「せこい」とは
「せこい」には大きく分けて二つの意味があります。
下手
まず主として明治時代に、芸人や芸事に関心のある人々の間で使われていた言葉として、「せこい」という言葉があります。
これは芸が「下手」であることや、見目が「悪い」、拙劣で「みにくい」ことを意味していました。
この意味での「せこい」の反対語は「巧い(うまい)」となります。
現在ではあまり耳にする機会はないかもしれませんが、落語家などがこの意味での「せこい」を使っていてもそれほど違和感はないように感じます。
けち
また「せこい」には、「けち(くさい)」「ずるい」「料簡がせまい」「みみっちい」といった意味もあります。
この意味での反対語は「太っ腹」となるでしょう。
この意味での「せこい」という言葉は、今でも俗語としてよく使われています。
「せこい」の用法
歴史的な用法
上でもふれた通り、「下手」の意味での「せこい」は主に明治期に使われていた表現で、現在は一般的なものではありません。『大辞泉』には用例として、以下のような一文があげられています。
現在の用法
現在も通じる意味での「せこい」は、例えば以下のようなものです。
- せこい手を使ってまで勝つことに、なんの意味があるというのか。
- 汚い大人たちの社会で生き延びようと思えば、ある程度のせこさも必要だ。
- ワリカンするのに1円単位までこだわるというのは、ちょっとせこすぎる。
「せこい」の類語
「せこい」にはいくつもの類語がありますが、その中からいくつかを抜粋して紹介しましょう。
へぼ
「へぼ」は技術や技量が劣る様を表した言葉です。
つまらない芸人のことを「へぼ芸人」、素人同士が指す将棋を「へぼ将棋」と言うように、名詞を修飾する形で使われることが多い言葉です。
同じような使われ方をする言葉として「へっぽこ」というものがありますが、こちらも「へっぽこ役者」や「へっぽこ野郎」といったように、技術や能力的に見劣りする人を揶揄する意味で使われています。
吝嗇
「吝嗇(りんしょく)」は「けち」を意味する言葉です。「家」をつけて「吝嗇家(りんしょくか)」といえば「けちな人」を意味します。
小説などでは「吝嗇」と書いて「けち」と読ませるようにルビが振ってある事例もよくみられます。「吝嗇ん坊」と書けば「けちんぼう」となり、お金にがめつい人を少しバカにした言葉となります。
また、「吝嗇」の「吝」の字一つでも「けち」と言う意味があります。「吝ん坊」だと「しわんぼう」、「吝太郎」だと「しわたろう」と読みます。どちらも意味的には「けちん坊」と同じ意味ですが、少し古い表現です。
汚い
お金に汚い、金銭欲にまみれていることを「がめつい」と言いますが、「せこい」と言う場合にはもう少し「狡猾」なニュアンスもあるかもしれません。
「計算高い」は自分が損をしないよう、計略をめぐらすような人のことを言います。他に「勘定高い」「算盤(そろばん)高い」という言い方もあります。
「欲得ずく(め)」という言葉も、人間関係や金銭に対し自分の利益を追求してばかりの人を表す言葉として使います。
「せこい」の反対語
巧い
上記の通り、明治時代に使われた「下手」という意味での「せこい」の反対語は「巧い」となります。
この「巧」という字を使った単語に、「巧み(たくみ)」「巧妙(こうみょう)」「技巧派(ぎこうは)」「巧者(こうしゃ)」「精巧(せいこう)」といった言葉があります。
他に「巧い」という意味を表す言葉としては、「技の冴え」などと言う際の「冴え(さえ)」「熟練(じゅくれん)」「練達(れんたつ)」「名人芸(めいじんげい)」「お手の物」などがあります。
現在では「神」も「せこい」の反対語と言えるかもしれません。
太っ腹
「太っ腹」という言葉の類語としては、「寛大(かんだい)」「寛容(かんよう)」「気前がいい」「金離れがいい」「豪放磊落(ごうほうらいらく)」などがあげられるでしょう。
物惜みなく人に尽くす人のことを、「仏」のような人と言うこともあります。