「借りパク」とは
「借りパク」とは「借りる」と「パクる」を合わせた略語です。「借りたものをパクる」ことです。
「パクる」の語源については複数の説があり、確かなものはなさそうです。「パクる」には複数の意味があります。
- だまし取る。かっぱらう。
- 盗用する。
- 逮捕する。
このうち「借りパク」と関わりがあるのは「1.」の「かっぱらう」です。分かりやすく表現すると借りたまま返さないことです。
「借りパク」は何罪か
「借りパク」はかっぱらうことですから違法です。では、どういう罪になるのでしょうか。
まず「はじめから返すつもりがないのに借りると言った」場合は「詐欺」にあたるでしょう。またマンガやドラマでみかける「ちょっと金を貸せよ」といって脅す場合は「恐喝」にもあたる可能性があります。
ただ「借りパク」は通常は上記のようなものではなく、最初は借りるだけのつもりだったのに結果的に返さないままになっていることを指すことが多いです。この場合は「窃盗」でしょうか。
借りパクの多くは横領
実は違います。「借りパク」は多くは「横領」にあたります。「窃盗」か「横領」かは、それが起こったときに、誰が占有(せんゆう)していたかで変わります。
「窃盗」は万引きに代表されるように、他人(例えば店舗)がそれを占有しているものを自分のものにする行為です。一方、「横領」は、自分が占有している状態の他人の物を自分のものにする行為です。
例えば、落とし物を拾うと、それを自分が占有している状態になります。しかし所有権は持ち主にあり、それを警察に届けず自分のものにすると横領です。「借りパク」も、相手から借りて自分が占有している状態にあるため、それをそのまま自分のものにしてしまうと横領です。
「借りパク」が発生するまで
「借りパク」必ずしも悪気があって発生するとは限りません。友人などと物を貸し借りすることは良くあります。例えば、ボールペンや消しゴムを貸したり、マンガやゲームソフトを借りたりすることはあるでしょう。
図書館やレンタルサービスでは返却期限が定められています。しかし友人間の貸し借りでは、返却時期を特に決めない場合もあります。
その後、特段に返すきっかけがなく、借りたままになっていると「借りパク」になる可能性があります。このとき「借りているのか」「パクっているのか」は貸した人、借りた人の認識によります。
「借りている」のか「パクっている」のか
期限を決めずに借りた後、それを返却しない場合、「借りているのか」「パクっているのか」の線引きは難しい面があります。パターンとしては、
- 借りた側は借りている途中と思っていて、貸した側も貸している途中と思っている。…「借りパク」ではない。
- 借りた側は借りている(返すつもり)と思っていて、貸した側は「借りパク」されたと思っているが「返して」とは伝えていない。…認識が異なるため、一概に言えない。
- 借りた側は「借りている」と思っていて、貸した側は「返して」と伝えているが、返してくれない。…「借りパク」している。
- 借りた側は「借りパク」していると思っているが、貸した側は「返してもらわなくても別に良い」と思っている。…借りた側が「借りパク」していると思っているということは返却する意思がないため「借りパク」だが、相手が「返却してほしい」と思っていないため、問題にはならない。
…といった場合がありえます。以上のように「借りパク」には様々なパターンが考えられますが、特に問題だと思われるのは、
- 借りた側は「返したい」と思っているが、返す相手の連絡先や住所が分からず返せない。一方、貸した側は「借りパク」されたと思っている。
という状態です。双方に「借りパク」の状態を解消したいと思っているにも関わらず「借りパク」が起こっているのは不幸と言えるでしょう。お互いに気まずい気持ちになりますし、借りている側も処分に困ることになります。
「借りパク」に時効はあるか
法律で「取得時効」というものが定められています。しかし借りたものは「借りた」のであり「取得」したのではありません。よって取得時効は成立しないようです。
ただし金銭の貸し借り場合は「消滅時効」というものもあります。以下で解説されています。
【古い友人に「借りパク」されたCD 「もう時効でしょ」と言われてしまったら?:弁護士ドットコム】
https://www.bengo4.com/c_6/n_587/
「借りパク」まとめ
以上、「借りパク」について解説しましたが、法律以前の問題として「借りたものは返す」が常識です。借りた側も貸した側も、きちんと「返したい」「借りたい」と意思を伝えることで、お互いに嫌な思い、気まずい思いをせずに済むでしょう。