「大和撫子」とは?
「大和撫子(やまとなでしこ)」には、2つの意味があります。
植物の「大和撫子」
1つめは、植物の「カワラナデシコ(河原撫子)」の別名です。「カワラナデシコ」はナデシコ科ナデシコ属の多年草で、秋の七草の1つでもあります。
夏から秋にかけて淡紅色の花を咲かせる、高さ30~50cmほどの植物です。日本では、本州、四国、九州で広く分布し、沖縄諸島にも少数、生育します。
植物を指すときは、カタカナで表記されることが多いようです。
女性の「大和撫子」
2つめは、日本の女性を表す言葉です。誉め言葉として使われ、日本女性の清楚で凛とした美しさをたたえる言葉ですが、外見だけでなく、内面の美しさも必要とされます。教養と気品を備え、奥ゆかしく控えめながら、いざというときには男性を助けたり、家庭を守ったりすることのできる強さも持っている女性を指します。
女性を指すときは、漢字表記か、ひらがなで「やまとなでしこ」と表されることが多いようです。
「大和撫子」由来
植物のナデシコは、小さく、かわいらしい、きれいな色の花を咲かせます。ここから子どもにたとえて、なでるようにかわいがっている子、「撫(な)でる+子」で、「撫子」という花の名がつけられたという説が有力です。
こういった由来から、今度はなでしこの花が幼い子どもや女性のたとえとして使われるようになったと言われています。『万葉集』でも、なでしこを歌った歌が26首あり、そのうち8首が愛しい女性をなでしこに重ねた歌です。『古今和歌集』などでも、女性の比喩としてなでしこが使われています。
「撫子」が「大和撫子」になったのは、平安時代のことです。中国から、外来種の「撫子」が入ってきて、「唐撫子(からなでしこ)」と呼ばれるようになりました。その「唐撫子」と区別するために、日本の撫子を「大和撫子」と呼ぶようになったようです。
クシナダヒメと大和撫子
日本神話に登場する女性の神、クシナダヒメが「倭撫子(やまとなでしこ)」の語源である、とされる説もあります。
クシナダヒメは、スサノオノミコトによってヤマタノオロチから助けられ、後に彼の妃となる神です。
このクシナダヒメの父がアシナヅチノミコト、母がテナヅチノミコトという名です。「ナヅ」は、「撫づ(撫でる)」に通じ、足や手を撫でる、という意味を持ちます。ここから、「手足を撫でるように大事に育てた姫」=撫子、という解釈ができるとされています。
作品名などに使われた「やまとなでしこ」
やまとなでしこ(声優ユニット)
1999年、声優の田村(たむら)ゆかりさんと堀江由衣(ほりえゆい)さんが結成したユニットです。略称は「やまなこ」で、2003年以降、活動休止中です。
やまとなでしこ(ドラマタイトル)
2000年10月~12月、フジテレビ系で放送されたテレビドラマのタイトルです。「月曜9時枠」の連続ドラマとして放送され、平均視聴率26.4%、最高視聴率34.2%を誇るヒット作で、主演は松嶋菜々子(まつしまななこ)さんでした。
やまとなでしこ(アルバムタイトル)
2003年にリリースされた、辛島美登里(からしまみどり)さんの14枚めのアルバムのタイトルです。コンサートのアンコールとして演奏された、ヒット曲の『サイレント・イヴ』がボーナストラックとして収録されている、全12曲のアルバムです。
ヤマトナデシコ七変化
『ヤマトナデシコ七変化(やまとなでしこしちへんげ)』は、小泉今日子(こいずみきょうこ)さんが1984年9月にリリースした11枚目のシングル曲のタイトルです。作詞は康珍化(かんちんふぁ)さん、作曲は筒美京平(つつみきょうへい)さんです。
「ヤマトナデシコ」という言葉がタイトルに入っているにもかかわらず、自由に恋をする女の子の気持ちを描いたそれまでのアイドルの曲とは一線を画す歌詞が、小泉さんの自由なキャラクターにぴったりはまり、30万枚売り上げのヒット曲となりました。