「万物流転」とは?意味や使い方をご紹介

「万物流転(ばんぶつるてん)」とは、古代ギリシャの哲学者・ヘラクレイトスが提唱した、世の中全ての物は常に変化し続けるという意味の哲学の概念のことで、仏教の「諸行無常」と似た考え方です。この記事では、そんな「万物流転」の意味や使い方を詳しくご紹介しています。

目次

  1. 「万物流転」の意味
  2. 「万物流転」の由来
  3. ヘラクレイトスとは?
  4. 「万物流転」の使い方
  5. 「万物流転」のまとめ

「万物流転」の意味

「万物流転(ばんぶつるてん)」とは、この世に存在する全てのものは、同じ状態にとどまることなく変化し続けるという意味の、哲学の概念(万物流転の法則)です。

「万物流転」の由来

「万物流転」は、ギリシャの哲学者・ヘラクレイトス(紀元前540年頃~紀元前480年頃)によって提唱されました。ヘラクレイトスは、この世のすべてのものは時の経過とともに変化しているので、同じものを時間が経った後に見ても同じものとは断定できないと考えました。

この「万物は流転する(Ta Panta rhei.)(everything flows.)」という言葉はヘラクレイトスが言った言葉とされていますが、実際は古代ギリシャの哲学者・プラトン(紀元前427年~紀元前347年)が引用したもので、ヘラクレイトス本人が残した言葉とは確認されていません。

ヘラクレイトスの著書は現代では断片的にしか残されておらず、その中に「万物は流転する」という言葉は見つかっていませんが、「同じ河に二度入ることはできない」という表現が同一の意味をもつ言葉と考えられています。

ヘラクレイトスとは?

ヘラクレイトスは、ギリシャ神話の女神・アルテミスを崇拝することで有名な都市・エペソス(現在のトルコ・イズミル県エフェソス)で生まれました。ヘラクレイトスは上位階級の生まれで、民主制を軽蔑し貴族による政治を支持していたので、貴族制政治を布いていない政治に携わることはありませんでした。

ヘラクレイトスは「万物は流転する」と主張する一方で、「火」に象徴される変わらないものも存在すると述べています。「火」は燃焼によって絶えず変化をすると同時に、一定の明るさを放つなどの、変化と保存が共存している姿がそれに当たると考えました。また、「火」は「万物の根源」「宇宙の神的・神話的な起原」であるとも主張しました。

ヘラクレイトスの世界観は厭世主義とされ、その哲学論の難解さも影響してか、ヘラクレイトスは「暗い哲学者」「泣く哲学者」との異名を持ち合わせています。

「万物流転」の使い方

「万物流転」は、人も物も世の中のものは全て移り変わるということをを表現する場合や、ヘラクレイトスの「万物流転の法則」そのものを指す時に使われます。例文を見てみましょう。

「万物流転」の例文

  • 「万物流転」が世の中の理なのだから、老化を怖がらずに受け入れる努力をしたいものだ。
  • 何度訪れても毎回新しい景色を見せてくれるカッパドキアの奇岩群は、常に移り変わる景色の美しさとはかなさ、「万物流転」の宇宙の神秘を感じさせてくれる。
  • 「万物は流転する」と言うが、親子の情愛だけは永遠に変わらないと信じたい。

「万物流転」の引用

“…私どもの世界には、何一つとして、永遠に、いつまでも、そのままに、存在しているものはありません。つねに変化し、流転しつつあるのです。仏陀は「諸行無常」といいました。ヘラクライトスは「万物流転」といいました。万物は皆すべて移り変わるものです。”
『般若心経講義』高神覚昇

「万物流転」のまとめ

「万物流転」の、全てのものは変化し続けるという概念と共通する思想は他にも存在します。仏教の根本理念を表す「諸行無常」はその代表的なもので、宇宙や自然界全てのものは常に移り変わっていくので一刻も同じ状態にとどまることはないとしています。仏教には、他に「盛者必衰」「色即是空、空即是色。」などの、同義の言葉があります。

また、平安時代~鎌倉時代にかけて活躍した歌人・随筆家の鴨長明(かものちょうめい)は、著書『方丈記(ほうじょうき)』の冒頭で次のように述べています。
 

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

鴨長明が世の中の無常観を河の流れにたとえて詠ったこの一文が、ヘラクレイトスの言葉「同じ河に二度入ることはできない」と、詠われた時も場所も遠く離れているにも関わらず非常に似ていることにとても驚かされます。それほど「万物流転」には、国や時代を超えた普遍的な真理があるのかもしれませんね。

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