「気が気でない」とは
「気が気でない」とは「気がかりなことがあって、落ち着かない。心配で仕方がない」という意味です。ひどく気になっている問題があり、冷静ではいられない状態のときに、こう表現します。逆にもし、心配事がそれほどの一大事でない場合には、気が気でない状態にはなりません。
「気が気ではない」「気が気じゃない」と言い換えても、同じ意味になります。前者はやや古い言い回し、後者は口語的でくだけた言い回しとなり、相手との関係や使う場面によって、使い分けが可能です。ただし、あくまで個人の主観から発せられる表現なので、ビジネス文書や論文などでは使用を避けるべきでしょう。
古い用例では、江戸時代の浮世草子『好色訓蒙図彙(こうしょくきんもうずい)』に
(運よく打ちとけて、思い通りに事が運んだとしても、腹に当たるのではないかと気が気でない。)
『好色訓蒙図彙』は性風俗を絵入りで紹介する内容で、いわゆる当時の町人向けの読みものでした。このことから、江戸時代には「気が気でない」の表現が庶民の間で一般化していたのではないかと推測できます。
「気が気でない」の「気」とは
では、「気が気でない」と言うときの「気」は、何を指すのでしょうか?比較的詳しい辞書で「気」の意味を調べると、非常に多くの意味が記載されているのに驚きます。自然界の「気」(気体・空気・大気など)ではなく、人間の精神にかかわる「気」の意味だけを拾ってみても、10以上の記載があります。(※辞書によって差があります。)
その中のひとつに「物事を実行するために心を支え動かす力」があります。「気が気でない」と言うとき、心の中の「気」が通常あるべき状態の「気」ではなくなっている様子を言っています。つまり、この「心を支え動かす力」が正常ではないことを言っているのだと理解すると、うまく説明ができそうです。
「気」と「心」
ちなみに、『大辞林』にはもう少し解説が加えられていて、「心」が精神活動を行う本来的なものを指すのに対して、「気」はその「心」の状態・反応など現象的な面をいう傾向が強いのだそうです。
慣用句の中には「気」と「心」を置き換えても成立する表現がありますが(気・心をゆるす、気・心構えなど)、「気が気でない」は置き換えが難しい表現のうちのひとつです。
「気が気でない」の使い方
以上を踏まえて、例文を挙げます。
- 後輩たちが今頃、居酒屋で盛り上がっているかと思うと、気が気でなかった。
- 受験生の息子のことが気が気でないのは、経験上よく分かる。
- 出張中なだけに、家の鍵を閉め忘れたかもしれないと思い始めると、気が気ではない。
- TV中継が終了してしまったので、延長戦の結果がどうなったのか、気が気じゃない。
「気が気でない」の類語
「気が気でない」の類語としては「気もそぞろ」「気が心でない」「居ても立ってもいられない」「気をもむ」「心ここにあらず」「地に足がつかない」「案じ煩う」などがあります。
擬態語で表現すると「はらはら」「やきもき」「そわそわ」「あたふた」などが挙げられます。
「気が気でない」を英語で
- be nervous with・be uneasy with:神経がいらだって心が落ち着かない様子、強い不安を感じている様子から「気が気でない」となります。
- be worried about:worryを受け身の形で使うと、ある原因によって心配させられる、つまり心配ごとによって「気が気でない」となります。
- feel on edge:edgeはへり・きわを比喩的に指しますから、落ち着かない、イライラしている様子を表現します。心配とは少し違うかもしれません。
- in a fidget:そわそわする様子、気をもむ様子から「気が気でない」状態を表します。