「良薬は口に苦し」の意味
「良薬は口に苦し」は、病によく効くいい薬が苦くて飲みにくいのと同じように、本人のためになる忠告や諫言は素直には受け入れにくいものだ、という意味です。
「良薬は口に苦し」の例文と使い方
- 良薬は口に苦しで、なかなか素直に先輩の言う通りにはできないものだ。
- 学生時代には先生に反発したものだが、今になればその言葉が理解できる。良薬口に苦しだったなぁ。
- 良薬は口に苦しだとは思うけれど、ご両親ともう一度話し合ってみた方がいいと思うよ。
忠告というのは素直に聞き入れにくいものです。つい反発してしまったことを反省したり、冷静に耳を傾けることを促したりする場合に使われていますね。二つ目の例文のように、「は」を省略し「良薬口に苦し」という形で使われることも多いようです。
「良薬は口に苦し」の由来
「良薬は口に苦し」は、もとは「忠言耳に逆らう」と対の言葉です。しかしその部分が省かれ、「良薬は口に苦し」単独で使われることが多くなりました。出典にはいくつかの説があります。ここでは有力な説を二つご紹介します。そのどちらの説でも、後ろに「忠言は耳に逆らう」という意味の句がついています。
『孔子家語(こうしけご)』六本(りくほん)
(良薬は口に苦いけれど病を治してくれる。忠言は聞き入れにくいけれど素直に聞いて行動すればよい結果を得る)
『韓非子(かんぴし)』外儲説(がいちょせつ)
(良薬は口に苦いけれども、智者はその良薬をできるだけ飲む。体に入って疾病を治すことを知っているからである。忠言は聞き入れにくいけれど、明主はその忠告を聞き入れる。それが効果があるものだと知っているからである)
「良薬は口に苦し」といろはかるた
「良薬は口に苦し」は、江戸系いろはかるたに採用されています。語呂よく「は」を省略し、「良薬口に苦し」という形になっています。
また、「良薬(りょうやく)」は「り」から始まりますが、いろはかるたでは「り」ではなく「れ」の定番でした。「良薬」は古くは「らうやく」や「ろうやく」と書かれていたと言います。「りゃうやく」とも記されます。しかし、頭に「れ」のつくことわざが少ないため、いろはかるたにおいては便宜的に「れうやく」と記載されるようになったという説があります。
明治から大正頃の江戸系いろはかるたを見てみると、「良薬口に苦し」の絵柄は、臣下が主君の前に跪き、諫言する様子が描かれています。「忠言耳に逆らう」の部分を表現したものだと考えられますね。その後昭和の戦前期からは、片手にコップを持った人物が薬を飲んでいる様子が描かれたものなどに変わっていきました。
「良薬は口に苦し」の英語表現
- A good medicine tastes bitter.(いい薬は苦い)
- Bitter pills may have blessd effects.(苦い薬には病気を治す可能性がある)
- Men takes bitter potions for sweet health.(人は快い健康のために苦い薬を飲む)
「良薬は口に苦し」の類語・関連語
「良薬は口に苦し」の類語には以下のようなものがあります。
- 林中に疾風多し
- 苦言は薬なり甘言は疾(やまい)なり
「忠告/注意」の表現
「良薬は口に苦し」は忠告に関することわざですが、人に何かを忠告する際には以下のような表現が使われます。
【苦言を呈する(くげんをていする)】
相手のためを思って、あえて言いにくいことを言って諫める、という意味です。
【釘を刺す】
相手の行動を予測して、そうしないように前もって注意しておく、という意味です。
【頂門の一針(ちょうもんのいっしん)】
頭のてっぺんに一本の針を刺す、という意味です。相手の急所をすばりと突いた戒めの言葉を言います。