「堅忍不抜」の意味
「堅忍不抜(けんにんふばつ)」の意味は、意志が堅く、どんなことにも耐え忍んで心を動かさないことです。「堅忍不抜」の「堅忍」は、堅い意志で耐え忍ぶこと、我慢強いことを意味しています。「不抜」は、固くて抜けないというところから、心を動かさないこと、意志が強くて揺るがないことを表しています。
「堅忍不抜」の由来
「堅忍不抜」の由来は、中国・宋の詩人「蘇軾(そしょく)」の『鼂錯論(ちょうそろん)』に記載されている次の言葉です。
古(いにしえ)の大事を立つる者は、惟(た)だに超世の才有るのみならず、亦た必ず堅忍不抜の志有り。
昔の大事を思い立った者は、世に卓越した才能があるだけではなく、我慢強く耐えて揺るがない志を持っていた。
蘇軾が言いたかったことを簡単に言うと、昔に偉業を成し遂げた人は、才能だけではなく、忍耐強くぶれない意志を持っていたと、言うことです。ここから、強い意志でどんなことにも耐え忍ぶという意味の「堅忍不抜」という四字熟語が生まれました。
「堅忍不抜」の使い方
「堅忍不抜」という言葉は、「堅忍不抜の精神」や「堅忍不抜の志」と言うように、どんなことがあっても揺るがない意志の強さや、辛いことにも我慢をして耐え忍ぶ様子を表す言葉として使われています。例文を見てみましょう。
「堅忍不抜」の例文
- 彼はどんなにお金持ちになっても質素な食事や生活を好み、「堅忍不抜の精神」で生涯にわたり贅沢することを自分に許さなかった。
- 子どもの頃、父から毎日のように「一度決めたら最後まで、『堅忍不抜』を貫け。」と、言われて育った。
- 今回の世界選手権で彼女が代表に抜擢されたのは、「堅忍不抜の志」でどんな時でもひたむきに努力をしてきた結果だ。
「堅忍不抜」の引用
『雪国の春』:柳田国男
※青空文庫出典
「堅忍不抜」の精神
平成10年(1998年)に第66第横綱・若乃花 勝(わかのはなまさる)が横綱昇進の口上で、「『堅忍不抜』の精神で精進していきます」と述べました。このことで、「堅忍不抜」という言葉は若貴ブームの影響もあり、当時一躍注目を浴びることとなりました。
若乃花は、切れのある多彩な技と粘り強い相撲で横綱まで上り詰めた実力者でしたが、力士としては決して大きな体格ではなかったので、その活躍の影で並々ならぬ努力があったのかもしれません。まさに「堅忍不抜の精神」ですね。
若乃花の他にこの堅忍不抜を座右の銘として掲げている有名な人物には、大久保利通(おおくぼ としみち)がいます。大久保利通は明治維新の中心人物で、西郷隆盛、木戸孝允と並んで「維新の三傑」と呼ばれていました。私財を投じて公共事業を行うなど、国の為に信念をもって行動をする姿は堅忍不抜そのものでした。
「堅忍不抜」の類義語
「堅忍不抜」の類義語をご紹介します。
- 堅忍持久(けんにんじきゅう)
意味:つらさや苦しさに耐え、我慢強くもちこたえること。
- 志操堅固(しそうけんご)
意味:自分の考えや主義主張を堅く守り、変えないこと。
- 鉄心石腸(てっしんせきちょう)
意味:いかなる困難にもくじけない、鉄や石のような堅固な精神のこと。
- 不撓不屈(ふとうふくつ)
意味:強い意志をもって、どんな苦労や困難にもくじけない様子。
「堅忍不抜」のまとめ
「堅忍不抜」という言葉は、日常生活の中で使われることはあまりありません。しかし、座右の銘として心に刻まれていたり、柔道や剣道などの武道やスポーツにおいて辛い稽古に耐えるために心の支えとして、垂幕などで目に見えるところに掲げられたりしています。
どんなことでも何か目標を達成しようとすると、少なからず困難が訪れたり、忍耐を強いられることがあるかもしれません。そういった時に「堅忍不抜」は、私たちを励まして最後まで頑張る手助けをしてくれる言葉です。