったものと異論も見受けられますが、現時点ではこの説が一般的とされているようです。
弓道が由来とされる「かけがえ」
私たちが何気なく使っている言葉の中には、「図星」や「~のはず(筈)」など、弓道に由来する言葉がいくつも存在しています。そして「かけがえ」もそのひとつではないか、とするのが弓道家の見解です。
≪かけ≫
ひとつにあげられるのは、弓道具の「かけ」に由来しているという説です。「かけ」とは、弓道で弓の弦を引く時に使われる革製の手袋のことです。
「かけ」は小鹿一頭から一つ分の革しか取れないことに加え、射手の手のサイズや癖などを考慮し専門職人によって製作される大変貴重なものとされています。そのため、他人の物では代用がきかないことから、「かけがえのない」の語源だと言われています。
≪弦≫
また、弓に「弦(つる)」を張る作業を弓道では「かける」と言います。「弦」は弓道では要ともいえる貴重なもの。万が一替えがない時に弦が切れたら致命的である、ということから「かけがえのない」の語源だとされています。