「ゴリ押し」とは
「ゴリ押し」とは「無理やりにことを行うこと、物事を強引におし進めること。無理強い」を言います。また、辞書によっては「理に合わないことを承知で、その考えをおし通すこと」ともあります。ですから、確信犯的に「これがいいのだ!」とおし進めることもあれば、無茶なことを分かっていて無理強いするというケースもあるようです。
比較的古い用例としては、作家・小田実(おだ・まこと)が1975年に発表した長編小説『羽なければ』に「暴力でゴリ押ししてはろくなことになりませんがな。」という部分があります。
これを参考にすると、一般に広く使われるようになったのは、第一次オイルショックあたりでしょうか。それほど古くから広まっている言葉ではないのかもしれません。
「ゴリ押し」の使い方
- 上層部のゴリ押しで、事業拡大の方針が決まった。
- 批判的な意見を無視した会議の進め方は、主流派のゴリ押しだ。
- 自分の好き嫌いを一方的にゴリ押しされても、違う意見の人だっているだろう。
「ゴリ押し」の由来
「ゴリ押し」の由来には、いくつかの説があります。語感から「ゴリゴリと押す」が変化したものではないか?との想像も働きますが、これには根拠がありません。有力だとされるのは以下の2つです。
鮴押(ごりおし)説
鮴(ごり)という川魚を獲るための漁法を「ごりおし=鮴押」と言うそうです。川底に敷いたむしろの上に鮴を追い込み、むしろごと持ち上げて捕らえるやり方のことを言います。この漁法が「ゴリ押し」の由来となったという説です。
江戸時代中期に出版された『日本山海名産図会(にほんさんかいめいさんずえ)』には、鮴の名産地として、山城加茂川(現在の京都府、賀茂川・鴨川)、加賀浅野川(現在の石川県)などが挙げられており、鮴押漁の様子が絵で紹介されています。
ちなみに、鮴は腹に吸盤があり、流れが早い川底でも休むようにしてじっとしていられることから、魚へんに休むという漢字になったと言います。また、『日本山海名産図会』には「膩ら(あぶら)多く羹(あつもの=汁物)として味よく(後略)」と書かれています。
五里押し(ごりおし)説
五里(ごり、約20Km)くらいを一気に押し切ってしまおうとするところから、「ゴリ押し」と言うようになったという説です。「五里霧中(ごりむちゅう)」と言う時の「五里」と同じですが、「ゴリ押し」には由来する故事があるわけではないようです。
「ゴリ押し」の類語・英語
類語は
類語としては、以下のようなものが挙げられます。
- 押し通す
- 無理押し
- 押し売り
- 押し付け
- 横車を押す
- 強行
- 聞く耳を持たない
- 頭ごなし
- 問答無用
- 有無を言わせず
英語では
- force:力を意味する言葉で、動詞として使うと「無理強いする」=ゴリ押しとなります。会議で議案を無理やり通すといった際にも使います。
- bulldoze:強引に(無神経に)進むというところからゴリ押しとなります。建設機械のブルドーザーをイメージすると、分かりやすいです。
- push:押すという行為そのものを指す言葉ですが、転じて事業・行動を強引に押し進めることも意味します。
「ゴリ押し」は嫌われる?
ネット上では、「ゴリ押し」は何かと批判の的、炎上の原因となりがちです。例えば、以下のような内容で、攻撃的な意見が述べられています。
- ニュースから…国会での議論が煮詰まっていないのに法案を成立させる、大義に欠ける原発輸出事業の推進、何が何でも辺野古の埋め立てを開始するなどのニュースに対し「政府によるゴリ押しだ」と標的に。
- 芸能関連では…俗にゴリ押しタレント。ある芸能人の露出度が急に上がった場合、芸能事務所によるゴリ押し、TV番組のスポンサーとのバーターによるものだと批判を浴びせる。
後者は本当に視聴者がゴリ押し=無理強いされているのかどうか、微妙なところです。さらに、SNSではもう少し違った捉え方をされています。
ゲームの戦術や好みのアニメキャラのプッシュなどを「徹底してやり切った!」という内容をTwitterなどにアップし、自分で「ゴリ押し」と宣言します。こちらは同じ「ゴリ押し」でも、嫌われる可能性が少ないタイプの「ゴリ押し」と言えそうです。