「後生」と「大事」
まず「後生大事」は「ごしょうだいじ」と読み、この四字熟語は「後生」と「大事」、二つの言葉に分けられます。
「後生」について
「後生」とは、死んだあとの世界や来世のことです。また、誰かに頼みごとをするときに使われます。頼みごとをするときに使う場合は、「一生のお願い」のようなニュアンスを含みます。
「大事」について
「後生大事」においての「大事」とは、何かを大切にすることを表します。
「後生大事」の意味
これらが組み合わさった「後生大事」には、二つの意味があります。一つ目は死んだあとや来世での安楽を願い、ひたすら仏道に励むことです。死んだあとや来世の安楽とは、「天国にいく」だとか、「幸福な境遇に生まれ変わる」だとかのニュアンスです。
そして二つ目の意味は、何かをとても大切にすることです。一般的に「後生大事」と言えば、こちらを示すことが多いでしょう。
「後生」を含む言葉に、「後生一生」という四字熟語があります。「後生一生」とは、一生に一度のことです。なので紛らわしいですが、「後生大事」における「後生」とは、「後生一生」も含んでいるのではないか、と考えられています。
よって「後生大事」の二つ目の意味には、「一生に一度のものだと思い、大切にする」というようなニュアンスが含まれます。ちなみにこれは「後生」が「一生のお願い」のようなニュアンスを含むことにも繋がります。
「後生大事」の使い方
上述の通り「後生大事」は多くの場合、仏教用語としてではなく、何かをとても丁寧に、大切に扱うことを指して使われます。
たとえば「この宝石を後生大事にしている」と使えば、「この宝石をとても大切にしている」と伝わります。また「道具を後生大事に使う」と言えば、「道具を使うとき、とても丁寧に扱う」と伝わります。どちらも二つ目の意味です。
「後生大事」の例文
- 「友人からのプレゼントを、後生大事に持っている」
- 「師匠からの教えを、後生大事に守る」
- 「この本は素晴らしい、後生大事にしよう」
「後生大事」を含むことわざ
「後生大事」を含むことわざに、「後生大事や金欲しや死んでも命のあるように」というものがあります。
死んだあとや来世での安楽を願いながらも、現世でのお金も欲しい、という意味のことわざで、この場合の「後生大事」は、仏教用語としての意味を示しています。
仏教を信じつつ、俗に塗れていることを表しており、引いては色々なものを欲しがる、人間の強欲さをも表しています。
「後生大事」と似た意味を持つ言葉
「後生大事」と似た意味を持つ言葉には、「懇切丁寧」、「一刻千金」などがあります。
「懇切丁寧」について
「懇切丁寧」とは「こんせつていねい」と読み、細かいところまで気配りが行き届き、親切で手厚いことを意味します。また「丁寧懇切」とも書きますが、意味は同じです。
この言葉は「後生大事」と比べて、他人への丁寧な扱いや、接し方に重きが置かれています。なので「懇切丁寧な態度」や、「懇切丁寧な説明」というように使われます。
「一刻千金」について
「一刻千金」は「いっこくせんきん」と読み、僅かな時間であっても、千金に値するくらい貴重なことを意味します。
この言葉は、楽しい時間が一瞬で過ぎることを惜しんで使われます。また、時間の浪費への戒めが込められています。
何に価値を見出すかは人それぞれですが、時間は等しく流れるので、誰にとっても非常に大切なものだと言えるでしょう。
「後生大事」と反対の意味を持つ言葉
「後生大事」に厳密な対義語はありませんが、反対の意味を持つ言葉としては、「ぞんざい」、「粗末」、「無造作」などが挙げられます。
「ぞんざい」について
「ぞんざい」とは、扱いなどが丁寧ではなく、いい加減で乱暴、投げやりなことを意味します。大切からは掛け離れた言葉です。たとえば「道具をぞんざいに扱う」と使えば、「道具を使うとき、乱暴に扱う」と伝わります。
「粗末」について
「粗末」は「そまつ」と読み、二つの意味を持っています。一つ目は何かの作り方などが、大雑把なことです。
二つ目は、大事にするべきものを蔑ろにしたり、おろそかに扱うことを表します。この場合は二つ目の意味が、「後生大事」の反義です。「粗末」は雑のニュアンスが強く、「食べ物を粗末にする」というように使われます。
「無造作」について
「無造作」は「むぞうさ」と読み、容易く何かを行うことや、念入りではない、気軽に行うことを意味します。
たとえば「無造作に本を放る」と使えば、「軽い気持ちで本を放る」と伝わります。そして「後生大事」にしている本を、軽い気持ちで放ったりはしないでしょう。そういった部分で、「後生大事」とは反対の意味を持っている言葉だと言えます。