「半死半生」とは
「半死半生(はんしはんしょう)」とは、「息も絶え絶えで、今にも死にそうなこと」という意味の四字熟語です。生きるか死ぬか、ギリギリの瀬戸際にいるということです。「半生」は「はんせい」や「はんじょう」とも読みます。
「半死半生」の由来
古代中国に、枚乗(ばいじょう)という詩文の才能に恵まれた人物がいました。その枚乗の作品に、『七発(しちはつ)』というものがあり、その中の一文が「半死半生」の由来です。
物語は、楚(そ)という国の太子(たいし:皇帝の後継ぎ)が病に倒れ、さまざまな方法で治療を試みるものです。元気のない太子は、音楽やご馳走、駿馬(しゅんめ:足の速い優れた馬)や美しい風景にも心を動かされません。しかし、最終的には儒教の教えによって回復します。
「儒教(じゅきょう)」とは、「孔子(こうし)」を祖とする、中国の伝統的な道徳思想です。自分の行いを正し、私利私欲に走らず、見聞を広めよという考えです。中でも、他人を思いやり愛するという「仁」が重要とされています。
「半死半生」の例文と使い方
- 救急車で半死半生の患者が運ばれた。事故に遭ったようだ。
- 集中治療室で半死半生の時間を過ごした。
- 残業続きな上に飼っている猫の看病もあり、半死半生の一ヶ月だった。
1と2の例文では、身体的な苦痛を表しています。誰が見てもわかるような、病気やけがなどで大変な状態です。
一方、3の例文の状況は、今にも死にそうというわけではありません。しかし、本人にとっては目まぐるしい日々で、心身共に疲れ切っていたのでしょう。このように、大げさな表現ではありますが、仕事や私生活などに追われて辛さが頂点に達しているときにも「半死半生」は使われます。
「半死半生」の類語
四字熟語
- 気息奄々(きそくえんえん):息も絶え絶えに弱っているさまを表します。また、物事が今にも滅びそうな状態のこともいいます。
- 満身創痍(まんしんそうい):体中が傷だらけになることです。また、集中的に非難を受け、名誉などをひどく傷つけられたという意味もあります。
熟語
- 瀕死:今にも死にそうなことです。「瀕」という字には、「岸・みぎわ」「迫る・近づく」という意味があります。
- 臨死:死に直面することです。瀕死との違いは、一度死を体感して生き返るという意味が含まれている点です。「臨死体験」という言葉もありますね。
- 危篤(きとく):病気やけがの症状が重く、生命が危ういことを表します。
生死に関する四字熟語
起死回生
死にかかった人を生き返らせること、という意味です。また、滅亡・崩壊・敗北などしかかっているものを立て直すことでもあります。回生起死とも表します。
九死一生
死ぬ可能性が九分、生き残る可能性が一分。つまり、ほとんど助かる見込みのない絶望的な状態を脱し、かろうじて命拾いすることを表します。九死に一生を得る、ともいいます。
輪廻転生
仏教の言葉です。車輪が回るように、生物は生まれては死に、また生まれ変わります。これを繰り返し、いつまでもこの世をめぐり続けるという意味です。流転輪廻や、三界流転ともいいます。
「半死半生語」とは
歌手のさだまさしさんのラジオ番組『今夜も生でさだまさし』に、「半死半生語」を紹介するというコーナーがあります。昔は当たり前のように使われていたのに、現代では耳にするのも珍しくなった、絶滅しかけているような言葉のことを指します。いくつかご紹介しますと、
- おてもと:「手元」の敬称です。また、料理屋などで客に出す箸の丁寧語でもあります。
- みそっかす:味噌をこしたかすのことです。また、価値のないものや半人前の人を表します。
- チョッキ:袖のない短い胴着のことです。現代では、「ベスト」や「ジレ」ともいいます。
などがあります。言葉は時代によって徐々に変化していくので、若者が古い言葉を知らないのも当然といえるかもしれませんね。その代わり、新しい言葉も次々と生まれています。