「鬼哭啾々」とは?意味や使い方をご紹介

「鬼哭啾々(きこくしゅうしゅう)」とは「亡霊の鳴き声が聞こえてきそうな様」「恐ろしい雰囲気」を表す四字熟語です。平和な時代には馴染みの薄い言葉かもしれませんが、小説や漫画作品の中では度々目にする言葉でもあります。ここではその意味や使い方を説明します。

目次

  1. 「鬼哭啾々」の語意
  2. 「鬼哭啾々」の意味
  3. 「鬼哭啾々」の元ネタ
  4. 「鬼哭啾々」の使い方
  5. 『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』における「鬼哭啾々」

「鬼哭啾々」の語意

「鬼哭啾々(きこくしゅうしゅう)」は中国の古典に由来をもつ四字熟語です。では、まずはその語意からみていきましょう。

鬼(き)

ここで言う「鬼(き)」は、「赤鬼」「青鬼」などのいわゆる「オニ」のことではありません。

「鬼哭啾々」の語源である古代中国において「鬼」は、頭にツノを生やし虎のパンツを履き、手にした金棒を振り回して英雄に退治されるオニではなく、「死者の魂」「亡霊」のことを指していました。

哭(こく)

「哭(こく)」は「大声でなくこと」を意味しています。「犬が口々にやかましくなく」というのがその字義であるとされます。また「慟哭」といえば「体を揺さぶって大声で泣く」ことを意味します。

ただ、「哭」という字は必ずしも字義通りに使われているわけではなく、たとえやかましくなくとも悲痛で、声にならない叫びを伴うような泣き方を「哭(声)」と表現することがあります。

このため、「鬼哭」の意味は「亡霊が浮かばれずに(大声をあげて)泣くこと」となります。

啾々(しゅうしゅう)

「啾々(しゅうしゅう)」もまた泣き声を表した言葉です。ですが「哭」とは違い、「しくしくと小声で泣くことまたはその様」を意味します。

このことから「鬼哭啾々」の文字通りの意味は、「亡霊が浮かばれぬまま、時には大声で、時にはしくしくと小声で泣いている様子」となります。

「鬼哭啾々」の意味

もちろん、浮かばれぬ亡霊である「鬼」は現実には存在しません。それが大なり小なりのやり方で泣き叫ぶというのも、現実の光景を描写した写生文的情景ではありえません。

ですから「鬼哭啾々」というのはあくまでも「〜しそうな」あるいは「〜してもおかしくないような」情景を修辞的に表現した言葉です。

つまり「鬼哭啾々」は、戦争や災害の跡地に、死者が弔いを受けることもできず転がっていて、今にも彼らの霊魂の鳴き声が聞こえて来そうだと思われるほど、「もの凄い光景」「恐ろしい雰囲気」を意味しているのです。

「鬼哭啾々」の元ネタ

「鬼哭啾々」の出典は、中国唐代の大詩人「杜甫」の漢詩「兵車行」にあります。この詩は徴兵され従軍する兵士たちの悲惨をうたったものでした。「鬼哭啾々」はその最後に見えています。
 

「兵車行」(抜粋)
・・・
君不見 青海頭
古来白骨無人収
新鬼煩冤旧鬼哭
天陰雨湿声啾啾

<訳>
・・・
君はみたことがないのか青海のほとりを
古来白骨を収める人もなく
新しい亡霊はもだえうらみ、古い亡霊は泣き叫ぶ
太陽が陰り雨が降り出すとシクシクと泣く声がする

このように「鬼哭啾々」は、野ざらしになった死者たちの浮かばれない様子を描写したものでした。

「鬼哭啾々」の使い方

「鬼哭啾々」の使い方を紹介しましょう。
 

  • 被災地へ行って来たんだが、ひどいものだ。さながら鬼哭啾々さ。やりきれないよ。
  • 鬼哭啾々たる悲劇の跡地も今は公園になり、家族連れの観光客で賑わっている。
  • 穏やかに見える海の底で、英霊たちは今なお鬼哭啾々の思いに駆られているのだ。

このように、少しもったいをつけた言い回しになるのは仕方ないと言えます。

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』における「鬼哭啾々」

『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』は山田風太郎原作、せがわまさき作となる漫画作品です。2005年にアニメ化され、現在は続編の展開のほか、パチンコ・スロット(パチスロ)ゲームに移植されるなどして人気をはくしているコンテンツです。

人によってはこの作品で「鬼哭啾々」という言葉を知ったという方もいるかもしれません。

「鬼哭啾々」はアニメ第22話のタイトル、およびパチスロの決着前演出の中に組み込まれたシステムの名前として使用されています。


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