「臨む」とは?意味や使い方をご紹介

「臨む(のぞむ)」は、会話よりもどちらかというと文章で使われることの方が多い言葉です。ここでは「臨む」の意味を、類語(=「際する」)との比較や、同じ読みをする別の言葉(=「望む」)との用法上の違いを踏まえつつ、意味や使い方を明らかにしていきます。

目次

  1. 「臨む」の意味
  2. 「臨む」の使い方と「際する」との比較
  3. 「臨む」と「望む」の違い
  4. 「挑む」は「臨む」から意味が離れる
  5. 「臨」を使った熟語

「臨む」の意味

「臨む」は「株主総会に臨む」や、「入社試験に臨む」などのように、ある場所や出来事に意識的に参加もしくは向かっていくことを表しています。現在ではこの用法が一般的です。

さらに、「毅然とした態度で臨む」のように強い心構えで対象に向かう場合にも使います。また、「海に臨む丘」のように高いところから低いところを見下ろす場合にも使います。

「臨む」の使い方と「際する」との比較

「際する(さいする)」は「臨む」と同様、ある場面や出来事に会うことを意味していますが、「臨む」のように能動的な意味合いは薄い言葉です。「~に際して」と使われるのがよく見る形式です。次の二つの文の意味がどのように違うか見てみます。

  1. 「出発に臨んで一言挨拶をする。」
  2. 「出発に際して一言挨拶をする。」

1の場合は挨拶をする人の意気込み、あるいは出来事の重要さに対する思い入れを、「臨んで」という言葉を使用することによって強調しようとしています。一方2は、そのような意気込みや思い入れをことさら強調する必要がなく、単に事実を伝えるための文になっています。

このように「臨む」は、類語の「際する」と比較した場合にその特徴が明確になります。例文でも見たとおり、「臨む」はある場面や出来事に能動的・意識的に参加もしくは向かっていく気持ちを込めた言葉なのです。

「臨む」と「望む」の違い

「臨む」と同じ読み方で異なる漢字を使う言葉があります。異字同訓といいますが、それは「望む」です。

「望む」で一番先に思い浮かべる意味は「希望する」あるいは「ほしがる」ではないでしょうか。しかしここでは「臨む」と近い用法で使われる場合を考えてみます。

「臨む」と「望む」の距離感の違い

「望む」は、「遠く富士山を望む」や「海を望む別荘」などと使われます。対して「臨む」は、「海に臨む丘」などと使われます。

「望む」には遠くを眺めやるという意味合いが含まれています。見る人と対象との間に一定の距離があることを前提にしている言葉といえるでしょう。

一方、「臨む」には目線が高いところから低いところに向かっているという意味が含まれています。この場合、「望む」に比べるとより近い対象を見ています。

「臨む」と「望む」の文法上の違い

文法的には、「臨む」は自動詞であり、「望む」は他動詞です。自動詞は目的語を必要とせず、その動詞だけで意味が完結できます。反対に他動詞は「~を」という目的語があって、初めて意味の通る文になります。

したがって「海を臨む丘」は間違った用法です。自動詞の「臨む」に目的語の「海を」は不要です。

同様に「海に望む別荘」も間違った用法です。他動詞の「望む」に目的語にあたる言葉がありません。「海に」は単に場所を現わしているだけで目的語ではありません。

「挑む」は「臨む」から意味が離れる

「臨む」の積極的・能動的な意味をもっと強くした言葉として「挑む(いどむ)」を使いたくなる場面があるかもしれません。

しかし、「挑む」は「挑戦する」や「挑発する」のように争いを仕掛けるような意味が含まれていて、「臨む」からは意味が離れてしまいます。

「臨」を使った熟語

最後に「臨む」の「臨」を使った熟語からその意味を改めて確認します。

  • 臨機応変・・・機に臨んで変に応ず。状況の変化に適切に対応すること。
  • 臨時休業・・・時を定めない休業。その時になっての急な休業。
  • 臨時列車・・・正規の時刻表にはない運行をする列車。
  • 臨海工業地帯・・・海に面した地域で発達した工業地帯。
  • 臨界・・・さかい。境界。原子炉で、核分裂連鎖反応が維持されている状態。
  • 臨床医・・・実地に病人に接して、診察・治療を行う医師。
  • 臨場感・・・実際にその場にいるような感じ。VR(Virtual Reality=仮想現実)が実現しようとしているのはこれです。


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