マニフェストとは
マニフェスト=選挙公約
マニフェストは、英語で「manifesto」と表記されます。声明文や宣言を意味する漢語であり、選挙公約、政権公約を意味する外来語です。
公約とは、政党や議員等の候補者が有権者に自らの政策を見てもらうことを目的とし、選挙で当選後に実行する政策を前もって確約しておくことです。その内容には、政策の具体的な施策や数値目標、実施期限、財源が明示されています。
マニフェストに法的拘束力はない
有権者の中には、マニフェストが達成されないと、契約違反だと主張する方もいますが、マニフェストに法的拘束力はありません。つまり、必ずしも守らなければならないものではありません。しかしあまりに達成できないと、自らの信頼を失うことになりえます。
マニフェストの使い方・例文
- あの政党のマニフェストには期待してるから、しっかり実現してほしい
- せっかく投票したのに、マニフェストを全然守ってくれなかった
政治におけるマニフェストの起源
マニフェストの語源として有力とされているのは、ラテン語で「手」を意味する「manus」と「打つ」を意味する「fendere」が合わさったという説です。そして、「手で打つ」から「手で感じられるほど明らかな」へ派生し、「はっきり示す」という意味になりました。
これが、世界へ広まったのはイタリア語の「manifesto」からです。この「manifesto」は党首の演説のことを言いました。
その後、1835年にイギリスにおいて、最初に選挙公約として党首からマニフェストと呼ばれる演説が行われます。それ以来、イギリスでは総選挙ごとにマニフェストを発表するようになりました。現在のように冊子になったのは、1935年の総選挙で保守党が出したものが最初と言われています。
つまり、現在の日本におけるマニフェストは、19世紀以来のイギリスの政治慣行を参考にしたものといえます。
日本のマニフェストの現在
日本では、1999年からマニフェストが作られるようになってきましたが、公職選挙法違反となるため、選挙期間中に配布することができませんでした。
しかし、2003年の公職選挙法改正により国政選挙に限って、政党がマニフェストを記載したパンフレットを選挙期間中に配布できるようになりました。
2013年はマニフェスト元年
この公職選挙法改正後の2003年の総選挙で、各政党がマニフェストをこぞって発表したため、「マニフェスト元年」や「マニフェスト選挙」などと言われました。さらに2003年の日本新語・流行語大賞で「マニフェスト」が年間大賞を受賞しました。
2007年の公職選挙法改正で、ビラ形式でという条件付きではありましたが、地方選挙や補欠選挙でも選挙運動用にマニフェストを配布できるようになりました。
掲げたマニフェストを達成できないことも
しかし、当時の民主党政権の自己評価において、マニフェストの3割程度しか達成できておらず、マニフェストはイメージダウンしていきます。その流れで、2012年には、政権公約や重点施策と名称変更する政党が相次ぎ、明確に「マニフェスト」と使用したのは民主党だけとなりました。
マニフェストに期待される効果
選挙でマニフェストを公表することで以下の4つの効果が期待できます。
- 政策を投票の基本とする有権者の投票を促進すること
- マニフェストを掲げて選挙で競い勝利するため、マニフェストの内容について有権者に賛同を得たものとして実現に移す可能性が高まること
- 具体的に何をいつまでにどれくらいやるのかを示すため、施政の事後評価(マネジメントサイクル)が可能になる
- 現在の政治における問題点が明確化する
マニフェストの具体例
これまで様々なマニフェストが出されてきた中で、よくメディアに取り上げられてきたものをご紹介します。
児童手当
2009年の第45回衆議院議員総選挙の際に、民主党が子ども手当という名称でマニフェストを出しました。1972年から児童手当は存在しましたが、始まった当初は支給額は3000円でした。そこで民主党が15歳以下の子どもを擁する家庭に、子ども1人あたり月2万6千円を支給することをマニフェストにしたのです。
しかし、2010年度に1万3千円の半額支給から始まり、2011年には満額支給は断念しています。そして、2012年に現在の児童手当へと名称が変更になりました。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加反対
2012年の第46回衆議院議員総選挙の際に、自由民主党が聖域なき関税撤廃を前提とするのならば、TPPの交渉参加に反対するというマニフェストを出しました。
しかし、2016年の衆議院TPP特別委員会にて安倍首相が「私自身はTPP断固反対と言ったことは1回も、ただの1回もございませんから、まるで私が言ったかのごとくに発言は謹んでもらいたい」と発言し、物議を醸しました。
マニフェスト制度について(選挙とは異なる使い方)
日本では、選挙とは関係のない、マニフェスト制度という産業廃棄物管理票制度があります。産業廃棄物管理票のことをマニフェストといい、この時の英語表記は「manifest」で積荷目録という意味です。
産業廃棄物は排出者の責任で適正に処理されなければいけません。しかし、許可された処理業者であれば、収集・運搬や中間処理、最終処分などを委託することができます。
そこで排出者が委託者に対して「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を交付し、委託した内容通りの適正処理が行われたことを確認するための具体的な方法を明確にしました。それがマニフェスト制度です。
この制度は、廃棄物処理法により施行されています。3度の法改正を経て、1997年より全ての産業廃棄物に適用が義務付けられ、現在の形になりました。