「煮え湯を飲まされる」の意味は?
「煮え湯を飲まされる」という言葉を人生の中で一度や二度は聞いたことがあるかと思います。しかし、その正確な意味を理解している人は少ないのではないでしょうか。
「煮え湯を飲まされる」とは、「自分が信じていた人に裏切られてひどい目にあう」という意味を持つ言葉です。友達や会社の上司などに対してだけでなく、家族などの身内の人物に対しても使うことができます。
しかしそれに該当する者であれば誰でもいいというわけではなく、後述するように、「自分が信用している」ことが前提となります。
「煮え湯を飲まされる」を用いる具体例
たとえば「自分をかわいがってくれていた会社の上司に自分の成果を全て取られてしまった。まるで煮え湯を飲まされた気分だ。」という場合。"自分をかわいがってくれていた会社の上司"という前提があり、その人に「自分の成果を取られた」つまり"裏切られた"ということなので、まさに「煮え湯を飲まされた」状況です。
また、「信用している親友に煮え湯を飲まされてしまったので、縁を切ることになってしまった。」という文章も、「信用している親友」という前提がありますので、「煮え湯を飲まされる」の正しい用例と言えます。
「煮え湯を飲まされる」相手
しかし文化庁が行った「国語に関する世論調査」で、「煮え湯を飲まされる」を、信頼している相手とは関係のない"敵(ライバル)"に対して使うという人が一定数存在することが判明しました。
例えば「春の大会ではライバルチームに煮え湯を飲まされた」といった具合に、「煮え湯を飲まされる」が「ライバルからひどい目にあわされる」という意味で使われる場合などです。
もちろんこれは誤用なのですが、ではそもそもなぜ「煮え湯を飲まされる」が「信頼する相手からの裏切り」という意味になるのでしょう?
「煮え湯を飲まされる」の語源は?
「煮え湯を飲まされる」の煮え湯とは、言葉の通り"煮え立った熱湯"のこと。信頼している人から、熱湯を飲み頃だとすすめられてそれを飲んだ時に、口の中が煮えたぎるほど熱い思いをすることが語源なのです。
ライバルなど、信頼していない人から出された飲み物なら、そもそも警戒するのが普通ですよね。しかし信頼する相手から出されたものだからこそ、警戒せず口にして結果痛い目に遭ってしまう。
「煮え湯を飲まされる」が信頼する相手の行為にしか使用できない理由が、これでおわかりいただけたのではないでしょうか。
「煮え湯を飲まされる」と似たことわざ
「煮え湯を飲まされる」に近いことわざに、「飼い犬に手を噛まれる」があります。この言葉の意味は"日ごろから面倒を見ていた者から裏切られたりすること"です。
「煮え湯を飲まされる」との違いは、目上や同等の立場の人間の裏切り行為に対しては用いられない点です。「飼い犬」とはペットの犬のことですから、言い換えれば「世話をしてやっている相手」「かわいがってやっている相手」のことです。
したがって「上司に裏切られた。飼い犬に手を噛まれた気分だ」などするのは誤りです。上司をペット扱いするのは、さすがにまずいですよね。他にも、恩を仇で返されることのたとえには「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」などがあります。