「オーバーエイジ」の意味
「オーバーエイジ」という外来語は、主にスポーツで使われるルール用語です。スポーツの大会では、各チームの技術水準に大きな差が出ないようにするためや若手育成などの目的で、出場する選手の年齢を「○○歳以下」などと制限する場合があります。
ただしそうした場合でも、試合をよりスリリングにしたり、有名選手も出場させて人気を高めるため、一部の選手については年齢制限をかけず、年上の選手でも出場できる特例を設けることがあります。これを「オーバーエイジ」のルール、あるいは「オーバーエイジ枠」と呼びます。
サッカー、野球といった人気スポーツでは、有名なスターや主力選手は20代後半が中心のため、それらの選手が出場できるオーバーエイジ枠は、チーム力を高めたり観客の関心を呼ぶ効果があるといえます。
「オーバーエイジ」の由来
「オーバーエイジ」の語源
「オーバーエイジ」は英語の「overage」が語源です。英語の「overage」は、形容詞で「規定の年齢を過ぎた」という意味になります。
スポーツのルールである「オーバーエイジ」は、オリンピック(五輪)の規定が発祥となっています。現在の五輪のサッカー競技では出場選手資格が「23歳以下」、略称では「U23」(under23の意味)という制限があります。
ここに「一部選手に限ってはこの制限を適用しない」という規定が新たに加えられた際、これを「オーバーエイジ」と呼ぶようになりました。
「オーバーエイジ」ができた経緯
五輪のサッカー競技は、サッカー・ワールドカップ(W杯)創設以前は「サッカー世界一」の国を決める大会でした。しかし1930年にW杯が始まるとプロはW杯、アマチュアは五輪と色分けされるようになります。
1984年のロサンゼルス五輪からプロ参加が認められるようになりましたが、W杯の権威と価値を守りたい国際サッカー連盟(FIFA)と、五輪人気を高めたい国際オリンピック委員会(IOC)が対立。92年のバルセロナ五輪からU23の規定が導入され、五輪は純粋な世界一決定戦ではなくなりました。
このため五輪サッカーは人気が落ち観客動員が減少。対策のため、スター選手も出場できるように96年アトランタ五輪から「チームのうち、3人までは年齢制限を適用しない」という「オーバーエイジ」規定が加えられました。
サッカーでの「オーバーエイジ」の事例
五輪でオーバーエイジ規定が導入されて以降、日本代表も何人かの選手がこのルールに基づいて出場しています。例えばアテネ五輪では小野伸二選手、ロンドン五輪では吉田麻也選手などです。
海外でも、リオデジャネイロ五輪では地元での金メダル獲得のため、ブラジル代表としてスーパースターのネイマール選手がオーバーエイジ枠で活躍し、話題になりました。
ただ所属するクラブ側が派遣を拒否することもあり、プロのいわゆる「スター選手」が出場する例は、実際にはあまりないのが実情のようです。なおオーバーエイジルールは、2020年の東京五輪でも採用されることになっています。
野球での「オーバーエイジ」の事例
「オーバーエイジ」ルールは野球でも設けられています。最近の事例では、2017年に実施された国際大会「アジアプロ野球チャンピオンシップ」があります。
この大会では、出場選手に「24歳以下」または「プロ入り3年以内」という制限がありましたが、チームに3人まではこれ以外の選手でも「オーバーエイジ」として出場可能とされました。実際に、日本のプロ野球で活躍中の台湾のスター陽岱鋼選手や、西武の中軸ホームランバッター山川穂高選手らがオーバーエイジとして出場しました。
その他のスポーツの「オーバーエイジ」
サッカー、野球以外では、例えば18歳以上24歳未満が対象の「ユース世界王座」というボクシングの大会で「24歳を過ぎても1度だけ防衛可能」といった特例があり、これが「オーバーエイジ」と呼ばれます。競艇でも、新人選手が対象のレースで、一部にオーバーエイジ枠が設けられています。
「オーバーエイジ」のまとめ
東京五輪は久しぶりの地元開催の大会で、ファンの期待も大きく、日本サッカーは金メダル獲得に大きな期待がかかります。ロシアW杯で活躍した本田圭佑選手らベテラン勢が、オーバーエイジ枠での出場に意欲的だそうですが、わずか3人という限られた枠で誰を人選するか、監督も頭を悩ませそうです。