「粋がる」とは
「粋がる」とは「いき・がる」で、垢抜けている様子を表す「粋」に、そのようなふりをすると言う意味の接尾辞「がる」を加えた構造となっています。
意味は2つあります。
- いかにも粋であるかのように振る舞う。自分から粋だと思って得意になる。
- (若者が)調子に乗って格好をつける。強そうに虚勢を張る。
どちらかというと、自分自身に対して「粋がる」と言うことは少なく、多くは他人からの評価である点も重要です。
それぞれの用例から…
坪内逍遥の『当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)』(1885年)には
一方、不良学生たちの日常を描いた人気漫画の『ビー・バップ・ハイスクール』(1983年~)では、「イキがんじゃねーよ」などのセリフが使われています。いかにも独特のカッコよさにこだわる、不良ぶった若者らしさが感じられ、2の意味の「粋がる」のイメージをうまく表しています。
本来の「粋」とは
「粋がる」をもう少し理解するために、元になった「粋」について触れておきます。キーワードは「垢抜けた」「洗練された」「自然な色気」です。当初は男性に対してのみ使われていましたが、次第に女性に対しても使われるようになり、女性の美しさを言い表す言葉の一つにもなっていきます。
「粋」は江戸時代後期に定着した美的感覚で、芸や容姿・身なりに対する褒め言葉として使われていました。前述した3つのキーワードがごく自然に備わっていることが重要で、しろうとっぽさや野暮なところがない点に美学を見出しました。
これを踏まえると、本来の「粋がる」は、わざとらしく不自然に「粋」ぶっている状態のことを指していたようです。
ネット上の「粋がる」は…
現在、SNSなどでは「粋がるな」という言葉が、多く使われています。批判的な文脈の中で、攻撃的に使われることが多いようです。意味的には2の延長で「何を偉そうなことを言ってるんだ」といった感じとなります。
例えば「粋がるなよ〇〇の分際で」「〇〇ごときが粋がるなよ」と激しいものも散見されます。
見ず知らずの人を攻撃するというのは、ネット上ではありがちな傾向で、心理学的には匿名性が深く関わっていると言われています。いわばそうした攻撃の常套句のひとつとして「粋がるな」が使われています。
「粋がる」の使い方
- ランチを高級フレンチでと粋がってみても、人間性まで変わるわけではない。
- もう若くはないのだから、粋がるのもほどほどにしておかないと。
- 若い女性の前だからといって、粋がることはないよ。普段通りで十分だ。
「粋がる」の類語
「粋であるかのように振る舞う」の意味で「気取る」「スカす」「格好をつける」などが「粋がる」の類語に挙げられます。
また「虚勢を張る」の意味では「調子こく」「天狗になる」「いい気になる」「つけあがる」「うぬぼれる」「偉ぶる」「大きな顔をする」「思いあがる」「ふんぞり返る」などがあります。
「粋がる」を英語で
- put on airs:気取るという意味の言い回しですが、いかにも中身のない感じ(air)が「粋がる」につながります。
- act haughtily:横柄な、偉そうに構えたというところから、2の意味の「粋がる」となります。
- get carried away:調子に乗る、度を越してやり過ぎてしまうという意味になります。こうした状態を気付かないでいると、周りから「粋がってる」と見られます。