「控えめ」の意味
「控えめ」は形容動詞に分類され、意味はおおまかに以下の三つに分けられます。
- 少なめにすること
- 色や装飾など、地味にすること
- 遠慮がちなこと、遠慮がちな振る舞い
「控えめ」と「少なめ」の違い
「控えめ」の意味が「少なめにすること」の場合、「少なめ」のほうが汎用性が高く、多くの場面で「控えめ」を「少なめ」と置き換えることが可能です。
「少なめ」とは数・量を示す言葉で、「少ないまたはやや少ないと思われる程度」のこと。すなわち「少なめ」が量の程度そのものであるのに対して、「控えめ」の意味は量を加減して少なくすることです。「控えめ」は対象が加減できる物の場合にしか使うことができません。
- ダイエットしているから砂糖少なめにしてね。
- ダイエットしているから砂糖控えめにしてね。
「控えめ」の間違った使い方
砂糖の場合は「控えめ」「少なめ」どちらを使ってもかまいませんが、「少なめ」を「控えめ」と置き換えられない場合があります。
- 正)例年に比べ、降雨量は少なめだ。
- 誤)例年に比べ、降雨量は控えめだ。
装飾を「控えめ」にする
ファッションや色を、地味・普通・派手の3種類に分けるならば、「控えめ」は、地味にあたります。
職種にもよりますが、仕事場で派手な口紅をつけた女性はあまりいませんよね。職場ではイヤリングなどの装飾も小さく、目立たない物にします。
しかし、地味や目立たない色ではテンションが下がってしまう女性も、「控えめな色」と言い換えれば多少なりとも印象がよいのではないでしょうか。「控えめ」は、キャッチコピー的に使われている場合があります。
- オフィスでもOK控えめネイル、さりげなくおしゃれして気分も効率もUPしよう。
- 普段は派手だが、職場では控えめコーデを心がけている。
- 赤を少なめにして、全体的に控えめな色合いにしよう。
「控えめ」な振る舞いとは
「控えめ」の意味が、「遠慮がちに振舞うこと」の場合、主に人の性格や振る舞いに対して使われ、慎み深い、低姿勢、謙虚など様々な意味に変化します。
- その話をするといつも大口開けて笑う彼女が、この時ばかりは控えめな笑みを浮かべるだけだった。(慎み深い笑み)
- 彼女は大人しく、控えめな女性だ。(慎み深く謙虚な性格の女性)
- 聞くのをためらったが、控えめな声で尋ねてみた。(遠慮がちな声)
- 人見知りではないのだが、初対面の人には自然と控えめになる。(遠慮が入る)
- いつもボス面している野良猫が、ケンカに敗れたその日は控えめな態度だった。(低姿勢)
「控えめな人」の意味は昔と違う?
古代中国、周の思想家、老子は、人の望ましい態度として「控えめが良い」と述べています。
老子の思想「柔弱謙下」(じゅうじゃくけんか)や「止足の戒め」(しそくのいましめ)を簡単に説明すると「物欲や名誉欲をほどほどにし、慎み深く、控えめな態度でいなさい」となり、老子のいう「控えめな人」というのが「謙虚な人」だとわかります。老子の思想を受けた日本では「控えめな人」は褒め言葉でした。
しかし、自己主張も必要な昨今、「控えめな人」は、単純な褒め言葉ではなくなりつつあります。
「控えめな人」は自己顕示欲がなく、人と対立するようなことはしないので、日本の伝統的人間評価でいけば、良い人です。その反面、何事も受身で消極的、目立たない、自分の意見を言わないので本音が分からない等、マイナスイメージで語られることも増えてきました。「控えめな人」が苦手という人も少なからずいるようです。
若い方に褒め言葉のつもりで「控えめな人ですね」と言うと、「暗い人、存在感が薄い人」と受け取られ、落ち込んでしまうかもしれませんので、使い方には注意してくださいね。
「控えめ」に言って
「控えめに言って」は「実際より少なめに言って」の意味で使われ、ごく普通の表現です。しかし、組み合わせによって一種の誇張表現となった「控えめに言って〇〇」がSNSなどで使われています。当サイトで詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。