「海老で鯛を釣る」の意味
「海老で鯛を釣る」は海老のような小さなエサで、鯛のような大きな獲物を釣り上げるという意味のことわざで、わずかな労力や負担などで大きな利益を得ることのたとえです。なお、「海老」は「蝦」と表記されることもあります。
鯛は「めでたい魚」として珍重され、魚の王様とも言われています。一方、その鯛を釣るためのエサとしてあげられているのが海老です。
海老と言っても色々な種類がありますが、このことわざにおいては「伊勢海老」のような大きくて高級な海老ではなく、安くて小さい海老をさします。安価な海老をエサにして高価な鯛を釣り上げる、ということですね。
「海老で鯛を釣る」の例文と使い方
- お隣さんに、母からもらった家庭菜園の野菜をおすそ分けしたら、年代物のワインを一本くださった。これこそまさに「海老で鯛を釣る」だと、恐縮しつつもありがたく頂くことにした。
- 敬老の日に祖父の肩たたきをしてあげたのだが、お礼にとお小遣いをもらってしまった。海老で鯛を釣ったような気持ちになった。
- 妹が我が家へやってきた。ケーキの手土産を見て珍しい事もあるものだと思っていたら、金の無心だった。海老で鯛を釣ろうとしているようだが、そうはいかないよ。
「海老で鯛を釣る」の用例
「海老で鯛を釣る」は、太宰治の『酒の追憶』の中にも以下のような省略形で登場しています。
太宰治『酒の追憶』より
絵で見る「海老で鯛を釣る」
「海老で鯛を釣る」は、1808年のことわざ図集『諺画苑』にも収載されています。その図柄は、七福神の一人で商売繁盛の神である恵比寿が鯛を釣り上げている情景を描いたものです。海老(えび)に恵比寿(えびす)という音がかけられているとも言われています。
これ以降、幕末期や明治期に入ってからも「海老で鯛を釣る」の図柄は、恵比寿と鯛という組み合わせが定番となっていたようです。
「海老で鯛を釣る」の類語
「海老で鯛を釣る」には、エサを他のものにたとえた類語がいくつかありますのでご紹介します。
- 雑魚で鯛を釣る
- 蝦蛄(しゃこ)で鯛を釣る
- 蝗(いなご)で鯛を釣る
- 飯粒で鯛を釣る
- 疣(いぼ)で鯛を釣る
- 鼻糞で鯛を釣る
- 麦飯で鯉(こい)を釣る
- 投瓜得瓊(とうかとくけい)
「海老で鯛を釣る」の英語表現
英語でも同じように様々なたとえが使われていますので、いくつかご紹介します。
- Venture a small fish and catch a great one.(小魚を賭けて、大魚を釣る)
- Throw a sprat to catch a whale.(クジラを捕るためにニシンを投げる)
- A small gift brings often a great reward.(小さな贈り物が度々大きなお返しを運んでくる)
- To give a pea for a bean.(インゲン豆をもらおうとしてエンドウ豆をおくる)
- The hen egg goes to the ha' to bring the goose awa'.(ガチョウの卵をもらってくるために鶏の卵をお屋敷に持って行く)