「謂れ」の意味と使い方
「謂れ」は「いわれ」と読み、「理由」、「由来」の2つの意味があります。
「理由」を意味する例文
- あなたが謝罪する謂れはない。
- 私は謂れのない批判を受けて当惑した。
- 彼は謂れなき罪で投獄された。
- 「お前たちが謂れもない悲しみにくずれるのを見るに増して、この世を淋し思わせるものはない。」(有島武郎「小さき者へ」)
- 「自分の家の貧富さえ知らざる者あり。謂れなき事なり。」(福沢諭吉「女大学評論」)
- 「中津藩に限りてこの変を見ざりしは、蓋し、また謂れなきに非ず。」(福沢諭吉「旧藩情」)
- 「そのものどもが宗門神となったは、いかなる謂れがあるぞ。」(芥川龍之介「じゅりあの・吉助」)
- 「花見ればその謂れとはなけれども心のうちぞ苦しかりける」(山家集)
「由来」を意味する例文
- この神社の謂れをご存知ですか?
- 古びた刀剣の謂れを聞いて驚いた。
- ここに鎮座まします御仏の謂れ因縁を申し上げます。
「謂れ」の語源
動詞「言う(謂う、云う)」の未然形に受け身の助動詞「る」の連用形がついた「言われ」が由来です。
「言う」、「謂う」、「云う」の違いは?
どれも、「いう」または「ゆう」と読みますが、どんな違いがあるでしょうか。
- 「言う」は、口に出して語る場合に使われます。
- 「云う」は、人の言葉を引用する場合や伝聞として使われます。
- 「謂う」は、批評する、判断するときに使われます。
実際に口に出して「言う」以外の意味では「いう」とひらがなで書くのが普通です。なお、「謂れ」の意味では「言われ」「云われ」は誤りです。
- 「やったね!」と言う。
- 高橋さんという方がご面会です。
- そういう話はもううんざりだよ。
- 当家に昔からあるという古文書をご覧に入れます。
- 彼は引っ越したという噂だ。
「謂れ」の類義語
理由を意味する語
事由 ・理屈 ・ 根拠 ・ 所以 ・ 筋合 ・ 筋合い ・ わけ ・訳合い・所為・原由・由・道理・理趣・一理
由来を意味する語
経緯 ・ 由緒 ・成り立ち ・由縁 ・歴史・ 物語 ・ 謂れ因縁 ・ 来歴 ・素性 ・沿革 ・因縁・年代記・履歴・故由・クロニクル・ヒストリー・故事・伝説・実記・所記
「謂」を含む言葉
「所謂(いわゆる)」は、世間で言う、俗に言われている、の意味です。
- 私の両親は所謂団塊の世代である。
- 彼は所謂慈善家なんです。
「謂えらく(おもえらく)」は、思っているには、考えていることには、の意味です。
- 「われ謂えらく、両者の短歌全く標準を異にす」(子規・墨汁一滴)
「謂う所の(いうところの)」は、世間で言う、いわゆる、の意味です。
- それが、謂う所の善人の意味なのだ。
「謂れ」の英語表現
理由の意味で
- There is no reason you should apologize to him for it.(そのことで君が彼に謝る謂れはない。)
- She felt intense anger without a cause.(彼女は謂れのない強い怒りを感じた。)
- I don’t deserve your contempt.(君から軽蔑される謂れはない。)
由来の意味で
- I have never heard about the origin of this shrine.(私はこの神社の謂れについて聞いたことがない。)
- This statue of Buddha has an interesting story.(この仏像にはおもしろい謂れがある。)
「謂れ」まとめ
私達の生活の中では、どんな謂れがあって、こんな目に会うのだろうかと落胆したり、謂れのない非難を浴びることもあります。さらに、なんの謂れか知らないが、人に感謝されることもあったりというふうに、この言葉はよく使われています。意外と日常的な言葉なんだと、思っていただけたのではないでしょうか。