「アバンチュール」とは?意味や使い方をご紹介

「アバンチュール」って聞いたことはあるけれど、意味が分からない人もいるかもしれません。世代によっては、未知の言葉として認識されてしまうでしょう。そんな希少性の高い!?「アバンチュール」という言葉について、語源や意味などについて詳しく解説していきたいと思います。

目次

  1. 「アバンチュール」の語源と表記
  2. 「アバンチュール」の意味
  3. 明治の文豪が溺れた「アバンチュール」とは?
  4. 「アバンチュール」についてのまとめ

「アバンチュール」の語源と表記

フランス語で「冒険」・「不意の出来事」・「情事」を意味する「aventure」に由来します。学生時代に覚えた、ある英単語に似ていると思いませんか。そう、英語の「adventure」は、こちらから来ているそうです。

「aventure」はラテン語の「adventurus」(未来形)に源を発します。さらに遡ると「advenire」というラテン語へ。「ad」は「~へ」を表し、「venire」は「これから行く場所」を意味しています。つまり、「これから先に起こる事」という意味で、「冒険」へとつながるわけです。

日本語では「アバンチュール」とも、「アヴァンチュール」とも書きます。ここでは分かりやすいように、統一して「アバンチュール」を使います

言葉としての旬を迎えたのは、20世紀後半のバブルの頃です。1981年5月にリリースされた、大貫妙子のヨーロピアン三部作の1つである『アバンチュール』がそれを象徴しています。しかし今では、テレビや新聞などのメディア媒体で耳にしたり、目にしたりする機会も少ないでしょう。

「アバンチュール」の意味

日本語の「アバンチュール」は、危険な恋・許されない恋愛を意味することが多いです。分かりやすい言葉で置き換えるならば、不倫、火遊び、一夜限りの関係などでしょう。どちらかと言えば、社会的にアウトな恋愛に関して用いられます。
 

”冒険(的な恋愛)”
出典:山田忠雄.『新明解国語辞典』第五版. 三省堂, 1997, p.32.

日常生活を送る中において、見聞きすることない言葉と言っても過言ではありません。しかし、この言葉が定着し始めた頃は文筆家にも大きな影響を与えたようです。『舞姫』などで知られる、あの森鴎外もその著書『青年』の中で次のように用いています。
 
”…あの時の心持は妙な心持であった。或る aventure に遭遇して見たい。その相手が女なら好い。…”

原語の意味を損なわないようにするためか、翻訳した言葉を使っていません。フランス語の持つ意味を強調したかったのでしょうね。(外国語に明るかった鴎外が日本語に訳せないことはないでしょう。)

明治の文豪が溺れた「アバンチュール」とは?

明治の文豪の1人として名を連ねる島崎藤村。そんな藤村はイケない恋に溺れてしまい、それをモデルにして小説を刊行しています。

その小説こそ『新生』です。藤村が心酔してしまった相手は、姪にあたるこま子。逢瀬を重ね、ついには子どを妊娠し、出産。子どもは養子に出されたそうです。

藤村は、姪に出会う数年前に、幼子たち(3人)の栄養失調による死別を経験しています。悲しみに拍車をかけるように、藤村の愛妻も旅立ってしまいました。そんな時、身の回りの世話の手伝いに来ていた、こま子に特別な感情を抱いてしまったのでしょう。そんな悲しみにくれた藤村に、こま子は安らぎを与えてくれたのかもしれませんね。

「アバンチュール」についてのまとめ

「アバンチュール」はフランス語に由来しており、原語とほぼ同じ意味を保ったまま使われています。すなわち、道ならぬ男女の仲という意味です。同じくフランス語から来ている英単語「adventure」には、色恋沙汰の意味はありません。

『破壊』などで著名な島崎藤村の姪とのアバンチュールについてもご紹介しましたが、『新生』という作品です、興味のある方は、ぜひ一度読んでみてください。

あまり現代では使われていない言葉を調べると、使用されていた時代の背景が垣間見えてくるようですね。

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